NMB48 山本彩の卒業シングル『僕だって泣いちゃうよ』は“功労者”の門出にふさわしい作品に

参考:2018年10月29日付週間シングルランキング(2018年10月15日~2018年10月21日)

 2018年10月29日付の週間シングルランキングで、1位を獲得したのはNMB48の『僕だって泣いちゃうよ』。2018年11月4日にNMB48劇場で開催される公演をもって卒業する山本彩の“卒業シングル”です。

 2010年のNMB48の立ち上げから参加してきた山本彩。「僕だって泣いちゃうよ」は、ちょっと驚くレベルで山本彩の花道を飾っています。

【MV】僕だって泣いちゃうよ / NMB48

 MVでは、総勢71人のセンターに立つのが山本彩。そして、過去から現在までの彼女の映像が織りこまれていきます。ステージに出る直前の山本彩、レッスン中の山本彩、ギターを弾く山本彩。そして、過去の映像で涙を流していた山本彩は、「僕だって泣いちゃうよ」では涙を流すメンバーたちを抱きよせます。

NMB48『僕だって泣いちゃうよ』(初回限定盤・Type-A(CD+DVD))

 なにより「僕だって泣いちゃうよ」で驚いたことは、1番のAメロの歌いだしが山本彩であり、彼女のボーカルの個性が前面に出ていることでした。そこでは完全に山本彩1人の個性が押しだされており、48グループのイメージとは離れているほどなのです。

 また、〈孤独になる瞬間は僕だって泣いちゃうよ〉という歌詞も山本彩の卒業に捧げられたものでしょう。「僕だって泣いちゃうよ」は、NMB48の功労者である山本彩のための楽曲として制作されており、聴く者をNMB48の物語の中へと連れ去るのです。

 全形態共通のカップリングは、アンダーガールズの「ロマンティックなサヨナラ」。48グループに多数楽曲を提供している福田貴訓の作編曲による突然のシティポップです。

 Type-A収録のTeam Nの「嘘つきマシーン」は、ロック歌謡な感触。Type-B収録のTeam Mの「True Purpose」は、中華風味がスパイスになっています。Type-C収録のTeam BIIの「職務質問」はフォーキー。劇場盤収録の研究生の「夢は逃げない」は、山本彩が作曲した楽曲です。

 そして、Type-Dに収録されているのが山本彩の「忘れて欲しい」。これもまた別れの歌です。フォークロックな楽曲ですが、山本彩の歌い回しが歌謡性を生みだしているのを感じます。

 『僕だって泣いちゃうよ』をどれか1形態を買うなら、Type-Aも捨てがたいですが今回はやはりType-D。山本彩の門出にふさわしいのです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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