スカートがバンドとして音楽を奏でる喜び 『トワイライト』ツアー最終公演を振り返る

スカート『トワイライト』ツアー最終公演

 スカートが、最新アルバム『トワイライト』を携えて行ったツアー『スカート Major 2nd Album リリースツアー“トワイライト”』のファイナル公演、渋谷CLUB QUATTRO。本ツアーは全4公演、対バン形式でのライブが行われた。札幌は台風クラブ、名古屋と大阪はグッドラックヘイワをゲストに呼んで巡り、東京には昨年結成5周年を迎えたHelsinki Lambda Clubが出演。この日のMCでは、スカート澤部渡(Vo/Gt)から東京のゲストを決める際に若いバンドを探していて、彼らに白羽の矢が立ったと語られた。澤部の中で“いいと思うのにツボが見えない音楽”だった90年代オルタナの雰囲気をグッドメロディに乗せて演奏するバンド、という紹介のとおり、Helsinki Lambda Clubの音楽は青春漂うローファイ感に耳が向かうものの、メロディの良さが際立っている。この日のライブの中では特に「引っ越し」が印象深く残った。Helsinki Lambda Clubとスカートを結びつけたのは、“メロディの良さ”とバンドが謳歌する“青春”というキーワードのように思う。

 この日のスカートのライブもメロディの美しさを存分に楽しむことができ、バンドが演奏を心から楽しむ青春とも呼べる雰囲気があった。佐藤優介(Key)、岩崎なおみ(Ba)、佐久間裕太(Dr)、シマダボーイ(Per)というアルバムレコーディングを共にした仲間たちといきいきとしたサウンドを鳴らす澤部。セットリストは『トワイライト』の最後を飾る「四月のばらの歌のこと」から始まり、新旧楽曲を織り交ぜた内容が用意されていた。Helsinki Lambda ClubがMCで「スカートの音楽はドライブに合う」と話していたように、「ずっとつづく」「ともす灯 やどす灯」「視界良好」「遠い春」と、その場の情景や移りゆく景色がはっきりと浮かぶ楽曲が次々と披露されていく。

澤部渡
佐藤優介
岩崎なおみ
シマダボーイ
佐久間裕太
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澤部渡
佐藤優介
岩崎なおみ
シマダボーイ
佐久間裕太
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 「我々スカートは、“東京のローカルバンド”という意識があります。東京のバンドというと山手線の内側というイメージがありますが、我々山手の外側から内側に向かっていく曲を書きました」という宣言のあとに始まった「高田馬場で乗り換えて」や「さよなら!さよなら!」などの軽快なナンバーから、熱量のこもった激しいギタープレイを聞かせる「セブンスター」、「口数が減ってもハローと言いたい」(「ハローと言いたい」)、水道の蛇口やペットボトルなどの水を例に出した「水流になにかひっかかってしまった曲」(「アンダーカレント」)など雄弁な曲紹介も冴える。岩崎なおみのベースの見せ場など現メンバーになったことでバンド感が一層増した「CALL」、シマダボーイのコンガのリズムや澤部のギターが印象的な「回想」と、バンドの熱演を受けて、観客の内から滲み出るような盛り上がりが会場を包んだ。

 「東京はホームタウン。東京のローカルバンドやっててよかった」と満足そうな様子を見せる澤部。萩尾望都の漫画『トーマの心臓』を読み返し歌詞を作り上げたという「沈黙」や「それぞれの悪路」、以前インタビューで自身の表現したい音楽が形にできたと自身をのぞかせた「花束にかえて」と『トワイライト』収録ナンバーを続け、表題曲では演奏前に「例えばある景色を2人で共有する楽しみってあるじゃないですか。その景色を見ようとして、たまたま同じ景色が見れなかった時のことを歌った曲です」と語り、たっぷりの切なさを含んだ歌声で観客を魅了した。

 「胸がいっぱいです」と感慨深い様子を経て歌われた「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」は、Negicco・Kaedeのために書き下ろしたナンバーのセルフカバーだ。この曲のイメージは、振り返れば澤部が2008年『FUJI ROCK FESTIVAL』にSparksを見に行った際、東北自動車道の暗闇に電灯の薄明かりが浮かんだ景色と重なる部分があるのだという。澤部のエモーショナルな歌声とギター、もの哀しさのある佐藤優介のピアノの旋律やリズム楽器の音色がセンチメンタルな雰囲気を盛り立てた。

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