9mm Parabellum Bulletが轟かせた未来への明るいイントロ 日比谷野音ワンマンを見て

9mm『カオスの百年 vol.12』野音レポ

 9mm Parabellum Bullet自主企画『カオスの百年 vol.12』の日比谷野外大音楽堂公演が、5月27日に開催された。野音でのライブとしては、2016年の『LIVE 2016”Waltz on Life Line』以来となる。そのときはギターの滝 善充が左手の不調により一時退場する場面もあって、急遽メンバーが弾き語りを披露するなどしステージを完遂した。その年の11月のライブで、滝はライブ活動のみ休養となったため、今回事前に滝の出演が発表されたことは、ファンにとって安心するところがあったはずだ。また前回の公演を観ている人にとっては、特別な思いもあるだろう。フロントマン・菅原卓郎(Vo/G)もそんな会場の空気を感じたのか、MCで「今日はなんていうんですかね、リベンジ? でもリベンジは軽く超えて、今日をいい日にしたい。いろいろ超えてきましたから」と語った。この2年ぶりとなる野音のライブは、9mm Parabellum Bulletというバンドの強さや凄み、そしてこの2年間のドラマを見せると同時に、これからの未来へ明るいイントロを轟かせる一夜となった。

 この日はまず、菅原、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)の新プロジェクト、AC 9mmが登場。AC 9mmは、9mm Parabellum Bulletの楽曲をアコースティックにリアレンジする3ピース編成で、この野音が初ライブ。アコースティックセットということで、菅原も中村も椅子に腰かけてのプレイとなったが、あのキメがふんだんにある濃厚な味付けの9mmサウンドを、静かでおとなしいアコースティックバージョンに変えるという単純なものでは決してない。「みんなの知る曲が、いろんな形で登場します」(菅原)の言葉どおり、曲の旨みを最大限活かしながら、3人のプレイヤーとしての発想を存分に詰め込んだアンサンブルの妙を聴かせてくれた。既存曲を新しい角度から見せることで、ハッとする光景を生み出し続けたAC 9mm。観客にバンド自身と楽曲のさらなる広がりを感じさせた。

 リアレンジ曲としては、テンポが“最遅”になったという「星に願いを」は、スローで、美しい星の瞬きが聞こえるようなバラードに。中村がアレンジしたという「ハートに火をつけて」は、菅原曰く“ビールがすすむ”アレンジに仕上がり、夕暮れの野外にもぴったりの響きとなった。ちなみに、球体が連なったような形をしたかみじょうのドラムは、様々な色で光るというスペシャルな仕様だったのだが、この日はまだ外も明るい時間帯だったため、本領発揮とはならず。そこはまた次回の楽しみとなったが、リアレンジされた曲と同様に、ステージングも遊び心に富んだAC 9mmの初お披露目であった。

AC 9mm

 そしていよいよ、9mm Parabellum Bulletの登場。爆音のSEにも負けない歓声が会場から湧き上がり、メンバーの姿が見えると、さらなる拍手喝采が日比谷に響き渡る。今回は、滝を含めたメンバー4人に加え、1年以上ライブをともにしてきたサポートギター・為川裕也(folca)と武田将幸(HERE)が、セットリストの前半・後半でそれぞれ登場するという5人編成でのステージとなった。

 1曲目の「The World」から、強靭なかみじょうのドラムに、中村がシャウトを決めてアクロバティックに空を蹴り上げるなど、バンドは凄まじいテンションで爆音をかき鳴らしていく。続く「Mr.Suicide」、そして「Lost!!」と菅原、滝、為川のトリプルギターが轟音や分厚いユニゾンを聴かせ、観客を圧倒していった。その音圧、ギターが生み出すソリッドな音の壁、また生き物のように濃密に絡み合う音が、最高だ。

 「心ゆくまで9mm Parabellum Bulletの音楽を楽しんでほしい。新しい伝説を作るか」。菅原はそう笑顔を見せる。ここで連投したのは、アルバム『BABEL』のアグレッシブでカオティックな「Story of Glory」「I.C.R.A」の2曲。かみじょうの高速のキックで会場が歓喜に沸き、滝もシャウトを決めながらギターを奏でたり、中村はベースを放り出してステージを暴れ回ったりと、目が離せない。これが9mmのライブだ。

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