宇多田ヒカル 、King Gnu、リトグリ、V6、青山テルマ……日本語のグルーヴの最新型示す新作

 “海外の音楽を取り入れたサウンドに、日本語の歌をどう乗せるか?”というテーマを常に掲げながら発展、変化を繰り返してきた日本のポップミュージックは、2010年代後半、確実に大きなターニングポイントに差し掛かっている。宇多田ヒカル、King Gnuなどの新作を通し、急激な進化を続ける“日本語のグルーヴの最新型”を体感してほしい。

宇多田ヒカル『Face My Fears』

 昨年6月に7thアルバム『初恋』をリリース。年末に実に約12年ぶりとなるライブツアー『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』を開催するなど、充実したデビュー20周年を実現させた宇多田ヒカルから、2019年最初のシングルが到着。昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演した世界的なエレクトロミュージシャン・スクリレックスとの共作による表題曲「Face My Fears」(ゲームソフト『KINGDOM HEARTS III』オープニングテーマ)は、〈ねえ どれくらい/ねえ 笑えばいい/今伝えたいこと よそに〉という冒頭のフレーズから、彼女にしか体現できない日本語のグルーヴが響き渡るナンバー。シンプルな言葉でディープな心象風景を描きながら、語感を気持ち良く活かす宇多田ヒカルのフロウは、作品を重ねるごとに進化している。トラックに歌を乗せるのではなく、歌がビートを牽引するように聴こえるサウンドプロダクションも秀逸。

宇多田ヒカル & Skrillex「Face My Fears(Japanese Version)」(Short Ver.)/KINGDOM HEARTS Ⅲ Opening Trailer

King Gnu『Sympa』

 2019年最初の重要作であり、この先の音楽シーンの行方に大きな影響を与えるであろう、King Gnuの2ndフルアルバム『Sympa』。ディープなブラックネスを含んだトラックとともに現代社会に向けたアグレッシブな歌詞が響くリードトラック「Slumberland」、美しさと狂気を同時に体現するストリングスが強烈なインパクトを残すミディアムチューン「Don’t Stop the Clocks」、クラシカルなピアノと濃密な感情を映し出す歌が互いを極限まで高め合う「The hole」。フリーキーかつインテリジェンスな常田大希(Gt/Vo)のプロデュースワークと、それを生々しく体現するメンバーのアンサンブルも大きく向上。J-POPのフィールドに先鋭的なR&B、ヒップホップ、ジャズなどのエッセンスを持ち込みながら予想を超えた躍進を続ける彼らの、最初の傑作だと言っていいだろう。

King Gnu - Slumberland

Little Glee Monster『FLAVA』(通常盤)

 「ギュッと」(映画『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』エンディングテーマ)、「CLOSE TO YOU」(資生堂『SEA BREEZE』CMソング)、「世界はあなたに笑いかけている」(『コカ・コーラ』イメージソング)などのシングル曲を含む4thアルバム『FLAVA』でLittle Glee Monsterは、音楽性の幅をさらに大きく広げ、“どんなジャンル、どんなサウンドでも自分たちのハーモニーを響かせる”というスタンスを改めて示している。クラシカルなポップスとラテン、ディスコなどが混ざり合った「I BELIEVE」、ホーンを交えた裏打ちのビートとゴスペルライクなコーラスが重なる「ハピネス」、1970年代サウスアメリカの匂いをたっぷりと感じさせる「恋を焦らず」など、古き良き20世紀の音楽をアップデートさせた楽曲も魅力的。新しさと懐かしさがバランスよく共存する彼女たちの音楽は、国外のリスナーにもアピールできそうだ。

Little Glee Monster 『恋を焦らず』Short Ver.

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