sumika、ヒゲダン、ミセスに続くポップバンドの新星 緑黄色社会 『幸せ -EP-』に感じる“独創性”

緑黄色社会のポップス性を新EPから紐解く

 最新アルバム『Chime』を携え、現在は日本武道館、大阪城ホール、横浜アリーナでの公演を含む全国ツアーを開催中のsumika。ニューシングル『Pretender』が大きな話題を集め、初の日本武道館公演(7月8日)も決定しているOfficial髭男dism。昨年リリースしたアルバム『ENSEMBLE』のヒット、エンターテインメント性に溢れたライブによって完全にブレイクを果たしたMrs. GREEN APPLE。優れたポップセンスを持ったバンドが音楽シーンを席巻している。これらのバンドに共通しているのは、ソウル、R&B、ロックなど幅広いジャンルを取り入れ、それを誰もが楽しめるJ-POPとして昇華していること。また、共感度の高い歌詞、ピアノ、キーボードを含めたカラフルなサウンドメイクもこれらのバンドの特徴だ。

 現代のポップバンドとしての条件を備え、ネクストブレイク候補と目されているのが、緑黄色社会。長屋晴子(Vo/Gt)、小林壱誓(Gt/Cho)、peppe(Key/Cho)穴見真吾(Ba/Cho)による、名古屋出身の4ピースバンドだ。昨年11月に3rdミニアルバム『溢れた水の行方』でメジャーシーンに進んだ緑黄色社会は、ギターロック、エレクトロ、ブラックミュージックなどのテイストを反映させた色彩豊かな音楽性、リアリティとストーリー性を兼ね備えた歌詞、心地よいポップ感と凛とした強さを共存させた長屋のボーカルによって、音楽ファンからの支持を確実に高めている。メンバー全員が作曲に携わりし、楽曲のふり幅が大きいこともこのバンドの魅力だろう。

緑黄色社会 2019.4.26 配信開始 『幸せ』 Teaser Movie

 5月29日にリリースされた新作『幸せ -EP-』のリードトラック「幸せ」は、不安や葛藤を抱えながらも、“ずっとあなたの姿を見ていたい”と願う“私”を主人公にしたバラード。“結婚”というワードを想起させるこの曲を軸にして、現代のシーンを賑わせているポップバンドのラブソングを紹介したい。

 まずはsumikaの「Lovers」。2016年のシングル『Lovers/「伝言歌」』に収録されたこの曲は、カントリーミュージックの雰囲気を感じさせるアップチューン。軽やかに飛び跳ねるようなピアノのフレーズ、オーガニックな手触りのサウンド、朗らかで明るいメロディからは、このバンドの親しみやすいポップネスを感じ取ってもらえるはずだ。ずっと一緒にいたいと願う女性に対し、〈たくさん比べて欲しい/そんで何百万の選択肢から選んで欲しい〉と語りかける歌詞は、聴けば聴くほど深みを増す。わかりやすさと奥深さを同時に体現した「Lovers」は今後も、sumikaのスタンダードとして評価され続けることになるだろう。

sumika / Lovers【Music Video】

 続いてはOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」は、昨年4月に発表された1stフルアルバム『エスカパレード』の1曲目に収められた楽曲。〈これから歌う曲の内容は僕の頭の中のこと〉というフレーズで始まるこの曲の軸になっているのは、“僕”と“君”の“これまで”と“これから”を映画のフィルムに収めたいという思いを込めた歌詞。溢れんばかりのロマンチシズムとそのなかにある切なさを映し出すソングライティングは、藤原聡(Vo/Pf)のポップセンスの高さを証明している。ピアノ、ギター、ドラム、ベースのすべての楽器がしっかりと主張した、臨場感あふれるサウンドメイクも気持ちいい。

Official髭男dism - 115万キロのフィルム[Official Audio]

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