日向坂46はアイドル界の頂点へ向かう SSA公演で見せた、けやき坂46から現在に至る最強&最高の姿

日向坂46はアイドル界の頂点へ向かう

 意外に思われるかもしれないが、実は日向坂46がワンマンライブをするのはこれが初めてのこと。今年3月5日、6日には横浜アリーナにてメジャーデビューシングル『キュン』のリリースを目前としたデビューカウントダウンライブを行なっているが、このときはけやき坂46(ひらがなけやき)から日向坂46への改名を挟むことにより、「けやき坂46ラストライブ」と「日向坂46お披露目ライブ」という2つの意味合いを持つ特殊なステージとなっていた。なので、日向坂46としてのシングルデビューを境にすると今回のさいたまスーパーアリーナでの3rdシングル『こんなに好きになっちゃっていいの?』発売記念ワンマンライブが、日向坂46として初めてのワンマンライブということになるのだ。

 けやき坂46時代は2017年春に始まった初の全国ツアー以降、ライブで地力を底上げし続けていた印象の強い彼女たち。特に2018年は年初と年末に各3公演にわたる日本武道館単独公演を実現させており、きゃりーぱみゅぱみゅとのツーマンライブを含めると昨年だけで7回も武道館のステージに立ったことになる。これは昨年1月に7DAYSライブを敢行した水樹奈々にも匹敵する数字だ。そんな彼女たちが日向坂46に改名した2019年はツアーなど単独公演をほとんど行わずに、大型フェスやイベントへの出演のみでこの夏を過ごしたことに疑問を感じていたファンも少なくなかったのではないだろうか。もっとも、その理由は本公演の終盤にメンバーの口から明かされるわけだが……。

 そんな疑問を抱える中、このライブに臨んだ筆者だが、ことライブパフォーマンスの実力や熱量に関してはまったく心配していなかった。この3月以降、いくつかのイベントで彼女たちのパフォーマンスを目にしてきたし、8月25日には横浜アリーナで開催されたアイドルフェス『@JAM EXPO 2019』にも足を運び、改めて彼女たちの実力と成長ぶりを目の当たりにしたばかりだったからだ。このステージでは2枚のシングルに収録された楽曲のみならず、けやき坂46時代の「NO WAR in the future」もパフォーマンスされており、改名後も特にけやき坂46時代の楽曲を封印することなく披露していくのだという強い意思を感じ取ることができた。

 しかし、そういった予備知識があったにも関わらず、たまアリワンマンでの1曲目「ドレミソラシド」からその存在感の大きさに圧倒させられた。単独公演の数こそ極端に減ったものの、それ以外の仕事が増えたことによりメンバーに蓄積されていく知識や経験が昨年まで以上のものがあり、そういった要素が彼女たちを日々レベルアップさせ続けている……そんなことを、この1曲から感じ取れた。ステージでの佇まいからは、自らのことを二軍と卑下していた初期のイメージはもはや微塵も感じられない。それは2期生や3期生といった後輩たちの加入もプラスに作用しているはずだし、後輩たちに背中を見せることで責任感を持ち始めた1期生の自覚や覚悟も大きく影響しているのだろう。いやはや、すごいアイドルグループに成長したものだ。

 それともうひとつ、「ドレミソラシド」という楽曲自体についても言及しておきたい。この曲はデビュー曲「キュン」で示したハッピー路線を踏襲した、いわば“ダメ押し”的な楽曲であり、けやき坂46時代の彼女たちが放っていたもうひとつの魅力、“がむしゃら感”や“ひたむきさ”とは異なるものだった。そういった要素を好む筆者のようなリスナーからは、「同じ路線で2枚続けなくても……」という声も挙がったのかもしれない。しかし、先の横アや今回のたまアリのような数万人規模の会場で「ドレミソラシド」が大音量で鳴らされたとき、自宅や携帯プレイヤーで聴いていたときには感じられなかった壮大さと開放感が味わえたのだ。なんだろう、この突き抜ける感覚と何にも代え難い幸福感は……そう、実はこれこそがこの楽曲の醍醐味なのだと、筆者はこの2公演で気づかされた。「ドレミソラシド」は「キュン」の二番煎じなんかじゃない。急激なスピードで成長を続ける日向坂46の“今”にふさわしい、数万人規模の会場で歌われることを最初から想定して制作されたものだったのだ、と。つまり、それくらいの楽曲でないと今の彼女たちを最高の形で、完全に伝えきることができないのかもしれない。

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