androp、デビュー10周年イヤーへのときめきを伝えた一夜 『daily』ツアー初日を振り返る

androp、ツアー初日を振り返る

 デビュー10周年イヤーへ突入し、昨年リリースしたアルバム『daily』を引っ提げたandropのワンマンツアー『one-man live tour 2019 “daily”』が、5月15日恵比寿LIQUIDROOMからスタートした。今回のツアーは、仙台、名古屋、大阪、福岡と回り、再び東京へ戻ってandropが初めてワンマンライブを行なった代官山UNITでファイナルを迎えた。昨年行なったライブハウスツアー『one-man live tour 2018 "angstrom 0.9 pm"』同様に、今回も彼らにとって馴染みのあるライブハウスをまわる原点回帰的なツアーでありつつ、同時に『daily』という作品でのandropの新たな息吹を間近で感じてほしい思いもあるのだろう。この原稿では、ツアー初日の恵比寿LIQUIDROOM公演をレポートする。

 新作を携えたツアーの初日というものは、どんなバンドやアーティストでも独特の空気が漂うものだが、この日のandropとそしてチケットがソールドアウトしてフロアにみちみちに詰まった観客たちもまた然り。何かがはじまるときのひりっとした緊張感と高揚感がないまぜになった感覚が会場を覆い、SEが流れると同時にその空気はさらにグッと引き締まる。そして1曲目にプレイしたのは、andropとしては新しいタッチのミディアムで低温感のあるR&B「Blue Nude」。そしてシングル『Koi』のカップリングでありこちらもBPMは低めによるダンスミュージック「For You」へと続いていく。エレクトロと絡む伊藤彬彦(Dr)の的確なビートが気持ちがいい。フロントマン・内澤崇仁(Vo/Gt)はギター持たずグルーヴのある歌のみでフロアを引っ張っていき、前田恭介(Ba)はシンセをプレイするなどしてエレクトロなサウンドをバンドでフレキシブルに作り上げる。

 ライブ定番曲である「MirrorDance」から最新アルバム収録の「Saturday Night Apollo」へと、最初のブロックからダンスチューンの数珠つなぎである。また、andropサウンドのレンジを広げた曲を連投することで、バンド内にも新鮮な風が通っているのを感じるはじまりだ。初日とあって、まだバンドと観客とが探り合うような感覚はひしひしと伝わるが、徐々に緊張がほぐれて体を揺らしていく、ゆらりと動きはじめる素直なフロアの感じもまたライブならではだろう。

内澤崇仁(Vo/Gt)

 「今日はなんと、初日です。非常に、興奮しております」と挨拶をした内澤は、「あまり興奮しているようには見えないと思うけど(笑)。音楽で、スペシャルな夜にしたい」と続ける。この日は令和になって初のワンマンだが、元号は変われども、洗練されゆく音楽とは裏腹にトークの方は素朴なまま。とはいえ、長年ライブに来ているようなファンは、こんな一幕にもホッとするようで、会場のムードが柔らかさを増すのを肌で感じる。そのムードに「Proust」と「Radio」という、ジェントルでジャジーな2曲がピタリとはまる。最新作からは、ギターの紡ぐ軽やかなループと歌で静かに漕ぎ出す「Blanco」が続く。まさにブランコのように、後半にいくにつれ大きく大きく広がっていく高揚感がシンガロングを生み、観客の声も心もつかむ曲となっている。この日のライブが初披露となった「Blanco」だが、思っていた以上にライブ映えのするスケールの大きいタフな曲で、これからさらに育っていきそうな曲になっている。

 聴き手がそれぞれに曲に想いを乗せ、心地よい一体感が会場を包むなか、中盤のMCは何かがスパークしたのか、メンバー同士のトークが止まらない。佐藤拓也(Gt/Key)から「初日からそんなに喋る!?」とツッコミが入るほど、どんどん話が膨らむ事態に。普段の4人の雰囲気や会話の温度が垣間見える、ステージとフロアとが近いライブハウスだからこそだろう。

佐藤拓也(Gt/Key)

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