岡村靖幸とYUKI、“ドキドキとワクワク”に懸けるプライド ホットスタッフ40周年イベント2日目

ホットスタッフ『Ultra Boy Meets Super Girl』レポ

「みんな、Ultra Boyを呼んでくれる? ヤスユキー!」

 クライマックス、「JOY」が演奏される中、YUKIがそう叫ぶと、真っ赤なスーツの岡村が舞台に現れた。客席から大声援があがる。YUKIの後ろに立った彼は、この曲のMVを意識してだろう、肩や手首を一瞬だけ、ユーモラスな角度に動かす。そしてビートに乗って始まったデュエットで場内のムードはさらにホットになっていく。多幸感がそこらじゅうに弾け飛んでいるかのようだ。まさに〈Ultra Boy Meets Super Girl〉! 歓喜の瞬間である。

 続いてピアノのイスに座った岡村は、指で鍵盤をまさぐりながら、アドリブで歌いだす。「今夜は、今夜はぁ~、たまには武道館でやったりぃぃぃ……立ち食いソバを一緒に食べたりをやってもいいんだぜぇぇぇ~……違うか」。声で絡んでいたYUKIがそれを聴いて「キャハハ!」と笑う。最高の雰囲気。「だけど、やっていいことと、いけないことがあるんだぜ~! つまり、どういうことかというと」……そして岡村が歌いはじめたのは「イケナイコトカイ」だった。極上のラブバラードのデュエットに、会場内の空気の密度がいっそう上昇していく。危なくもロマンチックで切実な、熱い時間。

 そして最後の曲は、YUKIのバンドであるエターナルチェリーが再びジョインしての「だいすき」だった。ふたりも、そして会場も一体になっての〈♪へぽたいやー!〉のコールが楽しすぎる。すべてを歌い終えた岡村はクールな素振りを見せながら、舞台から消えた。興奮を隠さないYUKIは「まさか! まさか! まさか!」とこのコラボを喜びながら、笑顔で去っていった。

 ホットスタッフ・プロモーションの40周年を記念してのイベント『Hot Stuff Promotion 40th Anniversary MASAKA』、二日目。それは奇跡のような共演を目撃できた夜であり、また、日本のポップミュージックの歩みに思いを馳せる、そんな時間でもあった。

 先行は岡村だった。暗転していく舞台にまず響いたのは重低音と「ホット! スタッフ! ブッ! ドォゥ……カンッ!」というシャウト。会場の期待が高まった末に姿を見せた岡村は、この時はメガネにスーツという姿だった。そこで鳴ったのは最新曲「少年サタデー」。かつてのソウルミュージックのスパイスが散りばめられたこのナンバーで幕を開けると、続いてはDAOKOとのコラボが話題を呼んだ「ステップアップLOVE」! その後も彼は、〈たぶん23歳〉のリフレインも強烈な「ぶーしゃかLOOP」、デビュー時の川本真琴に書いた「愛の才能」のヘビー&ソリッドに進化したバージョンと、アクの強いナンバーをファンキーなビートとともに次々とプレイしていった。

 そして名曲「カルアミルク」には、イントロで方々からため息のような声があがる。この歌のキメのフレーズである〈六本木であおうよ/いますぐおいでよ〉には、リリースされた1990年当時の東京の風景がついオーバーラップしてしまう。そういえば僕が初めて岡村を生で観たのはそれに近い時期で、場所はここ、日本武道館だった。あの時もやっぱりピーチ色の照明だったっけ……などと、つい自分が回想モードになった理由については後述する。ともかく、あの頃の若者の多くにとって、六本木は憧れの街だった。

 岡村が一時的に退いたステージではベーシストの横倉和夫がMCを務め、メンバー紹介の最後に「オン・ボーカル、岡村靖幸!」と叫ぶと、再び彼がセンターに歩み寄り、そのタイミングで「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」がスタート。サビの〈青春って1,2,3,ジャンプ〉では会場とのコール&レスポンスがくり広げられる。そういえばこの日のダンサー2人の衣裳はインターナショナルスクールの学生服風。まさに青春って感じだ。

 岡村はラストの「ビバナミダ」まで満場のオーディエンスを「ヘイ! 一緒に歌ってほしい!」「2階も3階も歌って! (客席を眺めて)……やるね!」と煽り、興奮の渦にひたすら巻き込み続ける。曲終わりで彼は手を口に当て、キスを宙に放ち、しかもその手の平を舌でなめるアクションまで見せた。色っぽく、濃密で、危険。これぞ岡村! なパフォーマンスだった。

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