石崎ひゅーい『ゴールデンエイジ』で新たなスタート 菅田将暉、あいみょんとの出会いが与えた影響

石崎ひゅーいの新作に菅田将暉らが与えた影響

 石崎ひゅーいに今、熱い視線が再び注がれている。

 大きなきっかけは俳優の菅田将暉に書き下ろした「さよならエレジー」が昨年ヒットしたことである。その上にさまざまな事象が重なり、多くの人々が彼の歌に惹かれる状況ができつつあるのだ。

 そして今週、彼のひさしぶりとなる新作『ゴールデンエイジ』がリリースされる。ここに収録された5曲には、今のひゅーいの勢いや躍動感が息づいている。

石崎ひゅーい 『ゴールデンエイジ』(Teaser)

 このアルバムを駆動させるパワーの源になっているのは、何といっても「さよならエレジー」のセルフカバーだろう。なので、まずはこの曲のことから触れていこう。

 これは昨年9月、ひゅーいが公の場で初めて「さよならエレジー」を唄った時の映像である。

石崎ひゅーい 『さよならエレジー』

 ここでひゅーいはオーディエンスに「友達の歌なんですけど、やっていいですか?」と前置きしている。そう断るのは、「さよならエレジー」はあくまで菅田将暉のことをイメージして書き、彼に提供した歌だからだ。ただ、こうして自分でも唄うことについては後日、「菅田くんとふたりで一緒に作った感覚」としながら、「僕の表現でも、(『さよならエレジー』を)世の中の人たちに聴いてもらいたいなって想いが溢れてきて……」と語っている(参考:J-WAVE NEWS)。

 「さよならエレジー」はもはや数多くの人に親しまれているが、その事実とは別に、これはひゅーいにとって非常にエポックメイキングな曲だった。というのは、それまでずっと自分中心の目線だけで曲を作ってきた彼にとって、この曲は初めて他者のことを思いながら作ったものだったからだ。

 つまり菅田という人間の気持ちや感情を想像し、その目から見える景色を自分なりに思い浮かべながら曲を書くこと。これはひゅーいの曲作りの手法上の新たな経験となったという。今回セルフカバーした同曲は、菅田のバージョンよりもパワフルなバンド版のアレンジとなっている。

 さて、アルバム『ゴールデンエイジ』は1曲目に疾走感満点の「あなたはどこにいるの」が配されている。ひゅーい流のロックが炸裂する曲だ。

石崎ひゅーい 『あなたはどこにいるの』

 これは1月クールでOA中のTVドラマ『さすらい温泉♨遠藤憲一』(テレビ東京系)の主題歌となったナンバーである。このドラマには、やがてひゅーいもゲスト出演することになっている。

 また、アルバムの最後を飾る「アンコール」は、ライブの場でも演奏されてきた。これはひゅーいがライブでいつもアンコールをしないことがきっかけになっており、それでもアンコールを求めてくれるお客さんに対する思いから書かれた曲である。

 これらに「SEXY」「マシュマロパイ・サンドウィッチヘブン」を加えた全5曲。その中には前作『アタラズモトオカラズ』で見せたスポークンワード、つまり語りのような言葉を散りばめる姿勢も生きており、過去の試行錯誤が反映されてもいる。今のひゅーいの充実ぶりがうかがえる作品である。

 ただ、こうした状況を迎えるまでの近年のひゅーいは、ちょっと過渡的な状態にあった。今回は純粋な新作のリリースとしては2年以上ぶりとなるが、ライブに役者にと精力的に動いていた半面、このインターバルからは彼なりの苦悩が見て取れる。

 その要因の中でもとくに大きいのは、ソングライティングがなかなか進まなかったことが考えられる。先述の通り、つねに自分そのものを描いてきた彼は、2012年のデビュー以降の活動を通して、自身の身近なリアリティのかなりの部分を唄いきったような状態になっていた。亡くなった母親のこと、その時々の恋愛感情、ふと我に返った時の孤独感。名バラード「花瓶の花」は結婚する友人に向けての歌だった。

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