アリアナ・グランデ、ソランジュ、ケラーニ……高橋芳朗が選ぶ、女性R&Bシンガーの新譜4選

 今回は女性R&Bシンガーの注目タイトルを4作ほど。

アリアナ・グランデ『thank u, next』

 まずは「thank u, next」のヒットによって完全にポップクイーンの座を手中に収めたアリアナ・グランデの『thank u, next』。ビートルズが1964年に達成して以来となる全米シングルチャート上位3位独占など派手な話題に事欠かないが、この新作自体はかつての交際相手で昨年9月に他界したラッパー、マック・ミラーの面影が随所でちらつく内省的な内容。自らの精神世界に正面から向き合った結果ゆえなのか、彼女にとってゲストアーティストがいない初めてのアルバムになった。「現実を受け入れた『thank u, next』に対してこれは現実を受け入れられないことを歌った曲」と説明していた冒頭の「imagine」(タイトルはマックの右腕のタトゥーにちなんだものと思われる)以下、自身の不安定な精神状態を赤裸々に打ち明ける「needy」、自暴自棄になって後腐れのない恋愛に興じる「bloodline」、新しい恋人がいながらも亡くなったマックの幻影に悩まされる「ghostin」など、悲痛な歌詞も少なくないが、クライマックスに配置された2曲のエンパワーメントソングーー「7 rings」と「thank u, next」ーーのメッセージは単体で聴くよりもぐっと強く響く。挑発的な「break up with yourgirlfriend, I'm bored」で締めくくる、不敵なクロージングがまた意味深。

Ariana Grande - thank u, next
Ariana Grande - 7 rings
Ariana Grande - break up with your girlfriend, i'm bored

 続いて、すでに各方面で高い評価を獲得しているソランジュの『When I Get Home』。

ソランジュ『When I Get Home』

 スティーヴィー・ワンダー『The Secret Life of Plants』をはじめ、スティーヴ・ライヒ、アリス・コルトレーン、サン・ラなどにインスピレーションを得たという実験的/前衛的なサウンドデザイン、そしてインタールード6曲を含む全19曲がシームレスにつながったパッチワーク的構成もあって核心を捉えにくいところがあるが、かといってとっつきにくさはまったくなく、凛とした気品と美しさ、柔和で官能的なメロウネス、それらが一体となった圧倒的な陶酔感に惹かれて、ついつい繰り返し再生してしまう不思議な魅力がある。ソランジュはアルバムのリリースの前日と当日、自身のInstagramでデヴィン・ザ・デュードとマイク・ジョーンズへのリスペクトを表明していたが、この壮大な音のコラージュは故郷ヒューストンのシグネチャーサウンド=チョップド&スクリュードの美意識に則った彼女流の新しいブラックエクセレンスの結晶と受け止めたい。Apple Musicで見ることのできる33分のショートフィルムと併せての体験をおすすめする。

Solange - Almeda (Official Video)
Solange - Binz (Official Video)
Solange - Way to the Show (Official Video)

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