米津玄師、「Flamingo」に見る身体表現における芸術性 辻本知彦が絶賛するダンスセンスに迫る

 米津玄師のニューシングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』がリリースされて約半月。「Flamingo」の公式MVのYouTube再生回数は2100万回を超え、拡散力や影響力や話題性において、米津玄師は今や日本随一のアーティストと言えるだろう。そのMV・パフォーマンス史において重要な鍵を握っているのが、音楽はもとよりダンスだ。J-POPに多く見られるストリートダンスとは一線を画する米津の独創的なダンスパフォーマンスは、どう生まれ、どう進化しているのか。その変遷と特徴を考えてみた。

米津玄師『Flamingo / TEENAGE RIOT』

 「米津玄師のダンス」の特徴は、辻本知彦によるコンテンポラリーダンス的な振付と、米津の体躯による独特の動きが挙げられる。まず辻本といえば、日本人として初めてシルク・ド・ソレイユのダンサーとして活躍し、土屋太鳳の鬼気迫る舞いで話題になったSia 「アライヴ feat. 土屋太鳳 / Alive feat. Tao Tsuchiya」の振付などを手がけたことで知られる。米津とは「LOSER」の初タッグ以降、日本武道館ライブで共演したり、米津プロデュースのキッズユニット・Foorin「パプリカ」(※菅原小春との共作)の振付を手がけたりと、米津が「師匠」と呼ぶほど大きな存在となっていく。

米津玄師 MV「LOSER」

 米津×辻本タッグによる最初の結晶は、2016年9月にリリースされた5thシングル曲「LOSER」。躍動的なリズムトラックに乗せて、米津が華麗なフットステップを繰り出し続ける。これが本格的なダンス初挑戦、レッスン期間は2週間というから周囲は驚いた。筆者が特に舌を巻いたのは、感情先導型の動きと、視線や表情まで完全に楽曲の世界観に入りきった表現力。これが初心者離れどころか芸術的な域に達していた。これは練習量でどうにかなることではなく、表現者=パフォーマーとして資質があるとしか言いようがなかった。めったに人を絶賛することのない辻本も、彼の才能に次のように感服している。

彼の踊り方は万人に一人の芸術性を持っている。
さらに頭が良い。そして無邪気だ。
がむしゃらに踊ったときは身体のコントロールが効かないほど踊ってしまう。だが人を引き込む力「魅力」がそこに存在する。
身体のうねりが流れとなり、腕を通り米津玄師の綺麗な指先へ流れこむ、惚れ惚れするほど美しいと思いました。
うまい踊りとは…    うまい踊りとは…
私の中で彼のことをいうのではないだろうか!!
彼は踊りの天才だ!!!!
(参考:米津玄師、自身がダイナミックに踊る新曲MVを渋谷の街でゲリラ解禁

 翌2017年が明けても、米津はプライベートで辻本とのレッスンを週1ペースで続行。ダンスへの親しみは「春雷」「Lemon」など、発表する音楽やMVにも反映された。スタンドマイクの前でフリーに動いた「春雷」のMVでは、振付にとらわれない米津自身の音のノリ方が顕著に。例えばリズムを表拍、裏拍、キック、上モノなど、どのタイミングで取るか、またそれを首や肩や胸や足、どこで取るかは、ダンサーでも踊る人それぞれのセンスが出るところだ。

米津玄師 MV「春雷」Shunrai

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