上白石萌音が持つ、“歌い手”としての真の強さ 『Mステ』披露の「ハッピーエンド」から考察

上白石萌音、“歌い手”としての強さ

 上白石萌音の配信シングル「ハッピーエンド」が、4月5日にリリースされた。配信開始から多数の音楽配信サイトでトップ10にランクインし好評を得ており、上白石が「私もまだ経験したことがないくらいの、ドキドキとキュンキュンが詰まっています」と語る、スウィートなラブソングだ。〈帰り道同じ時間なら また一緒に帰ってくれますか? もっと楽しそうにすればよかったなぁ〉といったように、同曲では、想いを寄せる相手とのまだ近くて遠い距離感や、微妙に揺れる恋心、好きだと打ち明ける前のもどかしくも甘い時間など、その微妙に揺れる気持ちや恋する心拍感を、柔らかな歌で表現。上白石の初主演ショートムービーの主題歌をandropが担当した由縁から、2017年の初のオリジナルアルバム『and…』収録曲「ストーリーボード」に続き、「ハッピーエンド」でもandrop・内澤崇仁(Vo/Gt)が楽曲提供している。

上白石萌音×内澤崇仁(androp)-「ハッピーエンド」葵version by 映画『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』

 上白石自身が主演を努めた映画の主題歌である「ハッピーエンド」についてSNSでは、「萌音ちゃんのこの曲、大好き!」「歌詞がかわいい!」と、特に女性からと思われる絶賛の声が目立つ。女優として、さまざまな経験を積んできた上白石萌音だからこそ、それぞれの曲で主人公の心の機微、声の表情をさりげなくも饒舌に歌い分け、すっかり聴き手を歌の世界に引き込んでしまうからだろう。ほかにも、「ストーリーボード」では、ちょっと頼りなさげだけれど心の内には熱くてロマンチストな“僕”が住まう少年を、「ハッピーエンド」では“あなた”のことをあれやこれやと思い浮かべては1人頬を染めているような少女を、その歌で見事に表現してきた。それは、まるで目の前に主人公がいるような、動きや温度が伝わってくると思えるほど。さらにこの「ハッピーエンド」は、サビで高揚感溢れるストリングスや管楽器、鐘の音などでカラフルに色づいていくようなサウンドとなっているが、基調となっているのはアコースティックギターと歌でシンプルに紡がれる曲。〈あと1センチが遠いよ〉というもどかしさや、どことなく感じさせる不器用な仕草を、歌・ボーカルで象っていくうまさに、聴いているこちらも胸が踊る。近くにいる人へと語りかけるくらいの声のトーンでいて、聴き手のイマジネーションに訴えてくる独特のボーカルが光る。

 また、数年前に内澤から聴かされたこの曲デモ音源を、今回の主題歌として「どうしても歌いたい」と希望したのは、上白石自身だったという。それは、映画のストーリーや自分のボーカルなど、すべてを把握した上で、彼女が選んだプロデュース能力でもあったように思う。

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