丘みどりが魅せる“演歌の美学” Blu-ray&DVD発売記念応援上映会で語られたコンサートの見どころ

丘みどりが魅せる“演歌の美学”

 11月7日にBlu-ray&DVD『丘みどりリサイタル2018〜演魅(えんび)〜』をリリースした演歌歌手の丘みどりが、リリースの前日である11月6日に東京・ユナイテッドシネマ豊洲でリリースを記念した応援上映会を開催した。このイベントは、同映像作品を映画館の大スクリーンと音響で楽しむというもので、演歌界では初となる本人参加での応援上映というスタイルで行われ、200人を超えるファンが詰めかけた(ちなみに、11月7日、音源のみを収録したライブCDも同時リリースされている)。

 丘みどりは、元アイドル歌手という異色の経歴を持ち、昨年リリースした『佐渡の夕笛/雨の木屋町』が、演歌としては異例の10万枚を突破。その勢いで『第68回NHK紅白歌合戦』に初出場を決め、一躍注目を集めるようになった。今年は“焼き肉マニア”ぶりが話題になった日本テレビ系『沸騰ワード10』をはじめ、クイズ番組などバラエティ番組にも多数出演し、その親しみやすいキャラクターも人気だ。2018年の『第69回NHK紅白歌合戦』にも出場が決定し、その直前となる12月26日は2ndアルバム『彩歌〜いろどりうた〜』もリリースと、その勢いはさらに増していく。同イベントには丘みどり本人も参加し、同コンサートの構成・演出を手がけた長田剛氏と共に登壇してトークを繰り広げたのちに、ファンと共に客席から上映会を楽しんだ。

 このBD&DVD『丘みどりリサイタル2018〜演魅〜』は、今年7月4日に東京・中野サンプラザで行われた同名コンサートを収録した映像作品で、一夜限りのスペシャルな内容ということもあって、ファンから映像化を望む声が多く上がっていた。全33トラックを収録した大作で、オリジナル曲の歌唱だけでなく、アイドルや歌謡曲、ニューミュージックのカバーもあり、幅広い世代が楽しめる内容になっている。中でも終盤の『幽玄組曲』は渾身の歌声を聴かせており、間違いなく丘みどりの代表作となる一作だ。

 「佐渡の夕笛」のスケールの大きなイントロが流れると、青を貴重にした艶やかな振り袖に身を包んだ、丘みどりがステージに現れる。サウンドのキメに合わせ、見得を切るように手を伸ばし、映像ではその指先にまで神経を行き渡らせていることがうかがえる。「霧の川」では斜に構えて切なく声を響かせ、その声に客席からは「いよっ!」とかけ声も上がった。また「日和下駄」など美空ひばりのカバーでは、〈カラコロカラコロ〉と、ステップを踏むように軽快に踊りながら歌った他、江利チエミの「奴さん」は黒のシックな着物姿で魅せた。

 70年代アイドルのカバーは、演歌の丘みどりとは違った、明るく可愛らしい様子で観客を魅了した。南沙織の「17才」では、昭和を感じさせるワンピース姿を披露、石野真子の「狼なんか怖くない」は振り付けと一緒に歌う。1曲ごとにステージ上で衣装を早替えし「まちぶせ」ではミニスカート姿も披露して沸かせた。この日丘が着用した衣装は、全14着にもおよぶという。

 「酒場で生きる1人の女性の心もようを歌で綴りたい」と紹介したアコースティックコーナーは、見どころのひとつになった。和装から一転、白いドレスを身にまとった丘。しっとりとしたピアノの音色に乗せた情感豊かなボーカルは、シルキーボイスといった味わいだ。特に中島みゆきの「化粧」のカバーは、実に聴きごたえがある。ピアノとギターを中心にした静かなサウンドに乗せて、とつとつと歌われるボーカルは、切なく苦しい女性の心情を情感たっぷりに表現。〈流れるな涙 心でとまれ〉と歌ううちに、歌の主人公と丘自身がいつしかシンクロしたようで、頬を濡らしながら彼女が静かに描き出す物語には、観客も静かに心酔した。

 構成・演出を務めた長田氏はアコースティックコーナーについて、「演歌歌手・丘みどりだけに囚われたくはなかったので、他の歌手の方がやらないことをたくさん提案させていただいた。アコースティックの3曲をどう表現するか、彼女自身悩みに悩んで臨み、コンサートの本番でやっと完成させることができたのではないか」と解説する。丘もこのアコースティックについて「緊張しました。自分の声だけで届けなければいけないプレッシャーや緊張感は、いつもの曲とは違った独特のものがありました」と、その時の気持ちを話している。

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