菅田将暉、「まちがいさがし」で果たした米津玄師との再タッグ “声と歌”を最大限に生かした一曲に

菅田将暉×米津玄師「まちがいさがし」の魅力

  米津玄師作詞・作曲・プロデュースによる菅田将暉の新曲「まちがいさがし」がiTunes、レコチョクなど各配信サイトのチャートアクションで快進撃を続け、デイリーチャートでなんと32冠を達成、オリコン週間デジタルシングルランキングで2週連続1位という偉業を達成している。今回は6月4日にストリーミングでも解禁された「まちがいさがし」の魅力について背景をふまえつつ考察してみたいと思う。

菅田将暉 『まちがいさがし』

 松坂桃李が車椅子の建築士・鮎川樹を演じるドラマ『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)の主題歌として、4月より毎週、菅田の声のみで歌い出される「まちがいさがし」はエンディングで印象的に使用されている。シンプルなピアノとストリングスを従えつつ、菅田の主旋律とコーラスが多層に重なったドラマチックなサビを持つバラード、かつ、合唱曲のようになめらかで美しい旋律を持った1曲だ。個人的には、山本美月演じるドラマのヒロイン・つぐみの実家が松本という設定もあり、長野県松本市の美しい景色とも、この曲が醸し出す、どこか懐かしさを呼び起こすようなエバーグリーンな世界観がマッチし、さらなるピュアな感情を演出していると感じている。

 連続ドラマゆえ、毎週同じくらいの時間帯、ドラマのクライマックスで「まちがいさがし」が流れ始めるわけだが、主人公の2人の心洗われるような恋愛模様を取り巻く環境の中に、その行く手を阻む、観ているこちらが息を呑むような展開が用意されている。シンプルだからこそ、菅田の声が持つ緊張感と温かみが際立つこの曲の歌い出しが流れると(なんなら、はたと途中で切れたりすらする)、菅田はこのドラマに役者として画面に出演しているわけではないのだが、ある意味ナレーションのように、しかしそれともまた別の形で、『パーフェクトワールド』の世界を彩る存在になっているようで、そこに新しさが感じられる。

 ここまでの菅田にとっての音楽とは、素の自分の軸を確かめに行くことができるものであるようだった。2017年の音楽デビュー以来、バンド仲間とともに音を楽しむ少年のような姿を見せてきた菅田。でも、だからこそ、自分が歌うことにはどういった価値や意味があるか、という点で少し遠慮とも取れるような発言が見え隠れしたり、音楽活動をする中に模索を続けているような様子が伺えた。しかし、今回の「まちがいさがし」では、明らかに歌という表現で何らか彼にしかできない地点を体得し、“自分が歌うこと”への確信を得たのではないだろうか。役者としての表現と混ざってきたかのような歌声が実現しているように思う(そしてそれはミュージカルなどそういったジャンルともまた全く別の意味だ)。

 ちなみに、菅田自身が歌を歌うことが大好きなことは常日頃からとてもよくわかる。彼は自身のラジオの中でもよく歌を本気で口ずさむし、なんなら最近はリスナーに替え歌を歌わされたりしているが、そういう時も本気で歌い上げている。明らかにその歌唱の幅が広がったことは今回の「まちがいさがし」における、サビ部分のキーの挑戦にも見て取れる。歌唱表現そのものが彼の中でアップデートされたはずだし、その時の自分の俳優業に左右されることのない、歌い手・菅田将暉自身として軸を据えることになるような1曲なのだろう。そしてそれは恐らく、米津玄師の“菅田将暉の声への惚れ込み”が無い限り到達しなかった地点でもある。

 これは、時代のトップランナーである米津が、菅田の歌声をさらに音楽シーンのど真ん中で響かせるために満を持して菅田のために制作し、提供した渾身の楽曲、と評して全く過言ではないだろう。まるでソウルメイトに出会ったかのように米津が菅田の存在感に導かれ、2017年に発表した「灰色と青(+菅田将暉)」は、ここまでにYouTubeでのMV再生回数がなんと1億1000万回以上にまで達しており、ある意味、社会現象とも言えるほどにこの1年ほどの間、あらゆる場所で何度も耳にするような作品となった。

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