SANABAGUN.は今が一番底知れない マンスリーライブシリーズ完結“Eight Seven”レポ

SANABAGUN.『2013-2018』“Eight Seven”レポ

 これまでリリースしてきた路上盤を含むアルバムを2枚ごとに体現するSANABAGUN.初のマンスリーライブシリーズ『2013-2018』もついにこれにてファイナル。8月27日に渋谷CLUB QUATTROにて“Eight Seven”が開催された。今夏のサナバはとにかく外に向けて動きまくった。その中でも特筆すべきなのはやはり7月28日、初出演にして2番目に大きなホワイトステージに立ったフジロックのアクトだろう。YouTube配信もされたので現地組のみならず多くのファンが8人の勇姿を見届けたと思う。最後に高岩遼がステージ下にマイクを落とすというハプニングも含めて予定調和では終わらないサナバのライブの魅力を十二分にアピールしたパフォーマンスだった。フジロックの2日後にはやはり渋谷CLUB QUATTROでマンスリーライブ“Green Red”を、8月4日には大阪BANANA HALLにて“Danger Blue”を開催。セットリストがガラリと変わるこのマンスリーライブとフェス(と、そのリハ)、そして10月23日にリリースされるニューアルバム『BALLADS』の制作を同時進行で行っていたのだから、メンバーにとってかなりの集中力を要された夏であったことは想像に難くない。しかし、今のサナバは精神的にも肉体的にも過去最高のタフネスを湛えながら音楽と向き合っている。そのことをフルボリュームのセットリストでキッチリ示してくれたのが、この日の“Eight Seven”だった。

 大樋祐大(Key)の弾く鍵盤が先導する格好で隅垣元佐(Gt.)、澤村一平(Dr)、谷本大河(Sax)、髙橋紘一(Tp)、大林亮三(Ba)、岩間俊樹(MC)、高岩遼(Vo)がステージに現れ、色っぽいダンディズムを漂わせるようにしてムーディーに始まった1曲目「As time goes by」から、メンバーの演奏には“気高い矜持”のようなものが感じられた。続く「ing」と「Yukichi Fukuzawa」では貫禄と余裕、威厳と享楽性が両立したパフォーマンスでオーディエンスを踊らせながら惹きつける。大林のベースが牽引する濃度と粘度の高いファンクネスがうねる「8 manz」も実にグルーヴィーだった。

 高岩曰く「大人になったSANABAGUN.」を見せた「車窓」から「Speak of Love」までの流れ、そこからディスコティックなダンスサウンドを解放した「7shot」への移行もまるでDJミックスのようにシームレスにつなげてみせた。このあたりの細やかな意匠も心憎い。

 一転して、「SEXY ROBOT skit」からは一気にオーディエンスを弛緩させるコミカルなセクションへ突入。誰がボケ役で誰がツッコミ役なのか判別がつかないカオティックなメンバーのやり取りが繰り広げられていった。ステージでマクドナルドのバーガーやナゲットを食す演出もあり、さらにはメンバーにはサプライズでドラムの一平の実母がカレーを持って登場するというなんでもありの様相に。しかし、演奏に入るとキッチリ見せてくれるのがサナバである(あたりまえだけど)。

 ニューアルバムに収録される「ス・パ・パ・パ・イ・ス〜想い出のお母さんカレー編〜」のサウンドプロダクションがまさかのダンスホールレゲエ調だったり、「三種の神器」と「Black Diamond」をスムースかつダイナミックにマッシュアップした「三種のBlack Diamond神器」を披露するなどステージにフレッシュな風を存分に吹かせ、本編ラストは「We in the Street」でクールに締めた。

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