PAELLAS『sequential souls』インタビュー 自由度が増すことで洗練されていく音作り

PAELLASの“音作り”に迫る

 インディーR&B、アーバンソウル、ジャパニーズ80'sAORやハウスなど、現行の海外のシーンともリンクする音楽性で確かなファンベースを築いてきたPAELLASがニューアルバム『sequential souls』を6月5日にリリースする。洗練されたバンドサウンドは日本国内のみならず、アジア各地のインディーシーンでも認知されライブも重ねてきた。加えて、今作からはEMI Recordsからのリリースとなる。

 音数をそぎ落とし、洗練された音像とセンシュアルな魅力を持ったボーカルMATTONの表現が醸す独特な世界観。その持ち味は残しつつ、11曲入りのアルバムというスケールならではの自由度が耳を引く。インタビュー初登場の今回は、このバンドの曲作りのメカニズムや、世界で同時進行する音楽との関係などを聞いた。(石角友香)

ライブのことは考えずにPAELLASとして作りたかった作品

MATTON(Vo)、Ryosuke Takahashi(Dr)、Satoshi Anan(Gt)、bisshi(Ba)

ーー『D.R.E.A.M.』辺りから今回の『sequential souls』への変遷やシーンとの関わりなどをお伺いできればと思っています。まずはそれぞれの作品について振り返っていただきたいのですが。

Anan:作り方で言うと『D.R.E.A.M.』の時は僕が家で全部骨組みを作り上げて、そこからみんなに渡して、各々変えたいフレーズとかあれば変えてもらって。メロディも僕が全部作ってたんで、それをMATTONに渡してそれに合わせて歌詞を書いてもらって。そういうやり方でやってましたね。そして『Yours』でbisshiと僕のコンポージングの割合が半々ぐらいになって。

Ryosuke:『Yours』からセッションで作るようになったというのもある。

ーー『Yours』って意外とバンドの3リズムを突き詰めた側面があったんですね。

MATTON:そうですね。『D.R.E.A.M.』で本格的に自分たちが演奏しないシンセサイザーなどの音をたくさん入れるという流れを経て、ライブがあり、ちょっとバンドっぽいものをやった方がいいなと感じたというか。その時々、毎回今自分たちにないものを新しく作っていこうというのがあると思うので、『Yours』の時はそういうマインドだったのかな。

Ryosuke:セッションで作ったことがなかったんだよ、『Yours』の時まで。僕が入ってからはずっとDTMで作ってたから。

MATTON:曲を作る上での突破口というか他の選択肢も作りたいっていう模索の変遷があって。それもひと段落というか、一つまぁ大体こういう感じで落ち着いたんじゃないかな? って思うのが今回のアルバムですね。

ーー作曲やデモ作りの手法の変化とともにMATTONさんの歌詞が英語から日本語に変化してきた部分もポイントですね。

MATTON:それはすごく自然なことだったんです。SPACE SHOWER MUSICに入って、『D.R.E.A.M.』を作るってなった時に、「いいタイミングかな」と思って。最初はレーベルが変わって急に日本語になるのはともすればネガティブなことというか、「ポリシーを捨てた」「日本語に走ったか」って言われるかもなってちょっと悩んだんですが、そういうのを差っ引いてもプラスの方が大きいと思ったので、日本語にしたっていうところがあって。そのあとは自然に英語やカタカナのフレーズもなくなっていき、「Orange」から完全に日本語でーー今回も完全に日本語なんですけど、そこは自分の中で、もう特に意識はしてないですね。

ーーPAELLASは日本のバンドの中でもユニークな変化をしてきたと思うんですが、『Yours』のタイミングでのライブでオーディエンスの集中力に、このバンドへ求められているものを見た気がしたんです。

bisshi:東京でツアーのワンマンになるとそういう感じなりますね。

Ryosuke:僕らの集中力よりお客さんの集中力がすごかった。結構そのツアーから機材とかも固まり始めて。

bisshi:色々変遷はあるけど、その頃が一番切り替わった頃かな。ステージングとか、花や照明の演出も面白かったし。

ーーほとんどメンバーが見えない照明で、いわゆるバンドのライブというのとは違う演出だったと思います。

MATTON:いろんな正解があると思うんですけど、PAELLASでライブをやる一つの正解はこれなんかな? っていうのはなんとなく見えたのはその日じゃないかなと。

Ryosuke:今、僕らが日本でやっていくライブではあれが正解だったんで。無理やり盛り上げる必要もないと思ってますし。あの感じでいいのかなと思ってます。

ーーそれ以降、デジタルシングル『Orange』と『Weight』が出た後にもライブがあって、そこでの手応えが今回のアルバムに繋がっていった部分はありますか? それとももっとバンドの内側から来たものですか?

