THE SIXTH LIEが『ゴールデンカムイ』ED曲に込めたもの「“生と死にまつわる戦”の雰囲気を」

THE SIXTH LIEインタビュー

 洋楽シーンにおける現行EDMのエッセンスを大胆に取り入れ、“近未来型エレクトロ・ロックバンド”をテーマに掲げる3人組・THE SIXTH LIEが、6月6日にシングル『Hibana』をリリースした。同作の表題曲は、現在放送中のTVアニメ『ゴールデンカムイ』のエンディングテーマに書き下ろしたもので、作品の世界観を踏襲した“白い世界”と“火花”が印象的な疾走感のあるロックナンバーに仕上がっている。リアルサウンドでは今回、THE SIXTH LIEの3人にインタビューを行い、彼らがこれまで掲げてきた“エレクトロ・ロックバンド”としての活動や、今回の「Hibana」でストレートな表現にトライした理由、今後の展望などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「ジャンルに縛られない振り幅の広さがある」(Reiji)

——THE SIXTH LIEはバンドサウンドとEDMの要素をハイブリッドした“エレクトロ・ロックバンド”を掲げて活動していますが、そのスタイルはどのように確立されたのでしょう?

Reiji:僕とRayが知り合った最初の頃は、2人ともハードロックとかメタルが好きで仲良くなったので、別にバンドのことは考えずにメタルコアみたいなものをずっと作ってたんですよ。そこからバンドをやることを意識し始めて、ボーカルを入れるなら声を引き立てるようなサウンドにシフトチェンジした方がいいなと思って、メタルというよりもエモーショナルなロック、今で言うとむしろ今回の新曲「Hibana」に近い音楽性をやるようになったんです。

Ray:Arataが加入してからは、そういうエモーショナルロック的なものをしばらくやってたんですけど、そのうちに「THE SIXTH LIEといえばコレ」と言えるものが欲しいなと思うようになって。それで当時海外で増えてた電子音を取り入れた音楽を、僕らも日本で早めに取り込もうと思って、「Wake Up Your Fire」(2016年)という曲を作ったのが転機になりましたね。

Reiji:曲は僕が作ってるんですけど、そういう曲をやろうと思った2015年頃はまだ打ち込みソフトを全然触ったことがなかったんですよね。ただ、そのときすでに電子音を使ってるバンドはたくさんいましたけど、ビート的にしっかりとEDMのサウンドになってて、ビルドアップやドロップのある音楽をロックと混ぜてる人はいないと思ったんです。なのでいろいろ勉強して、自分たちで作りあげたのが「Wake Up Your Fire」だったんです。

左からReiji、Ray、Arata。

——「Wake Up Your Fire」で現在のTHE SIXTH LIEのスタイルを確立されて、同曲を含む1stアルバム『INTEGRAL』(2016年)、それと対になる2ndアルバム『DIFFERENTIAL』(2017年)という、アッパーなEDM色の強い作品を発表されましたが、それに続く配信シングル「Go On」(2017年)は一転してトロピカルハウス的な要素が強くなりましたよね。

Reiji:ああ、それは本当にそうですね。

Ray:ちょうどReijiがそういう曲にハマってたんだよね。

Reiji:Kygoの曲がすごく良いなと思って、そのときに流行ってたトロピカルハウスの要素を取り入れたんですよ。

——そのように海外の音楽シーンの動向をキャッチアップして、自分たちの音楽性に反映させることが多いのですか?

Reiji:日本に入ってきたときにはもう遅いと思ってるので、今アメリカのビルボードで流行ってる音楽からインスパイアをもらうことは多いですね。3rdアルバムの『SINGularity』(2018年)のときは、The Chainsmokersをサウンド的にリファレンスしまくりましたし。

——たしかに『SINGularity』は、The Chainsmokersやトロピカルハウス以降のメロディアスかつ歌を聴かせるタイプのEDMに寄せた印象がありました。そこは意識的にシフトチェンジしていったのでしょうか?

Ray:音作りに関しては基本的にReijiがやってて、他の2人は彼にお任せしてるんですよ。だからReijiがそのときに聴いてるものとか、「今はこれをやりたい」と思うサウンドの要素が強くなるんです。

Reiji:トロピカルハウスってコンコンした感じの音が入ってるじゃないですか。その音とクリーンギターとかクランチギターの音の相性が良さそうと思って被せてみたら「Go On」ができたんですよ。The Chainsmokersに関しても電子音っぽい音はそんなに入ってないので、アコースティックな音と相性がいいなと思ってて。

Ray:彼らはライブでも生のドラムが入ってるしね。

Reiji:そうそう。だからEDM的な個性を出しつつ、ライブ感を突き詰めていくと、3rdアルバムのようなスタイルがいちばん良いんじゃないかと思うようになって。

Ray:あと、そういうゆっくりで音数の少ない曲のほうが、海外でライブしたときの受けがいいんですよね。去年もイギリスやフランス、ドイツに行ったんですけど、たぶんテンポ感とかが伝わって、向こうのお客さんがすごくノってくれるんですよ。

Reiji:日本だと『DIFFERENTIAL』に入ってる「Another Dimension」みたいに、疾走感があってラウドな曲が受けるんですけど、去年の7月にイギリスの『HYPER JAPAN』というイベントでライブをしたときは、逆に静かな感じでビート感のある曲のほうが盛り上がったんですよね。そこは予想を裏切られましたし、海外でやるときにちゃんと考えないといけないところだと思いました。

——やっぱり日本と海外ではノリ方も違うものなんですか?

