サマソニのヘッドライナーに通底する独自のカラー 過去20年間のラインナップから考える

サマソニ、過去20年間のラインナップを振り返る

 2019年のサマーソニック(以下、サマソニ)は10年ぶりに3日間開催される。ところで、サマソニはヘッドライナー性を採用しているため、最初に発表されるヘッドライナーを軸にして、その年その日ごとの色が見えることが多い。その年のヘッドライナーは誰が務めるのか? というのは、サマソニファンにとって重要なことであり、それはその年のサマソニのメッセージにもなり得るわけだ。そんな中、今年、最初にヘッドライナーとして発表されたのは、ファンクとハードロックを織り交ぜたミクスチャーロックの第一人者であり、30年以上にわたってロックシーンの最前線に立ち続ける大御所バンド、Red Hot Chili Peppers(以下、レッチリ)だった。続けて発表されたのは、日本人初のヘッドライナーであり、こちらも30年以上にわたって日本のハードロックシーンの最前線に立ち続けるモンスターバンド、B’zであった。おそらくレッチリ、B’zというラインナップを見た人の多くは、ノスタルジーに近い感情を持ったのではないだろうか。

 元々、サマソニはオルタナティブ、ラウド、あるいはパンク系のバンドのブッキングが多いフェスだった。The Jon Spencer Blues Explosion、Green Dayがヘッドライナーを務めた2000年の第1回サマソニから、その流れは明確だった。この年は他にもMuse、Weezer、311、The Flaming Lips、Coldplayから、Dragon Ash、SUPERCAR、THE MAD CAPSULE MARKETS、くるりまで、国内外問わずオルタナティブロックのバンドが数多く出演していた。第2回目のサマソニは、ヘッドライナーがべックとMarilyn Mansonで、他にはSlipknot、Incubus、Zebraheadらが名を連ね、ラウド&オルタナティブのイメージを強くするラインナップになった。これは、Guns N' RosesとThe Offspringがヘッドライナーを務めた第3回も、Radioheadがサプライズで「Creep」を披露して伝説的になった第4回でも同じことが言える。ただし、ステージを増加させるに伴って、サブステージではポップスやダンスアクトのブッキングが増え、ラインナップが豊かになる傾向はあった。そして、5周年となった2004年でその流れは加速する。「バンド」以外のアーティストが、ヘッドライナーに抜擢されたのだ。

 Beastie Boysである。

 この年は全体的にヒップホップ勢のブッキングが目立っていた。NAS、N.E.R.D、スチャダラパー、RHYMESTERらの出演がそれを表している。ただ、その一方で、SUM 41、Hoobastank、Zebrahead、My Chemical Romance、Green Dayのような、今までのサマソニのカラーを踏襲したブッキングも健在だった。

 つまり、オルタナ/ラウド/パンクというブッキングがベースにありつつも、もう一つ違うチャンネルをその隣に置く、という流れが出てきたわけだ。ただし、Beastie Boysはヒップホップユニットとしての出演、というよりも、ロックに距離が近いアーティストだからこそのブッキングであったことは否めず、サマソニのカラーだけで言えば、「ロック」は依然強い影響を持っていた。実際、2005年のヘッドライナーはNine Inch NailsとOasisであり、ロックのカラーがしっかり出ている年であった。ちなみに、Nine Inch Nailsの日はSlipknot、Deep Purpleらヘヴィ/ラウド勢が固め、Oasisの日はWeezer、KASABIAN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどオルタナと形容されるバンドが集結した。また、2006年のヘッドライナーはMetallicaとLinkin Parkという二大バンドであり、パンク/ラウド/ヘヴィの色がより強い年になった。このように、ロック以外のブッキングを取れ入れつつも、ベースのカラーは第1回から通底したものがあったのだ。

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