PrizmaX、コンセプチュアルなライブでみせた5人のポテンシャル 初のホールワンマンレポ

PrizmaX、初のホールワンマンレポ

 「PrizmaXは2017年に解散したグループ」……。

 超特急やDISH//らが所属するEBiDANの兄貴分であり、ハリウッド映画『レディ・プレイヤー1』(2018年4月20日公開)に出演している森崎ウィンらが在籍する国際派ダンスボーカルグループ・PrizmaX。その初となるホールワンマン『PrizmaX Live Level 6 悲しみを乗り越えて人は強くなれるだろう 〜Memory〜』の映像に登場した“解散”というパワーワード。夏に行われたツアー『PrizmaX Live Tour Level 5「DIVE」』で、このライブのティーザー映像が上映され、そのタイトルに漂う不穏さにホリック(PrizmaXファン)がザワついたことも記憶に新しいのだが……。

PrizmaX Live Level 6「悲しみを乗り越えて人は強くなれるだろう 〜Memory〜」Teaser

 実はかなりコンセプチュアルなものだったこの日のライブ。PrizmaXが解散して3年後の2020年を舞台に“解散後ホリック”となった女子高生2人が5人の魅力に触れ、本人たちの活動再開を願う……というストーリー映像をはさみながら、映像の中に登場する曲などを実際にパフォーマンスで披露していくという変則的な構成となった。

 オープニングでド派手な特効が炸裂し、ホリックにはなじみ深いCDデビュー曲「Mysterious Eyes」からライブがスタート。華やかにリミックスされた音源にのせて登場した5人のキレのある動きから、気合いの入り具合がビリビリと伝わってくる。この日は階段の左右にお立ち台を設けたセットが組まれていて、続く「UP<UPBEAT」など複数の曲で、彼らが普段は平面のステージで展開するフォーメーションを立体的に見せていく試みがなされていた。ユニゾンで踊る曲でも、このスタイルなら1人ずつの動きの個性が堪能できるので興味深い。白をベースにした衣装がひるがえると、チラリと見える裏地が各メンバーのイメージカラーになっているのも心憎い演出だと感じた。

 MCでは初のホールワンマンということで「2階のみなさ~ん! 2階って言えるようになった!」とはしゃぐボーカルの森崎ウィンがミャンマー語、そして黒川ティムが英語と、それぞれ母国語でも挨拶。王子キャラのパフォーマー・福本有希の「青年館のハニーたち! 今日は俺らと何しに来たの?」の問いに「デート!!!!!」とホリックたちが答えるコール&レスポンス(?)は平常運転だったが、この日は最年少のダンスリーダー・島田翼、そして普段は冷静なグループのまとめ役であるラッパーの清水大樹も非常にテンションが高く、パフォーマンスにもその爆発力が顕著に現れていたように思う。

 ウィン&ティムが情熱的にボーカルを掛け合う「REBORN」、有希と翼のぷちダンスバトルなども観られた“タオル回しソング”「Sing it!」、メンバー全員がグッズのペンライトを手にホリックたちと一体になって盛り上がった「Go!」。その盛り上がりがピークに達したタイミングでペンライト消灯のサインが出され、前述のストーリー映像の上映がスタート。ここから、ライブは虚構と現実が混ざりあう不思議な世界に突入していく。

 あるきっかけで今はなきグループ・PrizmaXを知った少女たちが彼らのありし日の姿に思いを馳せるシーンに続いて、ネイビーのスーツに着替えた5人が「抱きしめて行く」「Orange Moon」など、しっとりとしたナンバーを披露。各パフォーマーをフィーチャーしたパートも作りこまれ、翼の情感のこもったソロなど、ストーリーを体現するようにドラマティックなパフォーマンスが進行していく。「Orange Moon」では、パフォーマー勢だけでなくボーカルのティムの滑らかでセクシーなダンスもひときわ目を引いた。

 女子高生の1人・ユリがプリズ(PrizmaX)の好きなポイントを「パフォーマンスレベルの高さかな。ウィンとティムの歌はもちろん、5人そろった時の一体感が。特に全員そろってのパフォーマンスで一番いいのが、『OUR ZONE』」と語り、そこから彼らの楽曲の中でももっとも振付がダイナミックなEDMナンバー「OUR ZONE」がスタートする。サビ部分がボーカルレスで、リリース当時の2015年に熱い注目を集めていたAfrojackの流れを汲むサウンドメイクを含め、彼らの代表曲の一つといえるこの曲に続き、ファン人気の高い「Pleasure」では、ホリックたちと印象的な手の振りを合わせながら「100点満点!」(大樹)と満足気な笑顔を見せていた5人。