Reiji:そうですね。海外から見ると僕らは外タレになるわけじゃないですか。なので、向こうとしては「(日本から)大物が来た!」みたいな感じで盛り上がってくれるので、自分たちが売れてるんじゃないかって勘違いしちゃうぐらいなんですよ(笑)。熱狂的だよね?

Arata:熱狂的でしたね。これは海外の友達から聞いた話なんですけど、向こうはアーティストとお客さんが一対一の人間同士として、どちらも100%の力でぶつかり合う美学みたいなものがあるらしくて。だからか最前の圧力がすごかったですね。別にそこまで煽ってないのに頭をブンブンに振ってるし(笑)。

Ray:静かな曲でもヘッドバンギングしてるもんね。

Reiji:僕らのライブは日本だと女性のお客さんが多いんですけど、海外だと屈強な男の人が最前にいたりして(笑)。

Arata:あれはめちゃくちゃあがりましたねー。柵をぶっ壊しそうな勢いでしたから(笑)。

Reiji:戦ったら絶対に勝てないと思いながらライブしてました(笑)。

——ちなみにメンバーのみなさん、音楽的なルーツはどんなところにあるのですか?

Arata:僕はそもそもL'Arc〜en〜Cielがすごく好きで、アルバムも全部持ってるぐらいだったんですけど、今はダブステップとかトロピカルハウスみたいなものが好きですね。ModestepとかThe Chainsmokersとか、いろいろ聴いてます。

——Modestepはみなさんが『INTEGRAL』や『DIFFERENTIAL』でやられた音楽性に近いですものね。Rayさんは?

Ray:僕はメタルが好きだったんですけど、そこからプログレッシブロックがすごく好きになって、70年代のKing CrimsonとかPink Floyd、Yes、Genesis、ELP(Emerson, Lake & Palmer)あたりから、そのバンドのフォロワーみたいな最近のバンドまでをずっと聴いてます。でも、最近TWICEさんにハマっちゃって、こないだハイタッチ会に行くためにシングルを15枚ぐらい買いました(笑)。

——急転回しましたね(笑)。プログレはどういう部分に惹かれたのでしょうか?

Ray:曲展開ですかね。もともと変拍子が好きだったんですけど、別にそういうのが入ってないプログレも好きですし。それとアルバムを最初から最後まで通して聴くことが好きで、プログレはジャケットとかにも世界観があるじゃないですか。そういうトータルのアート性が好きなんです。

Reiji:僕は小学生の頃に、兄がLinkin Parkをひたすら流してる時期があったので、好き嫌いとかの問題ではなくLinkin Parkが根に染みついちゃって(笑)。気が付いたらそういう傾向の音楽ばかりを聴いてましたね。今は音楽を勉強のつもりでしか聴けなくなってきてるので、普段は寝るときにYouTubeで“眠れる音楽”って検索して聴きながら寝てます(笑)。

——いまLinkin Parkのお話が出ましたけど、みなさんはライブでLinkin Parkの「Heavy」をカバーされてますよね。「Go On」のシングルのカップリングではBring Me the Horizon「Oh No」のカバーも披露されてますが、これらはどういった意図で選曲されたのでしょうか?

Arata:カバーはその時その時に影響を受けてるアーティストの楽曲をやることが多いです。Bring Me the Horizonからはすごく影響を受けてますから。でも「Oh No」という曲は彼らにしてはあまりメジャーな曲じゃないのかな?

Reiji:そうだね。Bring Me the Horizonにしては珍しいタイプの曲調なんですけど、サウンドクオリティと音の使い方が素晴らしくて、音数がたくさんあるのに全部の音がちゃんと聴こえますし、ギターのフレーズはめちゃくちゃシンプルなのにすごく耳に残るんですよ。無駄な音がない感じで、THE SIXTH LIEとしてめざしたい音楽性だと思ったんです。実際にカバーしてみたら、音の組み立て方とか後半のアンサンブルとか、すごく勉強になりましたね。

——みなさんにとってTHE SIXTH LIEというバンドの強みはどんなところにあると思いますか?

Ray:僕はArataの声だと思いますね。Arataの声は聴いて一発で彼の声とわかるし、それはボーカルにとっていちばん大切なことだと思うんですよ。どんな曲を作ってもArataが歌うとTHE SIXTH LIEになるというのが僕らの強みだと思います。

Arata:僕らはライブで映像を使ってるんですけど、そういった工夫はメンバーみんなで話し合ってやってるので、いろんなことを無限にできる可能性を感じてて。そういう新しいことにチャレンジしていく姿勢もTHE SIXTH LIEの強みだと思ってます。

Reiji:ステージの背面全部LEDとかやってみたいよね。

Arata:やってみたい!……まあ、予算的な問題もあるんですけど(笑)。

——たしかにライブを拝見して、映像と演奏を同期させた演出が印象的でした。Reijiさんが思うバンドの強みは?

Reiji:僕らはジャンルに縛られない振り幅の広さがあると思ってて、それを声でまとめてくれるのがArataなんですよ。そのいろんな幅の中で何かしらひとつ刺さってくれたら、THE SIXTH LIE全体を好きになってくれる魅力はあるんじゃないかと思ってます。

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