Uru、“発見されるべき”体現者たる理由は 『グランベルム』ED曲「願い」にも通ずるポイント

Uru、ストリーミングで再生され続ける理由

 ネット発アーティストが存在感を増している。海外では、ジャスティン・ビーバーやオースティン・マホーンへ続き、YouTube出身のシンガーとしてR&B歌姫、サブリナ・クラウディオが『フジロックフェスティバル’19』へ出演が決定するなど話題となっている。

 日本でネット発アーティストといえば、米津玄師の活躍を筆頭にまふまふ、Eve、須田景凪、majiko、Reol、神山羊など、ボーカロイドカルチャーから派生したボカロPや歌い手のシンガーソングライターとしての活躍が目覚ましい。

 そんな中、YouTube出身のシンガーとして注目したいのが先日、新曲「願い」の先行配信を、9月11日のCDリリースに先駆けて開始したばかりのUru(ウル)だ。

 活躍のきっかけはYouTubeとSNS。2013年より、サザンオールスターズ「真夏の果実」、中島みゆき「糸」、SEKAI NO OWARI「Dragon Night」、BUMP OF CHICKEN「ray」などJ-POPのカバー動画を自ら編集し投稿し続けることでアンテナを張る早耳リスナーに発見され、2016年6月にメジャーデビューした。歌唱力の高さはもちろん、心にすっと染み渡っていくような歌声が評価され、モノトーンにデザインされた動画や写真の色合いがオリジナルのブランドのようになり、現在ではチャンネル登録者数が28万人。総再生回数が1億3千万回を超えている逸材だ(参考)。

 YouTube内Uruチャンネルのバナーに掲げられたキャッチコピーは“あなたが、まだ知らない奇蹟の歌声”。デビュー後も過度なメディア露出をしないことからリスナーはその歌声の美しさに没入することができる。透明感を持つ、しっとりと優しいボーカリゼーションに心を奪われるのだ。

 ターニングポイントは、TBS系金曜ドラマ『コウノドリ』第2シリーズ主題歌「奇蹟」だった。本作は、ドラマ人気の相乗効果もあり配信初日にレコチョクデイリーランキング1位、Moraデイリーランキング2位、iTunes総合4位などを獲得。「命」に向き合う産婦人科医というドラマを通して、幅広い世代にUruの存在を知らせるきっかけとなった。

【Official】Uru『奇蹟』YouTube ver. TBS金曜ドラマ「コウノドリ」主題歌

 さらに、自身2度目のドラマ主題歌としてTBS系 火曜ドラマ「中学聖日記」に書き下ろした「プロローグ」では、揺れ動く恋心を描くドラマのストーリーと楽曲・歌詞世界が生み出す親和性の高さから、配信初日に自身最多となるデイリーランキング11冠に輝き、オリコン週間デジタルシングルランキングでも2度にわたり首位を獲得。歌詞検索サイトの歌ネットでもチャート上位にランクインし続けている。

【Official】Uru 『プロローグ』YouTube ver. TBS系 火曜ドラマ「中学聖日記」主題歌

 また、「プロローグ」の発売にあわせて1stアルバム『モノクローム』までのシングル5枚を含む楽曲をApple Music、YouTube music、LINE MUSIC、Spotifyといった定額制音楽ストリーミングサービスでも配信を開始し、高い評価を得た。

 SNSが発展した現在、関係性や趣味嗜好をネットワーク化したソーシャルグラフがクモの巣のように張り巡らされている。定額制音楽ストリーミングサービスが普及し始めた今、プレイリストがリスナーと作品のマッチングの役割を果たすのだ。Uruの音楽活動を見ていると、その動きはゆっくりではありながらも、届けたいリスナー、届くべきリスナーへと大げさな仕掛けなく伝わっているように思う。まさに、リスナーが音楽を発見する時代における“発見されるべき”体現者のように感じる。

 Spotifyでは、アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期EDテーマとなった人気曲「フリージア」が13万回再生を突破している。Uruは、公式プレイリスト『Anime Hits』、『Woman Don’t Cry』リストインの常連だ。各定額制音楽ストリーミングサービスや、アニメーション、ドラマなどのタイアップが言わばコミュニティとなり、アーティストとリスナーを結びつけている。公開されているデータをみると日本国内はもちろん、ジャカルタや台北でも多数聴かれているなど、アニメ主題歌への起用をきっかけに海外リスナーからの評価も高まっていることがわかる。

【Official】Uru 『フリージア』 YouTube ver.『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期EDテーマ

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