9mm Parabellum Bulletの衝撃は薄れないーー『カオスの百年』ツアー最終公演を振り返る

9mm『カオスの百年』ツアー最終公演

 9月9日の“9mmの日”を皮切りに、全国5会場6公演で開催された、9mm Parabellum Bullet(以下、9mm)のライブツアー『9mm Parabellum Bullet presents 「カオスの百年TOUR 2018」』 が、9月28日と29日の東京・Zepp Tokyoでファイナルを迎えた(初日9月9日のZepp Sapporoが直前に起きた北海道胆振東部地震の影響により延期され、2019年3月17日に振り替え公演が行われる)。『カオスの百年』と付くライブは、9mmが結成時から開催している企画イベントで、今年は5月27日に日比谷野外音楽堂で開催。ツアー形式での開催は2015年以来、今回が二度目となる。そんな特別なライブである今回は、新曲2曲を収録したCDがチケットについてくること、ファンのリクエストがセットリストに反映されることが、早くから明らかになり話題を集めていた。29日のZepp Tokyoでは、新曲が披露されたほか、コアなセットリストが組まれ、生粋の9mmファンを歓喜させる内容となった。

新曲「カルマの花環」「21g」を生披露

 真っ赤な照明がたかれる中、メンバーが登場。ハウリングノイズが鳴り響き、会場が一体となった「ワンツースリーフォー」というカウントを合図に、一気に轟音が溢れ出した。アッという間のオープニング「Lovecall From The World」が終わるやいなや、「9mm Parabellum Bulletです。こんばんは」と挨拶もそこそこに、2曲目の「インフェルノ」へとなだれ込む。〈命を燃やし尽くせ〉と歌が始まると、ワッと歓声が会場に沸き起こった。これもわずか1分半という超潔いナンバー。まるでマシンガンの乱射のような演奏で、集まった観客の心を撃ち抜くと、勢いはそのまま「Discommunication」へ突入。「オイ! オイ!」という観客の合いの手、ジャンプ、クラップが加わり、会場全体が揺れる。曲の最後はお馴染みのカオス展開で、中村和彦(Bt)はベースを振り回し、滝 善充(Gt)は花道の先で、転げ回るようにギターをかき鳴らした。そして唸るようなベースのフレーズから始まった「Sleepwalk」は、変拍子のリズムとキメが心地よく響く。一度曲が収束してからの後半は、観客全員が頭を揺らして一体となった。『インフェルノ』リリース当時(2016年7月20日リリース)の何かのインタビューで「この曲を長くするのは、濃厚な豚骨ラーメンにお湯を足すようなもの」と答えていたことを思い出す。このオープニング4曲から、この日の濃厚さを予感させた。

 「今日はファイナル、よろしくたのむぜ、みんな。秘密のCDもスパッと最後に飛び出すから、みんなしっかり掴んで帰ってください。今日も“特濃”な時間を過ごしましょう。じゃあその持って帰ってもらうCDから、新曲をやります!」と菅原卓郎(Vo/Gt)が言い、「カルマの花環」を披露した。

 このツアーでは、新曲2曲と5月の日比谷野音でのライブ音源2曲を収録した秘密のCDが、来場者全員に無料配布された。公演ごとにジャケットのデザインとライブ音源の収録曲が異なり、全6パターンを集めて並べると1つのデザインになるという趣向も彼ららしい。そんな話題の1曲を披露するとあって、会場には一瞬張り詰めた空気が流れたように感じた。

 「カルマの花環」は、ヒステリックなギターリフと跳ねたビートのイントロから一転、メランコリックなメロディが響く、そのギャップが秀逸だ。サビでは叫びのような、強烈なボーカルが炸裂する。カルマとは業のことで、人の業が絡まり合う争いばかりの世の中では、決して花は咲かないだろうと、歌詞には痛烈なメッセージが刻まれている。1曲の中でリズムが次々と変わる様子は実にスリリングで、後半に訪れるカルマを表現したようなドロドロとしたギターが、世界観を演出していて実に秀逸だった。

 もう1つの新曲「21g」を演奏する際のMCでは、「21g」にまつわるエピソードを披露。菅原は「2007年にメジャーで初めてCDを出して、その時レコーディングした曲の中に「21g」も入っていて。ちゃんと録ったんだけど、アルバム『Termination』には結局入れてなくて。今回みたいな、何のアルバムも出さないで回るツアーに来てくれた、みんなに聴かせるのにうってつけの曲です。11年眠らせておいたから、当時のままでもダメじゃないんだけど、2018年バージョンでお聴かせします」と語る。

 昔から、人は死ぬと魂の重さの分の21グラム軽くなると言われるが、この「21g」の歌詞では、命に重さなんかない、誰も彼も人は等しく弱く、だから愛が必要だと歌っている。タイトなリズムと浮遊感のある歌が繰り返される楽曲で、サビメロではパッと目の前に広大な景色が広がる感覚が訪れる。切なげなギターソロの後のDメロでは、どこか温かみを感じさせる雰囲気になり、そこから徐々に熱を増していってオチサビに突入する展開が、実にドラマチックで胸を掴まれた。

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