THIS IS JAPANが掲げる、2010年以降のオルタナティブ「継承しながら新しいものをブチ込む」

THIS IS JAPANが掲げる“オルタナティブ”

 THIS IS JAPANが、5月2日にミニアルバム『FROM ALTERNATIVE』をリリースした。同バンドは2011年に東京で結成。当時のライブハウスシーンは4つ打ちを用いるバンドが多い中、THIS IS JAPANはオルタナティブロックを選択。自分たちの信じる音楽を貫き活動を続けていった。そして、2016年には1stミニアルバム『DISTORTION』、2017年11月には、THIS IS JAPANが企画するコンピレーションCD『NOT FORMAL ~NEW ALTERNATIVE~』をリリースし、タイトルの文字通り新たなオルタナティブを確立しつつある。今回リアルサウンドでは、メンバー全員にインタビューを行い、彼らがより意識的にオルタナティブを鳴らしてきた2016年以降を軸に、バンドの変化や信念について話を聞いた。(編集部)

シンプルで、重くて、速いものを突き詰める(this is かわむら)

一一2016年の1stミニアルバム『DISTORTION』以降、THIS IS JAPANの状況はだいぶ変わったし、音もライブも一気に研ぎ澄まされてきたと思います。

杉森ジャック(以下、杉森):そうですね。まず2016年にリリースがあって、その後にすぐカナダに行って。初の海外ツアーでしたけど、まぁ言葉は通じないし、要は音だけの勝負になってくる。でもライブは予想よりかなり盛り上がったんです。となると、なんで日本では思うようにライブが上手く運ばないのかなって考えるし、日本の人はたぶん歌詞を聴いて、言葉を通して自分たちのことを知ろうとしてるんじゃないのかな……っていうことが浮き彫りになってきて。じゃあまずはサウンドを鍛えようと。そこから変わりましたね。

Koyabin:そのカナダツアーの後から大阪に行く機会が増えて。それまで東京では、こっちは必死だけどお客さんが棒立ち、っていうことが多くて、でも大阪はすごい勢いで盛り上がったんですね。感想を聞いていくと「スカッとするよね!」って声もあったし。自分たちでもそういう反応に驚いたんですね。たぶんそれまでは、自分たちがどんなバンドなのか、自分たちでもよくわかってなかったと思う(苦笑)。

一一カナダは特別としても、地方遠征って今までなかったんですか。

杉森:ほとんどなかったです。ちゃんと地方に行くようになったのはほんと最近の話で。それまでずっと東京でやってたし、ライブハウスでいろんなバンドを見ながら「こういうこともできる」「ああいうこともできる」って考えて、音楽性もいろいろ変わり続けてたんで。お客さんからすると見るたびに「あれ? こういうバンドだった?」って戸惑いがあったと思う。でも大阪に行ったのは、ある程度「自分たちがこう行きたい!」ってわかったタイミングだったので。

this is かわむら(以下かわむら):うん。やっぱ『DISTORTION』で一回整理された感覚がありますね。ほんと簡単に言っちゃうと、シンプルで、重くて、速いもの。それをちゃんと突き詰めてやりたいんだなって。

一一水元さんがステージで激しく動くようになったのも最近のことです。

水元:あぁ……なんか、一回やったらイケるようになりました。

杉森:ははは。それまで自分をガードしてたんだ?

水元:いや……東京のお客さんに「こいつ、いきなり動くようになったぞ?」って思われるとアレかなと思って(一同笑)。でも大阪だとみんな初めて見る人ばっかりだから。

Koyabin:「俺は元からこうでしたけど?」みたいな(笑)。

水元:そう(笑)。それで動いてみたら、東京でも全然できるようになって。自分のやりたいことだけやれればいい、じゃなくて、よりみんなを巻き込んでいけるように、って思うようになってきました。

杉森:なんか、楽しくて大暴れしてた大学のサークルの頃を取り戻していくような感覚だったよね。初期衝動がまた戻ってきたような。

一一そうやって激しさが増していくと同時に、ディスジャパは自分たちのことを“オルタナティブ”だと打ち出すようになりました。2010年代にこれを言い出すのって、かなり勇気がいると思うんですね。

水元:『DISTORTION』の曲が完成した時は、まだちゃんと言い切れてなかった気はする。作品が出てライブを続けていくうちに変化があったのかな。

杉森:うん。すでにあるジャンル名って、つまりは誰かが一通り耕したものじゃないですか。それを改めて掲げるなら、先人たちに対してTHIS IS JAPANが何を示していくのかが求められると思うんです。オルタナティブとか言いながら適当なことやってたら「何がオルタナじゃい?」って殴られると思うんで。

一一しかもSEがFUGAZIだし。これで半端だと腹立ちますね(笑)。

杉森:そう(笑)。でも俺たちは本気で好きだし、2010年以降の日本でやるなら絶対負けないっていう自信が、唯一オルタナティブにはあったんです。これがシューゲイザーとかならもっとすげぇ奴がいるなと普通に思うけど。で、オルタナティブロックと一口に言っても、ほんとアンダーグラウンドで自分たちにしかできないことを追求してるバンドは今もいっぱいいますよね。ただ、自分たちならオーバーグラウンドを狙えるポジションに行けると思ったんです。なぜなら歌があったから。

一一確かに。歌のポップさはディスジャパだけの強みです。

杉森:そう。さっきのカナダの話とも繋がりますけど、日本人に普通に伝わる歌詞とメロディがある。でもバンドはガチガチのオルタナサウンドで。その2つを合わせられたのは、今のところTHIS IS JAPANの一番自信があるところで。だったら今オルタナティブを掲げてもイケるでしょ! って。

かわむら:うん。僕らが今後オーバーグラウンドを目指す時に、お土産として一緒にすくい上げていくもの、今の日本の音楽シーンに足りないなって思うものがオルタナティブだったのかなって思います。

杉森:あとロックというかロックンロール? の例えばチャックベリーやThe Beatlesからはじまるようなジャンルは、伝承音楽の前提が強いと思っていて。聖火リレーみたいにバトンをひとつずつ繋いで、次の世代に渡していく。で、日本人は輸入したものを自分たちなりに加工して、時にはオリジナルを超えるものを生み出してきたじゃないですか。THIS IS JAPANの場合はそれがオルタナティブロックだった。今伝えられる音楽、次の世代に残せる音楽があるとしたら、90年代のオルタナから引っ張ってきたものじゃないかなって。自分たちが好きだったものを継承しながら、新しいものをブチ込むっていうのが一番面白いから。そういう確信が出てきたのも最近だと思います。

一一そのために、新曲に必要だったものって何でしょうか。

かわむら:サウンドでいえば、なるべくシンプルに。無理に展開を変えない、言葉数を減らす、あとは全体の音像を固めて重くする。ほんとにその3つしかやってないと思うんです。今までいろんな良さを活かそうとして、その曲に合わせたチューンナップを毎回やってたところを、無駄なことをしないTHIS IS JAPANの重いサウンドっていうものを根底に固めてしまう。

Koyabin:そう。先に形を限定したような感じですね。凝った展開とかも今回は一切なくして、ずっと同じテンポの重いビートだし。

かわむら:今までいっぱい筋トレしてサッカーしようとしてたけど、今は「見てくれ、この力こぶを!」っていう感じ(笑)。「ここが一番強いんだぞ!」っていうのを、いろんな角度から見せたいっていう。

杉森:競技が変わってシンプルになった。なんか、障害物競争のハードルが全部なくなった、みたいな気持ちよさがありますね。全力で走ることの喜びを取り戻したっていうか。

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