菅田将暉の登場と躍進が“役者の歌う歌”に与える影響 『関ジャム』機に歌い手としての魅力を紐解く

菅田将暉が“役者の歌う歌”に与える影響

 8月18日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)には菅田将暉と上白石萌音、そしていしわたり淳治がゲストとして登場し、「役者が歌う歌」特集が展開された。過去にも同番組では歌手としての菅田の魅力をいしわたりが分析。「俳優は役を与えられて歌うことができる人たち。シンガーとして役をもらって歌う人。しかしどんどん減ってきている。俳優としても力があり、すごくいい歌が歌えるという人が出てくるといろんな音楽が生まれていく可能性がある」と、以前番組内でいしわたりがコメントしていたことから実現に至った、満を持しての特集である。

 番組では昭和の石原裕次郎や勝新太郎など銀幕を飾った大スターたちのさまざまな歌の魅力に触れたのち、平成では柴咲コウ、反町隆史、松たか子などに触れた。いしわたりは今回冒頭で「音楽のアーティストが歌う楽曲にはのるかそるかを聴く側が試されている感じがする部分があるが、役者が歌う歌ではそれがエンターテインメントで埋まる。そのため聴いている側も安心して聴けるのでは」と、役者が歌う歌の魅力をあらためて示し、“役者ソングが心に響く4つのヒミツ”として1つ目のエンターテインメント性の高さに加え、男性俳優はキザな曲も歌いこなせること、アーティストからの楽曲提供により魅力が増すことなど、役者だからこその感情表現の豊かさを軸に、菅田や上白石の歌唱の魅力を紐解いていった。

 菅田は若き日のさだまさし役を演じたドラマ『ちゃんぽん食べたか』(NHK総合)、GReeeeNを題材にした映画『キセキーあの日のソビトー』で歌を披露したことから、現在の本格的な歌手活動に至るまでの流れが生まれていった。ちなみに菅田については、番組内で触れられたau CMソングで知られる浦島太郎として「海の声」を歌う桐谷健太と映画『火花』の劇中でコンビ役を演じたことで、主題歌の「浅草キッド」(オリジナル歌唱、作詞作曲はビートたけし)でも歌で共演していたりもする。今回、番組内では西岡恭蔵によって作られその後様々なシンガーがカバーをしているブルースの名曲「プカプカ」の原田芳雄によるカバーが紹介されていたが、この「浅草キッド」も実に様々な歌い手によってカバーされている定番曲でもある。

 番組内で菅田は、「セリフのように歌う場合もあれば、何も考えずに歌うこともある」と話し、いろいろな歌い方を楽しんでいる様子が見受けられる一方で、「歌うことに対して自分は素人」とも念をおしていたのが印象的だ。とはいえ、バンドメンバーとともに自分で曲づくりもするうえ、お互いのリスペクトが高じた結果、米津玄師やあいみょん、石崎ひゅーいといった豪華すぎるほどのアーティストたちからも、楽曲提供を受けている。もはやまったく“歌の素人”ではないだろう。

 役者だからこその与えられた世界に没入できる集中力と、声の表現の多彩さには、むしろミュージシャンのほうがハッとさせられる部分もあったりするのではないだろうか。石崎ひゅーいや米津玄師からのコメントでも菅田の声の魅力は存分に触れられていたが、最近はTHE BACK HORNの菅波栄純が菅田の声の魅力についてTwitterで言及していたのも記憶に新しい。

 この菅波が触れた菅田の2枚目のアルバム『LOVE』では、菅田の事務所の先輩である松坂桃李主演のドラマ主題歌「まちがいさがし」(作詞・作曲・プロデュース:米津玄師)から始まる全11曲が収録され、実に多彩な声の表現を味わうことができる。さまざまな制作陣からの提供曲については「監督・脚本・演出が制作者で、自分が主演という感じです」と菅田は番組内で話したが、「ドラス」「つもる話」「TONE BENDER LOVE」「あいつとその子」という“作詞・作曲:菅田将暉”の4曲については特に、菅田本人が意識的に演じ分けを試してみている部分と、無意識ながら歌うことで表出している新たな表現がある。非常に繊細な揺らぎが歌のそこかしこに見て取れることが非常に面白いので、未聴の方は是非とも一度聴いてみていただきたい。

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