テイラー・スウィフト、ビヨンセ、リアーナ…ビジネス的成功収めるスターから学ぶ音楽産業のヒント

 男性優位な音楽産業において、年収ランキング首位に女性が多いことはご存知だろうか。彼女たちはメガトップスター。音楽界の頂点に立ちながら革命を繰り広げるビジネスパーソンたちだ。その存在は、音楽産業の現状のみならず生きる知恵も与えてくれるだろう。

Forbes『2019年版もっとも稼いだ音楽界の女性』

1位:テイラー・スウィフト…1億8500万ドル
2位:ビヨンセ…8,100万ドル
3位:リアーナ…6,200万ドル
(参照:Forbes

テイラー・スウィフト:空席コンサートで歴代1位興行

テイラー・スウィフト『Lover』

 テイラー・スウィフトは「評判」を武器としてしまうポップスターだ。彼女を「もっとも稼いだエンターテイナー」たらしめた『レピュテーション・スタジアム・ツアー(Reputation Stadium Tour)』にしても、自らへの悪口として使われていた「蛇」を巨大オブジェにしたことで話題を呼んでいる。ここで興味深いことは、同ツアーがビジネス領域でも激論を発生させたことだ。なんと、これまでのツアーチケットは速攻完売が当然だったにも関わらず、今回は空席が目立ったのだ。理由は「スローチケット」と呼ばれる販売システムの導入にある。価格帯は強気の約50~1,500ドル(前回の1989ツアーでは40~225ドルほど)(参照:The Wall Street Journal)。まず、アイテム購入ポイント等からなる「ファン認証プログラム」によって、チケットの半分を熱心なファンに割安で提供販売。くわえて、市場価格によって値段が変わる「動的価格設定」を実施(約1,000ドルだった席が600ドルにまで下がる時もあった)。このやり方だと、チケットはスローに売れていくことになるが、転売を防ぐことができる。事実、主流の二次流通市場に出回ったチケットの割合は、前回30%から3%にまで縮小。『レピュテーション・スタジアム・ツアー』は、席が売れ残る段階で前回の興行収入を上回り、最終的にはたった38公演でアメリカにおける歴代最高興行収入ツアーとなった(2位The Rolling Stonesは70公演)(参照:Billboard)。

 こうしたやり方を拒む人気ミュージシャンも多かったという。「値上げによって貪欲なイメージがついてしまいかねない」ためだ。テイラーにしても、当初はForbes含むメディア群から「リスクある貪欲商法」と批判を受けている。歴史的成功に終わったことは同誌の収入ランクを見ての通りだが……テイラー・スウィフトから学べることはなんだろう? 勝算があるのなら、「評判」に負けずやってみることだ。

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