Eveが2018年最後のライブで伝えた、これまでへの感謝とこれからへの強い気持ち

Eve『メリエンダ』追加公演レポ

 2000年代末~2010年代に動画投稿シーンに登場し、初めて全編オリジナル曲となった2017年のアルバム『文化』では、いよいよその枠を超えてロック/ポップシーンの期待の新星としてより大きな注目を集めることになったシンガーソングライター、Eve。彼が今年8月に開催したワンマンとしては初の東名阪ツアー『メリエンダ』の追加公演が、11月4日、新木場スタジオコーストで開催された。この公演は当初予定にはなかったものの、『メリエンダ』ツアーの好評を受けて、当初の最終日だった8月のTSUTAYA O-East公演で急遽発表されたもの。Eveにとって2018年最後のライブとして1年を締めくくると同時に、来年2月にリリース予定の最新作『おとぎ』に向けての様々な変化が感じられるライブとなった。

 開演前から会場のスクリーンには、Wabokuが手掛けたお馴染みのキャラクターたちがEveの家で戯れる映像が繰り返し映し出される。そこから映像が「トーキョーゲットー」のMVに変わると、スクリーンと観客との間に張られた紗幕の奥側にEveとバンドが登場。引き続き紗幕にMV映像を投影して「トーキョーゲットー」でライブをスタート。バンドの演奏に合わせて幕にヒビが入る演出を経て紗幕が落ちると、「アウトサイダー」では早くも巨大な熱気が会場を覆い、続く「デーモンダンストーキョー」ではEveが観客のもとに一気に駆け出していく。ここまでは、過去の『メリエンダ』ツアーの流れを汲む構成だ。

 とはいえ、8月の渋谷O-East公演と比べて明らかに変化していたのは、自身の名前を使ったステージ上の照明。この日はステージ奥に「EVЭ(=EVE)」という文字型の照明がスクリーンを囲むように設置され、視覚的にもステージ上の大きなアクセントになっていた。その照明をバックに据えて、4曲目「Dr.」では会場の照明や観客に配布された腕時計型のLEDバンドが観客のコールに合わせて赤色に発光。続く「会心劇」ではEveがギターを手に取って4人組のバンド編成になり、そのままの編成で演奏された「ふりをした。」では、彼とバンマスのNumaによるギターに合わせて照明が点滅。映像を巧みに使ったライブ表現や観客も照明の一部に変える演出、そして歌い手/シンガーとしての顔と、バンドマンとしての顔とを自在に行き来するパフォーマンスで観客をぐんぐん自分の世界に引き込んでいく。

 ここで一旦MC。渋谷O-East公演と比べてキャパが倍に膨れ上がった満員の会場を見渡ししたEveは、「すごい景色ですね……」と感慨深そうに観客を見渡し、これが今年最後のライブであることに触れて、「新曲やっていいですか?」と観客に尋ねる。驚いた観客の大歓声を受けて披露された新曲「迷い子」は、この日ライブで聴く限り、広がりのあるシンセやU2のジ・エッジなどを連想するディレイの効いたギターリフ、そして彼らしい瑞々しいメロディが印象的な壮大な雰囲気で、ライブの規模が拡大していることとも繋がるような、「より多くの人に自分の曲を届けたい」という今の彼のモードが伝わるような楽曲だ。

 以降は「ホームシック」を経て、ドラムの4カウントを受けたEveのギターから「sister」をスタート。続く「fanfare(instrumental)」では彼がステージを去り、残されたバンドメンバー3人がインストゥルメンタルで幻想的な音を生みだしていく。スクリーンには過去の楽曲のMVがコラージュされ、これまでの歩みを振り返るような演出も印象的だった。

 その後、再びステージに戻ったEveは、開口一番「いけるか東京!」と観客を煽ってハンドマイクで「ナンセンス文学」を披露。熱量全開のボーカルに合わせて観客がサビの「ラッタッタ」を合唱し、続いて「ドラマツルギー」を歌い始めると会場がさらなる大歓声に包まれる。ここではスクリーンの枠のように佇んでいた「EVЭ(=EVE)」の文字が力強く光り、「あの娘シークレット」や「アンビバレント」でライブはいよいよクライマックスへ。

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