GLAYの4人をより自由にする、ライブという空間 振り幅と勢い感じた『SUMMERDELICS』ツアー

GLAYの振り幅と勢い感じたライブ

 今夏、GLAYがリリースしたアルバム『SUMMERDELICS』は、極めて面白いアルバムだった。どこか“冬”のイメージがあるGLAYが、周到な準備のもと、初めて“夏”にリリースしたオリジナルアルバムであることはもちろん、メンバー4人がそれぞれに書いた曲が、ほぼ同じ割合で収録されているというバランス感。しかも、そのいずれもが4人のキャラクターを反映した、実に個性豊かな楽曲だった点、などなど。デビューから24年目に突入したベテランバンドが生み出した、通算14枚目のオリジナルアルバムとしては、驚くほど「攻め」の姿勢が貫かれた、実に派手やかな一枚となっていた。かくして、バンドにとっても4年半ぶりとなるアルバムチャート首位をもたらせるなど、堂々たる結果も残した本作。それを引っ提げて行われた『GLAY ARENA TOUR 2017 “SUMMERDELICS”』、12月10日さいたまスーパーアリーナ公演の模様を以下レポートする。

 長らくGLAYのライブに参加している人ですら「今回のアルバム曲は、ライブでどう表現されるのか予想がつかない」と言われていた本ツアー。それは、4人の“個性”が全開となったアルバム同様、4人の“個性”が随所に盛り込まれた、極めて盛りだくさんの内容となっていた。その大きな理由は、自らが手掛けた楽曲のライブ演出を、その人自身が“責任編集”という形で担当するという、異色の形態にあったようだ。オープニング曲をはじめ、そのスケール感と美しいメロディラインが印象的なTAKURO曲は、GLAYというバンドの基調となるものだ。その背後で流されるのは、雄大な映像やミュージックビデオのように美しい光景。とりわけ、最新シングルであり、ともすればファンへのメッセージであるようにも思える「あなたといきてゆく」で映し出された歌詞の言葉、さらにはライブの定番曲「BEAUTIFUL DREAMER」の背後で流された、「夢」という言葉を含むGLAYの歴代曲の歌詞のコラージュは、「これからも一緒に夢見ていこうぜ!」というTERUの曲前MCも相まって、多くの観客の心に響いていたように思う。そこに、近年その活躍ぶりが目覚ましい、HISASHIの「やんちゃ」で、時折ホラーな演出(「超音速デスティニー」で飛び出して踊り狂っていた女性は誰?)と、アルバム表題曲でもある「SUMMERDELICS」で流された、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』の世界観をGLAY仕様に作り直した映像など、ポップでカラフルなJIROの演出が加わり、さらに要所要所では、その歌声同様、真っ直ぐに美しいTERUの演出による映像が入り……その楽曲の振り幅同様、その映像演出もまた、相当多彩なものとなっていた。

 全体を通して、ひとつの大きな「物語」を紡いでいくのではなく、今のGLAYの“振り幅”と“勢い”を、そのままステージに持ち込んだように、一曲ごとに目まぐるしく変化するライブの雰囲気。とはいえ、そこに大きな“流れ”がなかったわけではない。広いステージを最大限に用いながらメンバーが端から端へと駆け回り、次々とロックな楽曲を畳みかけた序盤から、アリーナ中央に張り出した花道の先に設けられた小さなステージで、4人が寄り添うようにミドルテンポの曲を奏でる中盤、そして、HISASHIの「シン・ゾンビ」にまつわる諸々で観客を驚かせたあと、クライマックスに向けて着実に盛り上がっていく王道的なアプローチなど、そこには大きな“流れ”も確かに存在した。「TERUが歌えば、どんな曲でもGLAYの曲になる」とは、メンバーがよく口にする言葉だけれど、映像演出のバリエーションなど、かなり振り幅が大きいにも関わらず、それが全体としては、きっちりGLAYのライブとして成立しているのだ。それはまさしく、アルバム『SUMMERDELICS』と同じなのである。

 アルバム収録の全14曲を余すことなく披露しながら、その合間に「都忘れ」、「pure soul」、「Way of Difference」など初期の楽曲も披露しながら、バンドとしての“歴史”も感じさせるセットリスト。そのリストを組んだJIROのMCでは、デビュー前、会場近くに住んでいたTAKUROの6畳(半)の部屋に泊まりに行って謎の虫に刺された、なんていう微笑ましい(?)エピソードも披露されていた。それにしても、デビューから23年を経た今、なぜ彼らは、これほどまで自由かつ、音楽的にも激しく活性化しているのだろうか。そんな素朴な疑問の答えもまた、このライブのなかにあるように思えた。端的に言うならば、この空間こそが、GLAYの4人を、より自由な存在にしているのだ。そもそもの話、この規模のライブツアーを毎年のように行っているバンドは、他にはいないように思われる。というか、やろうと思ってもできないだろう。それが成立するには何よりもまず、駆けつけてくれるファンがいなくてはならないのだから。今回はアリーナツアーということで、もちろん会場の規模は巨大だ。だけれども、そこに漂う雰囲気は、非常に親密なものであるように感じられるのだった。「GLAYだったら、きっと楽しませてくれるだろう」、そして「今回はどうやってお客さんを楽しませよう」……そんな演者と観客の強固な信頼関係が、そこにはある。ファンが期待するものに応えながら、それを上回る驚きと楽しさをもたらせること。その信頼関係があるからこそ、彼らは誰よりも自由に飛び立てるのだろう。

 アンコールを終えたあと、いつものように「また、ここで会おうぜ! そのときまで行ってきます!」と声を張り上げたTERU。そんな彼の言葉に、「行ってらっしゃい!」と大声で応える観客たち。この日、本編の終盤で披露されたJIRO作詞作曲のアルバム曲「lifetime」の歌詞ではないけれど、〈退屈な毎日でも/ため息ばかりついてても/苦しい時にほら/流れるこのMUSIC/次にまた会えることを願って〉……そんなふうに演者と観客の心が確かに重なり合う瞬間が、GLAYのライブには存在するのだった。なぜか心持ち胸を張りながら、会場をあとにしたくなるような、そんな実に楽しい夜だった。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

■セットリスト
『GLAY ARENA TOUR 2017 “SUMMERDELICS”』
12月10日(日)さいたまスーパーアリーナ

M1.聖者のいない町
M2.デストピア
M3.I am XXX
M4.超音速デスティニー
M5.ロングラン
M6.空が青空であるために
M7.SUMMERDELICS
M8.微熱(A)girl サマー
M9.都忘れ
M10.SPECIAL THANKS
M11.pure soul
M12.あなたといきてゆく
M13.Way of Difference
M14.Scoop
M15.シン・ゾンビ
M16.BEAUTIFUL DREAMER
M17.Supernova Express 2017
M18.lifetime
M19.the other end of the globe

EN1.RHAPSODY
EN2.TWO BELL SILENCE
EN3.HEROS
EN4.XYZ

GLAYオフィシャルサイト

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