小野島大が選ぶ、2018年エレクトロニック年間ベスト10 アルバムの評価が難しい時代に

Daniel Avely『Song For Alpha』<Fanatasy>

・Daniel Avely『Song For Alpha』<Fanatasy>
・Serpentwithfeet『Soil』<Secretly Canadian>
・Saba『Care For Me』<Saba Pivot>
・Tim Hecker『Konoyo』<kranky>
・Laurel Halo『Raw Silk Uncut Wood』<Latency>
・Leon Vynehall『Nothing Is Still』<Ninja Tune>
・Kode9 & Burial『Fabliclive 100』 <Fablic>
・Kelly Moran『Ultraviolet』<Warp>
・Rejoicer『Enegy Dreams』<Stones Throw>
・Ross From Friends『Family Portrait』<Brainfeeder>

 本サイトの新譜キュレーション連載ではエレクトロニックな音楽を対象にしているので、このベスト10もここで扱ったものを中心にエレクトロニックな音楽から選んだ。順不同。なお全ジャンル対象のベストアルバムは『ミュージックマガジン』に、日本の音楽のみ対象のベスト・アルバムは『MUSICA』誌に、それぞれ掲載されているので、興味のある方はご覧ください。

 以下は、『ミュージックマガジン』にも書いたことだが、同誌ではスペースの関係で語りきれなかったことも含め、もう少し詳しく書く。

 2017年末から、東京・渋谷の小さなバーで、「I've Gotta Have New Songs」という、新譜ばかりかけるDJパーティーというのを始めた。かける曲は本連載で扱っているようなエレクトロニックな音楽と、R&B、ヒップホップなどだが、そこで使っているスマホ/タブレット用DJアプリがSpotifyと連動していて、Spotifyで扱っている曲は全てDJプレイに使うことができる。これまでのCD・ヴァイナルなどフィジカルメディアやPCを使うDJプレイよりもはるかに簡便だし気楽だし、USBを使ったプレイに比べても、その場の閃きでSpotifyの数千万曲から即座に選曲できる利便性は圧倒的だ(もちろんストリーミングだから音質は期待できないが、小さなバー程度なら問題ない)。もともと日々の新譜チェックにSpotifyを使う機会は多かったが、そんなわけで2018年からはアルバム単位だけでなく曲単位でも細かく掘りはじめた(単に「ニューリリース」の項目をチェックしているだけでは不足。本当に面白いものはその下に隠れている)。もちろん日々「Beatport」などをチェックするプロのDJならそんなことは当たり前だが、専門のDJでもない、いち音楽リスナーである自分にとっては新鮮かつ刺激的な作業で、かなり楽しく飽きない。そのため、これまでのようなアルバム中心のリスニング態勢に多少なりとも変化があったのである。

 そして、この連載で扱うようなエレクトロニックなダンスミュージックやヒップホップ、R&Bなどはこうしたリスニング態勢の変化に応じて、アーティストの側も曲単位での制作・リリース態勢にとうの昔に移行している。アルバムの制作・リリースタームでは時代に乗り遅れてしまうのだ。たとえばEDMのミュージシャンが矢継ぎ早にシングルを出し、それが数十曲たまった時点でアルバムにして出す。それはコンセプトが入念に練られアルバムとして作り込まれたものではなく、必然的に「グレイテスト・ヒッツ」的な寄せ集めにならざるをえない。それをアルバムとしてきちんと評価するのは難しい。

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