Ryosuke:内側からですね。

MATTON:多分、『Yours』、『Orange』、『Weight』の頃はライブのこともなんとなくイメージして「こういう曲、ライブであったらいいね」とか考えて作ってたのが、今回の作品に関してはライブでやることは、ほぼ考えずにみんな作ったんじゃない?

Anan:今回はそうですね。ギターが結構多いので。

Ryosuke:ライブのことは考えないで、ギターをどんどん重ねていったんで。そこは一旦ライブは切り離したんじゃないですかね。もちろん、どうにかしてやり方を考えるっていうのはありますけど。だからライブで何か影響を受けたというより、作りたいものが増えてきたっていう方が正解じゃないですかね。

ーー平たく言うとより体験的な音像になったし、自由度が高い。

Ryosuke:そうですね。すごい気持ちが上がる曲なんて1曲もないんですけど(笑)。まぁ、めちゃめちゃ平熱だなと思いますけど、これがやりたかったことなのでよかったですけどね。

「Horizon」から感じられるPAELLAS節

ーー2016年頃のPAELLASなら東京インディーと海外の音楽の符号が目を引くイシューでしたが、今作の1曲目の「in your eyes」は特に何の影響がかけ合わさったものなのかがわからない域にある印象です。

bisshi:一応、リファレンスはありますけど。なんでこういう曲を作ろうと思ったかというと、メンバーから感じるものでしかなくて。リファレンスはもちろん海外の音楽とかですけど、そういうのを意識せずに別に普通に日本の音楽も聴くし。なぜそういう曲を作るかっていうのは、俺はもうメンバーから感じるものでしかないと思ってるんで、ほんとそれだけですね。

ーージャズ的なコード感ではありますが。

bisshi:そうですね。コード選びはAnanぽいのを選んだつもりなので。だから100%、自分の曲だと思ってないんですね。『Yours』の時はほんとに自分がやりたい感じで作ってたんですけど、「こういうのが好きだろうな」とか、「こういうのAnanに弾かせてみたいな」と思って曲としてギターを作ったみたいな。そしたらそういう曲になったというか。

ーーそしてもう一つbisshiさん作曲の「searchlight」は速いBPMで、本作の中では異色ですね。

MATTON:速い曲は作りたいねって話はしたんですけど、ま、異色ですよね。ちょっとこう、今とは全然違いますけど、僕とbisshiが二人でやってた頃のニューウェーブ/ポストパンクの雰囲気もあるような曲があってもいいよね、みたいな話はして。で、bisshiがある曲をリファレンスして作ってきたのがその曲です。

bisshi:個人的にはBPMが持ってる曲のキャラクターみたいなものの幅が広い方がいいかなと思ってて。で、どうせやるんなら突き抜けちゃえと思ってめちゃくちゃ速くしたんですよ。それはほんとにMATTONと二人でやってた頃の曲っぽい。なんだけどモード的にはモダンな感じ、今にマッチした感じで作ろうと。

ーーそんな中、リードトラックの「Horizon」はさすがにPAELLAS節に聴こえるんです。“らしさ”が目立つというか。

PAELLAS – Horizon Music Video

bisshi:だから「Horizon」を聴いたとき、僕は安心しましたよ、“節”が一個あったら素晴らしい。

Ryosuke:でもさ、その“節”もその前に遡ると「Shooting Star」(『D.R.E.A.M.』収録)しかないし。

MATTON:でも客観的に見て、みんながあれをPAELLAS節と思ってるから、その節が一個あったことには安心しました。「Shooting Star」と比べて「Horizon」、何がアップデートされた部分だと思う?

Anan:アップデートというか、変わったところでいうと「Shooting Star」を作ってた時は、メロディに起伏を持たせるようにすごく頑張ってて。それまでPAELLASって、歌のメロディがリフやフレーズだったことが結構多くて、そこを一度打破したいなって気持ちがあったんです。だからあの曲に関しては1曲通してコード進行はずっと一緒なんですけど、その中でセクションごとにメロディを変化させていくことを試みていて。で、「Horizon」今回は逆にリフレインに立ち返って、サビで盛りは上げるんじゃなくて、フレーズをくりかえすことによってサビのキャラクターをつけてみました。

Ryosuke:多分、僕とAnanで作ってる曲はBが一番メロディ的には上がってるところですね。で、サビで下げるってやり方を今回作ったので。

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