Uru、『中学聖日記』主題歌とドラマの強い結びつき 有村架純らの心情と重なる楽曲を分析

Uru、『中学聖日記』主題歌を分析

 Uruが、新曲「プロローグ」を12月5日のCDリリースに先駆けて、本日10月30日より先行配信した。現在オンエア中の火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系)主題歌に起用されている「プロローグ」は、トレモロで揺れるギターのアルペジオとピアノによる“静”と、〈どうして気づいてしまったの〉というリリックを起点に叩かれるドラムが生み出す“動”のコントラスト、そしてなによりUruの天性とも言えるハスキーな歌声が印象的だ。

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 Uru自身は本楽曲について「原作や脚本を読ませて頂いた時の胸の苦しさや痛みをヒントに制作しました。切なさや愛しさなど一つ一つのシーンで物語に寄り添う曲になってくれたら嬉しいです」とコメント。そしてまさにこの楽曲は『中学聖日記』の世界観をより引き立てる主題歌となっている。

 ドラマ『中学聖日記』は、自分を大切に想ってくれる年上の婚約者・川合勝太郎(町田啓太)がいながらも、勤務先の学校で出会った10歳年下の中学生・黒岩晶(岡田健史)に心惹かれていく女教師・末永聖(有村架純)の“禁断の恋”を描く。本作の主人公・聖は、真面目な性格で婚約者のことを思い、ただ懸命に新任の教師として励んでいる“普通”の人間だ。晶からの告白も、教職者という立場から頑として拒否する、理性的な性格の持ち主であり、聖と晶の恋は、決して一時の寂しさを埋める火遊びではない。

 恋に落ちてはいけないのに、落ちて“しまった”ーーその理性と感情のジレンマは「プロローグ」の歌詞にも反映されている。〈痛くて苦しくて/それなら見えないように/どこかへ飛んでいけ/そう思うのに〉という歌詞は、まさにドラマでの聖の思いを象徴していると言えるだろう。聖を演じた有村自身も「プロローグ」について、「『中学聖日記』の世界の中で過ごしてきた時間や感情が、この曲を聴くだけで蘇ってきます」とコメント(参考:Uru、新曲「プロローグ」で有村架純主演ドラマ『中学聖日記』主題歌担当 12月にシングル発売)しており、本楽曲と作品との結びつきの強さが伝わってくる。

 「プロローグ」はドラマのそうした切なさを深める一方で、そんな恋に落ちてしまった聖をどこか優しく慰めるようにも聞こえる。それはこの曲が、恋愛の苦しさ、暗さのみに沈み込まず、劇的なドラムパートと、長調と短調を行き来するギター、ピアノによって、力強さも感じさせる楽曲に仕上がっているからだろう。

 今までのUruといえば、TVドラマ『コウノドリ』(TBS系)の主題歌「奇蹟」や、TVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディングテーマ「フリージア」、映画『劇場版 夏目友人帳 〜うつせみに結ぶ〜』主題歌「remember」など、ゆったりとした憂いや儚さのバラードの印象が強い。しかし、「プロローグ」では、Uruならではの切なさはそのままに、リスナーの歩みを前に進ませてくれるようなエモーションも感じさせる。切なさと力強さを併せ持った、Uruの新境地と言っても過言ではない。

 また、『中学聖日記』の中では切なさはもちろん、初恋の初々しさや喜びも描かれている。今まで恋愛感情を持たなかった中学生・晶にとっては、担任である聖が初恋の相手だ。晶は、その若さから聖に対してストレートに思いをぶつけたり、3話では聖を中傷した同級生に「先生を傷つけるようなことをするなよ!」と殴りかかったりもする。周りを気にしない無鉄砲さや自分でもコントロールできない感情のままに動く姿は、思春期ならではとも言える。誰しもが初恋の思い出というものは胸の内に秘めているだろう。それは結末がどんなものであれ、唯一であり、等しく美しい。

 そんなドラマを彩る「プロローグ」でもまた、恋の痛みが“美しさ”として昇華されているように感じる。フックでUruは、〈あなたを探してる/隠した瞳の奥で/誰にも見えぬように/行き場もなくて彷徨いながら〉〈あなたと見る世界は/いつでも綺麗だった/空には一つだけ/淡く光る 小さな星が/残ってる〉と歌う。その歌詞は、誰かを求めることの苦しさと美しさの両面を端的に表していると言える。歌詞はもちろん、その両極の感情を表現できるのはUruの歌声があってこそだ。伸びやかながらもどこか少し抒情的な歌声とそのファルセットは、ストレートに楽曲で描かれる感情をリスナーの心に届けてくれる。

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