 映像内の会話でライブのMCの話題になり「オチを作れない大樹と、とにかく独特な有希のMCが面白かったらしいよ」というセリフに、なぜか拍手が巻き起こる会場。“解散後”のメンバーたちが、ソロラッパー(大樹)、ソロダンサー&DJ(翼)、YouTuber(有希)など、それぞれの道を歩んでいるシーンなどにも歓声が上がっていた。そんな流れの中、熱心なホリックだったユリの姉はPrizmaXの解散前に病気で亡くなっており、ユリは姉との思い出をたどることでPrizmaXに傾倒していったのだと明かされる。

 ステージでは離れた人との忘れ難い思いを込めたような「Someday」からパフォーマンスが再開。そしてこの日の楽曲の中でも白眉といえたのは、彼らとしては珍しいオール日本語のバラード「春空」だった。作詞を担当した有希をセンターにした情感のこもったダンス、ボーカル2人の掛け合いやハーモニーを含め、過去最高にエモーショナルなパフォーマンスを堪能できるものだった。対して続く「Truth」はティムによるオール英語詞の楽曲で、ボーカル2人がネイティブな発音を操れる強みを改めて感じさせる。この辺りのブロックではウィンが役者としての側面も活かし、登場人物の感情を表現するようにウェット感2割増しのボーカルを響かせていく。

 「もう1回ライブやってくださいってプリズに頼もう?」という少女のセリフから、ストーリーは動きだす。さまざまな理由が絡み合いグループは解散してしまったが、3年後、ウィンの元にユリの友達からの手紙が届く。「誰かが僕らに救いを求めているとしたら、今度こそ俺は救いたい。この子の笑顔を作りたい」と語るウィン。そこから夜明けのようなきらめきを放つ力強いナンバー「I want your love」がスタート。背中合わせで歌うウィン&ティム、普段の5人が交わすハンドシェイクを再現するなど、メンバーの絆を改めてパフォーマンスで表現していく。

 MCで「ここにいるすべてのホリック、そして今日来れなかったすべてのホリックを笑顔にできるように僕らはできることをすべてやります」と語ったウィン。「悲しいできごとがあったからこそ僕らは強くなれて、前に進んでいける」という言葉に続けて、これまでの彼らの楽曲にはなかったようなスケール感と力強さを持つ新曲「Memory」(後述「yours」のC/W)を初パフォーマンス。サビでのティムのミックスボイスや、低音ラップがトレードマークの大樹の熱く訴えかけるような“語り”に近いラップなど、随所に新しい趣向を凝らしたナンバーにホリックたちも聴き入っていた。

 PrizmaXの復活を見届けた2人の笑顔から、映像はエンドロールへ。演出に驚いていたホリックたちは一瞬狐につままれたようだったがアンコールの声が大きくなり、メンバーが再び登場。ホリック人気の高い「my girl」「Three Things」などをノリノリで披露していく。MCでは「解散しません! 80歳までやるよ」というティムの発言から即興の老人コント(?)が始まったりと、“らしさ”全開のステージに戻り、ホリックたちからも笑みがこぼれていた。さらにサプライズとして、先日リリースが発表された初のドラマ主題歌「yours」(2018年1月クール『明日の君がもっと好き』(テレビ朝日系)主題歌、2月14日リリース)も初披露。ウィンのアカペラから始まるこの曲は、ドラマのストーリーに沿って書き下ろされたという静かな中にも情熱を感じさせるラブバラードだ。ゆったりとしたBPMながらFISHBOY(RADIO FISH)による振付は非常にカウントが細かく、難易度の高いダンスパフォーマンスでも新境地を提示していた。

 ウィンを筆頭に全員が役者としても活動している彼らならではの、映像とライブや舞台をマッシュアップしたような企画だった『Level 6』。映像でも触れられていたように元々ボーカル、ダンスのレベルの高さで知られている彼らだが、ソングライターとしても頭角を現しつつあるウィン作曲のナンバーなども効果的に盛り込まれ、5人が持つさまざまなポテンシャルを提示していくショーケース的なニュアンスを感じた。シンプルに楽曲&パフォーマンスで魅せた夏のツアー『DIVE』とはかなり趣を異にする内容となったが、公演ラストに発表された2018年のホールツアー『PrizmaX Hall Tour Level 7 ~FUSION~』で、また新たに“レベル”アップした姿を見せてくれることを期待したい。

(写真=笹森 健一)

■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。

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