=LOVE『手遅れcaution』が好調の理由 新境地で掴んだグループの変化を読む

イコラブ『手遅れcaution』好調の理由

 =LOVEが5月16日にリリースした3rdシングル『手遅れcaution』が、前作を上回る売り上げ枚数を記録している。昨年9月に発売したデビューシングル『=LOVE』が18,746枚、同年12月発売の2ndシングル『僕らの制服クリスマス』が40,255枚、そして今作『手遅れcaution』は62,930枚と着実に右肩上がりの記録を残していることが分かる。では、=LOVEはなぜ今作で再び売り上げを伸ばしているのか。

 まず、ひとつに今作の表題曲「手遅れcaution」が、これまでのグループのイメージを一新したコンセプトであることが挙げられる。プロデューサーを務める指原莉乃は、グループのデビュー時に「普通のアイドル」「THE アイドル」がコンセプトにあると話していたが、デビューシングルの「=LOVE」は、まさにAKB48「言い訳Maybe」を彷彿とさせるような王道のアイドルソング。2作目となる「僕らの制服クリスマス」は、メンバーから見た等身大のクリスマスを歌詞に散りばめた、季節感溢れる煌びやかな楽曲だった。王道のアイドルソングという枠では、この2作は地続きのコンセプトにあったと言えるだろう。

=LOVE(イコールラブ)/『手遅れcaution』【MV full】

 半年ぶりにリリースされたシングル『手遅れcaution』において、まず印象的なのが黒い制服衣装。これまでの白、赤とは一変したアダルトなビジュアルイメージにインパクトを覚える。歌詞は、禁断の恋愛を描いた生々しい描写が衝撃的。シリアスな曲調に、メンバーの低く力強い歌声、歌詞にもある“慟哭”のような叫びが、楽曲の世界観をより色濃く映し出している。=LOVEの楽曲は、全て指原が歌詞を担当しており、4月18日深夜に放送された『AKB48のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で指原は「歌詞の内容もMVも、不倫とか、女の子同士が好きという話をしているんですけど、それは『羣青』という漫画を読んだ時に、こういう曲が書きたいなと思ったんです」とモチーフとなった題材を明かしていた。その言葉通りに、MVでは女子高を舞台にしながら、髙松瞳、佐々木舞香、野口衣織による三角関係の恋愛が中心に描かれる。ダークな映像に、ガラスが割れる音とともに表れるタイトルバック、先生に寄り添う齊藤なぎさ、雨が降りしきる中でずぶ濡れのままキスをする髙松と佐々木、それを目撃し絶叫する野口、と見るものに鮮烈な衝撃を残す。ドローンで撮影されたダンスシーン、サビの“警報”を表した踊りではバックに警報音が鳴り響く。ドラマ仕立てで進行していくMVでは、緊張感のある演技が求められるが、今年2月に初の舞台公演『けものフレンズ』を経験していることも大きく、特に憎悪を露わにした野口の演技は見るものを惹きつける画力を感じさせる。

=LOVE(イコールラブ)/「部活中に目が合うなって思ってたんだ」【MV full】
=LOVE(イコールラブ)/「樹愛羅、助けに来たぞ」【MV full】

 シングル収録曲の「部活中に目が合うなって思ってたんだ」は、指原が「HKTでこの曲をやりたい!と秋元さんにお願いしたほどにお気に入りの曲です。笑」とツイートしていた、HKT48「12秒」にも匹敵するほどにフレッシュな楽曲。「手遅れcaution」と一緒に収録される上での、カウンターにある楽曲とも言えるだろう。さらに「樹愛羅、助けに来たぞ」では、タイトルの通りに齋藤樹愛羅をセンターに据え、戦隊ヒーローチックな衣装のメンバーが助けに行くという内容。作曲にヒャダインこと前山田健一を迎え、グループ随一のユニークな楽曲となっている。これまで、=LOVEのセンターはMVの存在する楽曲に限って言えば、シングル3枚の表題曲を髙松、「届いてLOVE YOU♡」では齊藤なぎさがセンターを張ってきた。グループ3人目となる齋藤樹愛羅は、=LOVE最年少メンバーで、守りたくなる存在の彼女にぴったりの楽曲だ。

 指原は、ライブでお馴染みの“カメコ”を<ここが噂の天国だ!><カメコのみんなも/声を出して!>といった歌詞で「ようこそ!イコラブ沼」に登場させていたが、そのある種“ぶっ飛んだ”ソングライターとしての才能は、「樹愛羅、助けに来たぞ」にも表れている。「手遅れcaution」に関して言えば、1stシングルを書いていた時から少しずつ構想し書き進めていたというが、深くシリアスな世界観に、「慟哭」や「濃藍」などの一般会話ではあまり使わない、歌詞として浮き出てくる熟語が登場していることは、グループとしても、作詞家の指原としても新境地と言えるだろう。ただ、先述したラジオ番組にて同席していた秋元康にアドバイスを受けていたのも事実。そこは、これからのグループの余白として期待できる部分だ。

 =LOVEが初めてファンの前にお披露目されたのは、昨年の『TOKYO IDOL FESTIVAL』でのステージだった。今年のフェスへの出演もすでに決定しており、この1年の活動の集大成を見せる場となりそうだ。また、7月には『けものフレンズ』に続く、ステージプロジェクト第2弾『ガールフレンド(仮)』が上演される。アニメ・ゲームとのメディアミックスは、=LOVEの最大の武器であり、舞台公演はメンバーが大きく成長するチャンス。『けものフレンズ』の演技経験が「手遅れcaution」に活かされたように、今回の舞台においてもグループにとって新境地に挑む機会となるはずだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter 

■リリース情報
『手遅れcaution』
発売:2018年5月16日(水)
【Type-A/CD+DVD】¥1,500
・初回限定仕様
=LOVEメンバー生写真1枚 ランダム封入予定
全国イベント参加券 or スペシャルプレゼント応募券1枚
〈DISC 1〉
1 手遅れcaution
2 「部活中に目が合うなって思ってたんだ」
3 手遅れcaution (instrumental)
4 「部活中に目が合うなって思ってたんだ」(instrumental)
〈DISC 2〉
1 手遅れcaution Music Video
2 手遅れcaution Making Video
【Type-B/CD+DVD】¥1,500
・初回限定仕様
=LOVEメンバー生写真1枚 ランダム封入予定
全国イベント参加券 or スペシャルプレゼント応募券1枚
〈DISC 1〉
1 手遅れcaution
2 樹愛羅、助けに来たぞ
3 手遅れcaution (instrumental)
4 樹愛羅、助けに来たぞ(instrumental)
〈DISC 2〉
1 『Documentary of =LOVE』総集編
【Type-C/CD】¥1,000
〈DISC 1〉
1 手遅れcaution
2 「部活中に目が合うなって思ってたんだ」
3 樹愛羅、助けに来たぞ
4 手遅れcaution (instrumental)
5 「部活中に目が合うなって思ってたんだ」(instrumental)
6 樹愛羅、助けに来たぞ(instrumental)

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