米津玄師、あいみょん独走 まるりとりゅうが、milet台頭…レコチョク2019上半期ランキング分析

レコチョク2019上半期ランキング分析

 株式会社レコチョクが2019年7月9日、「レコチョク上半期サブスクランキング2019」「dヒッツ(R)powered by レコチョク(以下、dヒッツ)上半期ランキング2019」を発表した。

 「サブスクランキング」の発表は今回が初で、レコチョクが提供している定額制音楽配信サービス「RecMusic」(旧名称「レコチョク Best」)、株式会社NTTドコモが提供する「dミュージック月額 powered by レコチョク」、株式会社NTTぷららが提供する「ひかりTVミュージック」における再生回数を反映したランキングとなっている。レコチョクがサブスクランキングを発表したことは、2015年頃から日本でも本格的なサービスが始まったサブスクがようやく浸透したことの表れだろう。

 まずはサブスクランキングをチェックしてみよう。

 アーティスト毎に再生された楽曲総再生回数に基づいた「アーティストランキング」1位は、あいみょん。2016年11月に「生きていたんだよな」でメジャーデビューしたあいみょんは、「君はロックを聴かない」がスマッシュヒット。「マリーゴールド」のロングヒットでブレイクを果たした。リアルな感情をポップに昇華した音楽性、本人自身のナチュラルな佇まいは幅広い層のリスナーに届き、楽曲別再生回数ランキングでも、1位(「マリーゴールド」)、2位(「今夜このまま」)、5位(「君はロックを聴かない」)を獲得。トップ5のうち3曲を占め、サブスクにおける圧倒的な強さを示した。

 アーティストランキングの2位にはback number、3位はONE OK ROCK、4位にはMr.Childrenとバンド勢がランクイン。5位には乃木坂46が入った。言うまでもなく、いずれも日本の音楽シーンを代表するアーティストばかり。多くの固定ファンを持ったアーティストに関しても、サブスクで楽曲を聴く傾向が強まっているようだ。

 「新人アーティストランキング」では、まるりとりゅうがが1位を獲得した。Twitterに投稿したカバー楽曲で注目を集め、SNSの歌姫として同世代の男女を中心に絶大な支持を集めているMaRuRi。SNSで自作の楽曲を投稿したことをきっかけに国内外で反響を獲得し、帰国後はアーティスト活動の一方、作詞作曲やSNS配信、自主企画イベントなどを行ってきたRyuga。このふたりによるユニット・まるりとりゅうがは、2018年11月にデジタルシングル「気まぐれな時雨」でメジャーデビュー。2019年2月にはミニアルバム『はじめまして。』がスマッシュヒットを記録し、サブスクの再生数につながった。

 定期的に開催しているインスタライブは同時視聴者数が3,000人に達するなど、まるりとりゅうがは“SNS発の新世代アーティスト”としても注目を集めている。5月にはストリーミングサービスから新たなヒットを生み出すプロジェクト『NOW PLAYING JAPAN』の新人応援企画「STARTERS MATCH」でグランプリを獲得し、同プロジェクトのライブイベント(東京・新木場STUDIO COAST)に出演。また、「カルピス」100周年の施策「人を想う記念日ACTION!」の一環であるミュージックビデオアニメーション「タナバタノオト」に参加するなど、活動の幅も着実に広がっている。9月4日には2ndミニアルバム『お見知りおきを』がリリースされるなど、サブスクを軸にしながら、その知名度はさらに上がりそうだ。

 まるりとりゅうがを支持する10代のリスナーは、いわば“サブスク・ネイティブ”世代。これからのアーティストにとってサブスクで聴かれるための施策は、必要不可欠な要素になっているのだと思う。

 「dヒッツ」ランキングの1位はあいみょん。以下、back number、ONE OK ROCKと3位までは「サブスクランキング」と同じ結果となった。4位には40周年を迎えて大規模なドームツアーを開催したサザンオールスターズがランクイン。5位には今年2月から活動休止に入った西野カナ、9位には昨年9月に引退した安室奈美恵が名を連ねるなど、根強い人気を示している。

 ダウンロード(シングル)を対象にした「レコチョク上半期ランキング2019」にも目を向けてみよう。

 1位は米津玄師の「Lemon」。ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、昨年2月12日より先行配信され、レコチョク週間ランキングで7週連続で1位を記録。その後もソフトバンク「白戸家ミステリートレイン」シリーズTVCMソングへの起用、2018年の『第69回NHK紅白歌合戦』における地上波初パフォーマンスも大きな話題となり、翌月2019年1月のダウンロード数は前月比200%以上に急伸。ダウンロード数をさらに積み上げた。

 「レコチョクランキング」上半期のトップ10には「Lemon」をはじめ、「海の幽霊」(7位)、米津が作詞・作曲・プロデュースを手がけた菅田将暉「まちがいさがし」(3位)やFoorin「パプリカ」(5位)など、米津の関連楽曲4曲がランクイン。「ダウンロード(シングル)」「ダウンロード(ハイレゾシングル)」の総合ランキングである「アーティストランキング」でも1位を獲得するなど、さらにファン層を広げ続けていることを証明している。

 2位の「HAPPY BIRTHDAY」(back number/ドラマ『初めて恋をした日に読む話』主題歌)、3位の「まちがいさがし」(菅田将暉/ドラマ『パーフェクトワールド』主題歌)、

 6位の「アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)」(MISIA/ドラマ『義母と娘のブルース』主題歌)、8位の「Remember Me」(MAN WITH A MISSION/ドラマ『ラジエーションハウス〜放射能科の診断レポート〜』主題歌)、9位の「白日」(King Gnu/ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』主題歌)などTVドラマのタイアップ曲も数多くランクイン。ドラマの主題歌として注目を集め、ダウンロードにつながる流れは今後も続きそうだ。

 「新人アーティストランキング」は、miletが1位を獲得。デビュー作『inside you EP』の表題曲「inside you」はドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』オープニングテーマ。ONE OK ROCKのギター・Toruがプロデュースを担当(作詞はmilet、作曲はToruとmiletが担当)し、海外のシーンとリンクした音楽性、ハスキーかつ重厚なボーカルの魅力をアピールした。

 さらに「Wonderland」(映画『バースデー・ワンダーランド』挿入歌・イメージソング)では、クラシカルで壮大なサウンドとともに、エキゾチックな世界観を備えた歌を堂々と表現。新曲「us」(ドラマ『偽装不倫』主題歌)では高揚感のあるトラックのなかで、ダイナミックなメロディ、“あなた”に対する愛情を描いた歌詞を歌い上げ、シンガーとしてのポテンシャルの高さを提示している。この夏は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』、『SUMMER SONIC 2019』に出演し、11月には1stライブ『milet first live“eye”』の開催も決定。映画、ドラマなどのタイアップ曲で注目を集め、配信を中心にヒットを生み出し、ライブやフェスにつなげる導線ができつつあるようだ。

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