ブシロード 木谷高明が語る、『バンドリ!』プロジェクトの軌跡と未来 「何十年も続く作品にしたい」

木谷高明が語る『バンドリ!』の軌跡

 2015年からスタートした、ガールズバンドを題材にしたメディアミックスプロジェクト・『BanG Dream!(以下:バンドリ!)』。本作の最も大きな特徴は、物語の主軸となるバンド・Poppin'Party(以下:ポピパ)のキャラクターを演じる声優自身が、実際に全ての楽曲・全てのパートを本気でクオリティ高く演奏すること。ポピパだけでもすでに11枚のシングルをリリースし、幾度となくリアルライブを成功させている。

 そんな同作は、2017年1月にTVアニメ化。その放送中の3月にはスマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(以下:ガルパ)』がリリースされ、同年8月にはポピパが、日本のガールズバンドとして結成から史上最短での日本武道館公演を開催。さらに2018年には、ガルパ発の第二のリアルバンドであるRoseliaがフジテレビ系音楽特番『2018 FNSうたの夏まつり』に出演を果たした。今回はそのバンドリ!を企画し、現在もプロジェクトの統括として携わる、株式会社ブシロード・木谷高明氏にインタビューを行った。2019年にTVアニメ2期・3期の放送も決定している今だからこそ話せる『バンドリ!』プロジェクトのこれまでとこれからについて、熱く大ボリュームで語ってもらった。(須永兼次)【『BanG Dream!(バンドリ!)』特集はこちら】

トップランナーが見るエンタメ業界の現況と、その中での戦い方

株式会社ブシロード・木谷高明

――木谷さんは90年代から今に至るまで、アニメを含む言ってしまえばオタク文化と密接にビジネスをやってこられた方だと思うのですが、時代が進むなかでそういった文化が好きな人の数も増えたように思います。

木谷高明(以下、木谷):そうですね。ただ、昨今エンタメは供給が多いですよね。もうアイドルは完全に飽和しちゃってると思いますし、アニメもさすがに2年後には減るんじゃないでしょうか。そういう時勢のなかで『バンドリ!』としてすごく力を入れてるのは、YouTubeの『バンドリ!ちゃんねる☆』。そこにフルで楽曲を上げて、あわせて宣伝をいっぱい乗っけてるんです。音楽を使ってコンテンツ全部の宣伝をする、という形に宣伝手法は変わったんですけど、それは今の世の中の情報量が右肩上がりで増えていっているからなんですよ。

――と、いいますと?

木谷:例えばスポーツ新聞の場合は、昔と比べて新聞の売り上げが落ちる中、Yahoo!ニュースなどへの転載の手数料で売り上げをあげているんです。中には、1日中テレビを見て書き起こしの記事を書いている人が複数人いるらしいなどという話もあるんですよ。ということは、ひとつの話題がまた別の複数のニュースに分かれていく。メディアとSNSにより、世の中の情報量は加速度的に増しています。そんななかでプロモーションの仕方が従来と同じでは、勝てるわけがないですよね。圧倒的なわかりやすさと圧倒的な伝達力、そして圧倒的な魅力。この3つがないとダメです。とは言え、従来と変わらないプロモーションをしている作品もよく目にします。だから面白いアニメが多いのに、何の評判にもならずに終わることが意外と多いと思うんですよ。もう少し試行錯誤できることがあるにも関わらず、「売り上げの半分は中国で回収できるからいいや」みたいな理由で、そのままにしておくのはもったいないなって思うんですよね。

――その点、今回メインでお話をお伺いする『バンドリ!』は非常に露出が多くて。カフェ展開(『バンドリ! ガールズバンドパーティ!カフェ 2018』)や富士急ハイランドとのコラボ(『バンドリ! ガールズバンドパーティ! in 富士急ハイランド』)をはじめ、パ・リーグ6球団とのコラボゲームもやられていましたね。

木谷:そうですね。『バンドリ!』は、分野を問わず積極的にコラボを行う姿勢です。マニアから一般向けまで、全部やろうということで。

――その『バンドリ!』を含め、木谷さんは斬新な企画を数多く立ち上げられていますが、プロジェクト自体を思いつくのはどういったときなのでしょう?

木谷:いろいろですね。散歩してるときもだし、今こうやって話してるときにも思いつくかもしれない。だから“どんなとき”っていうのはないんです。でも、肩に降りてくるような感じはしますね。もしくは、ヒントだけはあるんだけどまだパーツが集まりきらずにずーっと引っ張ってるものもある。で、ふとしたときに「ようやくパーツが埋まった」みたいになるものがあるんですけど……最近一個思いついたとある企画は、まさにそうでしたね。まだ発表はできませんが、いろいろと施策は考えています。

――では続いて、『バンドリ!』というプロジェクトを立ち上げたきっかけをお伺いできますか?

木谷:当社で『スクフェス(※ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)』というアプリを運営するなかで、音楽キャラクターコンテンツというものへの可能性をすごく感じたんです。それでずっと漠然と「何か他にないかな?」と考えていたのですが、具体的なプロジェクトを思いつくまでには至っていなかったんですね。そんな中、2014年に『アイドルマスター ミリオンライブ!』にも出演している愛美さんが、さいたまスーパーアリーナで行われたアイマスの合同ライブ(『THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2014』)でギターを弾いたら、会場がどよめいた……ってスタッフが報告してきたんです。僕はその理由って、ふたつあると思うんですよ。

――ふたつですか?

木谷:そう。ひとつは「ここまでキャラに合わせてくれたんだ!」というファンの感謝。で、もうひとつは「あ、声優なのにギター弾けるんだ」という驚きです。それでそのスタッフが「愛美にガールズバンドをやらせたいんです!」と提案してきたので、「やるんだったらコンテンツにしなきゃ意味がないだろ!」と……それが、ガールズバンドでキャラクターコンテンツを作るスタートでしたね。それで「やっぱり実際に弾けないと、『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』は超えられない」と思ったので、楽器を弾ける声優さんを探すことから始めて……だから、ポピパのキャラクターデザインってなんとなく本人たちに似てるでしょう? あれは、先に声優が決まってたからなんです。それで並行して世界観やキャラクターの設定を中村 航先生にお願いして作っていただき、2015年2月号の『月刊ブシロード』で漫画を始めて、4月にライブをやるのも最初から決めていました。

――その頃には、弾ける声優さんが集まっていた。

木谷:そうですね。伊藤(彩沙)さんだけは、全く経験がなかったんですけど。で、西本(りみ)さんは、前の年のミルキィホームズフェザーズのオーディションに参加していて、ファイナリストだったんですね。それで僕としては見所のある方だなと思っていたんです。それで、いざキャストを集める際に「そういえばあの子、ベース弾けたはずだな」と思って僕が西本さんに電話したんですよ。「実はこういう企画があるんだけど、やる気ある?」って。

――直接木谷さんから。

木谷:はい。それで「興味あります!」って言ってくれたので、直接話をして合宿から参加していただくことになったんですけど……ただ、去年の東京ゲームショウで彼女から「実はオーディションのときに持ってたのは、ベースじゃなくてギターでした!」と言われまして(笑)。ただ、実際いろんな楽器を経験していたようで、ベースも未経験というわけではなかったんですね。

――なるほど。じゃあ音楽的なセンスもあるし、それだけ木谷さんの印象にも残っていたということですね。

木谷:そうそう。もちろん声優としても成功できると感じていました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる