琴音、待望のメジャーデビュー オーディション番組出演からの怒涛の日々とこれから

琴音、1st EP『明日へ』インタビュー

 人気オーディション番組『今夜、誕生!音楽チャンプ』(テレビ朝日系列/2017年10月8日から2018年3月11日まで放送)でグランプリを獲得し、その類いまれなる歌声でお茶の間を騒がせた話題のシンガーソングライター琴音が、4曲入りの1st EP『明日へ』でメジャーデビューを果たした。

 聴く人の琴線に触れる、やや低めのハスキーボイス。現役高校生のパーソナルな日常を切り取りつつも、より普遍的なメッセージへと昇華された歌詞の世界が印象に残る。生楽器を中心としたシンプルかつオーガニックなバンドサウンドも、彼女の持つ強い歌声やメロディを十二分に引き立てている。

 新潟の片隅で音楽活動をスタートし、『音楽チャンプ』でデビューへの足がかりをつかんだ彼女にとって、この半年間はどのような日々だったのだろうか。今作の制作エピソードはもちろん、「無名のシンガー」から「お茶の間の人気者」へと駆け上がった”琴音現象”とも呼ぶべき怒涛の日々について、これからの進路についてなど、言葉を選びながら丁寧に話してくれた。(黒田隆憲)

自分の歌と向き合うことができるようになったのは大きな変化

ーー昨年7月に1stミニアルバム『願い』をリリースしてから、半年が過ぎました。手応えはどうですか?

琴音:デビューのきっかけとなった『音楽チャンプ』に出させていただいて、知名度みたいなものが格段に上がって。それを機にライブを観に来てくださる方も、うんと増えました。テレビで私が歌う姿を観て興味を持ってくださって、労力や時間、お金をかけて足を運んでくださる方がいるというのは、驚きでもあり喜びでもあり……すごくありがたいことだなと。デビューしてからは、プロのピアニストやギタリストの方たちと一緒に、色んなところでライブを行ったことも、新たな経験でしたし。

ーーやはり『音楽チャンプ』の影響は大きかったですか?

琴音:大きかったですね。学校の同級生たちに、「テレビに出るから観て観て!」って言ってたらみんな観てくれて(笑)。しかも、色んな人に拡散してくれたんですよね、部活の先輩後輩や家族親戚、SNSまで、クラス中で協力してくれた。学校だけでなく、地元の人たちも注目してくださっていたみたいで、コンビニで「おやつ何買おうかな」と思ってたら声をかけられてすごく恥ずかしかったり(笑)。マスクしていても、駅前で人を待っているときにわーって人が集まってきて「琴音さんですか?」と言われたりしたこともありました。

ーー急に有名になって、戸惑いもありました?

琴音:びっくりはしましたけど、今言ったように実際に会いにきてくださったり、応援の言葉をかけてくださったりする方がたくさんいるということは、大きな自信につながりましたね。

ーー振り返ってみて『音楽チャンプ』に出演し、勝ち抜いていくという経験は琴音さんにとってどんなものでしたか?

琴音:「勝ち抜いていく」みたいなことは、あまり意識していなくて。テレビに出る前は、ライブを観にきてくださるお客さんもそんなにいなかったし、いつもお世話になっているライブハウスの方が、可愛がってくれていたからこそ何とか続けてこられたという感じだったんですよね。「もっとお客さんが増えたらいいな」という気持ちが常にあったし、とにかく知名度を増やしたいというのが、番組に応募した大きな動機の一つだったんです。あとは「腕試し」じゃないですけど、自分の実力はどの程度で、どのくらいの位置にいるのかを知りたかったんです。自分の長所や短所も、ちゃんと確認したかったというか。そういうのって、自分では客観的に分からなかったりするじゃないですか。もちろん、毎回緊張もしていました。まず、挑戦者の歌を聴いてから自分が歌うので、そのプレッシャーも大きかったし、体の筋肉がメチャ固まっているのが自分でもわかりました(笑)。テレビに出ている間は、生活も不規則になって風邪もひきやすかったし。


ーー様々な分野のプロからアドバイスされたことも、自分を客観視するという意味では貴重な体験でしたか?

琴音:そうですね。自分のどんなところが「いい」と言われるのかも分かってきたし、普段は選ばないようなジャンルの歌も歌ったことで、「あ、こういう曲を歌うと自分の短所が顕著に出るんだな」と自分で分かる瞬間があって。そういう部分を「長所」にまで変えられるかは分からないですけど、プロとしてやっていくなら対処しなきゃなと思いました。「いい」と言われたところは、意識することで「強み」として伸ばしていきたいし、「こういうところがちょっと弱いよね」と言われたとこころは、克服できるものは克服したいって思います。そんなふうに、自分の歌と向き合うことができるようになったのは、大きな変化だなと思っていますね。

ーーお話を聞いていて、地に足がついているなと感じました。学生としての普段の生活もとても大切にしているのが分かります。

琴音:そうおっしゃっていただけるのは嬉しいですし、自分でもそうありたいと思っています。実はテレビに出ていた頃は、ちょっとふわふわした感じはありましたね。「地に足がついてないって、こういうことなのか」って(笑)。そんな時に、家族や友人の存在がとても大きかったなと思います。本当に普段通りに接してくれたので、気持ちが落ち着いたというか。普段の生活へ、すっと自然に戻っていける気持ちにさせてくれたことは感謝していますね。おっしゃるように、今は結構、地に足のついた生活が送れていると思います。

ーーそれにしても、その落ち着きはどこからくるのでしょう(笑)。家庭環境?

琴音:どうでしょう(笑)。私は割と人見知りや内気なところがあって。「緊張しているな」とか、「地に足がついてないな」っていう感覚を、他の人よりも察知しやすいというか。自分自身の内面の変化を感じ取って、「ああ、落ち着かなきゃ」ってすぐ思うんですよね。もしかしたら「親譲り」のところもあるのかもしれない。あと、日頃なんとなく、心で思ったことを声に出さなくても心の中で自問自答することが多くて。

ーー曲を作ったり、歌詞を書いたりすることで、自分と向き合う時間も多いでしょうし、それも影響しているのかもしれないですね。

琴音:それもあるんでしょうかね。

ーー曲を作り始めたのは、ご家族から勧められたからだったんですよね?

琴音:はい。子供のころから歌うことが大好きで、歌うと褒められるのが嬉しくて音楽の道を志すことになったのですが、「歌でやっていくなら、曲を作れる強みも持っていた方がいい」と家族から言われて。それまでずっと人の曲をカバーしていたのですが、中1から中2に上がる頃から自分でも作るようになっていきました。

ーーご家族も熱心にサポートしてくださっていたのですね。

琴音:そうですね。父親は、私が生まれる前はオリジナル曲をストリートで歌っていたらしくて。父のアドバイスなどももらいつつ……と言っても、テクニカルなことというよりは、精神論というか。「作りたいと思う気持ちが大事なんだよ」みたいなことを言ってくるんですよ。「いや、それはずっと思ってるんだけどな……」って思いながら聞いていました(笑)。

ーー曲を作るようになったことは、琴音さんにどんな変化をもたらしました?

琴音:自分にとって、とても大きな出来事でしたね。今までは、自分が思っていることを口に出すのが怖いというか、曝け出すことへの恐怖みたいなものがあったと思うんです。「認められなかったらどうしよう」って。でも、曲を作ってみて、しかも自分の心の内を歌詞にして出したところ、みんなから「いいね」って言ってもらえたり、喜んでもらったりしたことで、「あ、自分はここにいていいんだ」と思えるようになりましたね。それに、以前よりも聴いている音楽のジャンルが広がりました。普段、曲作りはギターを使っているんですけど、1人で全ての楽器を演奏している人や、機械を使って新しいサウンドを作っている人の音楽を、「一体どうやっているんだろう?」と思いながら聴くようになったのは、きっと自分で曲を作るようになったからだと思います。

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