『シャーロック』主題歌「Shelly」から読み取る、DEAN FUJIOKAとR&Bの可能性

 フジテレビ系で放送中の月9ドラマ『シャーロック』が好評だ。世界一名の知れたミステリー小説『シャーロック・ホームズ』を題材に、自由気ままな犯罪コンサルタントのシャーロックこと誉獅子雄(ディーン・フジオカ)と、精神科医の経歴を持つワトソンこと若宮潤一(岩田剛典)が、対立しながらも絶妙なコンビネーションで事件を解決していく。幅広い層を惹きつけるスリリングな脚本もさることながら、ディーン・フジオカがDEAN FUJIOKA名義で歌う主題歌も今、SNSを中心にジワジワと人気を上げている。

DEAN FUJIOKA「Shelly」

 「Shelly」と名付けられたその楽曲は、半ば殺伐とするドラマのトーンをたちまち浄化していくようなスウィートこの上ないバラード。曲中にも幾度となく登場する「Shelly」とは、シャーロック=誉獅子雄が運命の女神として特別視する女性を指しているらしい。”らしい”というのは、それがDEAN独自の工夫だから。事件解決のプロにして、罪への衝動も抱える獅子雄の人物像に、あえてロマンティックな性格を肉付けする。そうやって知られざるストーリーを膨らませることで、ドラマをより立体的に盛り立てたいという彼の意図があったのだ。結果、美麗なテーマソングと化したそれは、「掴みどころのない獅子雄にも実は純朴な一面が隠されているのでは」と視聴者に期待させる”含み”の役割を全うすることとなった。

 そして、メロウな調べが好物である身としては、その音楽性にも注目せざるを得ない。ウィスパーを重んじる柔和な歌い回し。プリミティブながら上品なグルーヴをもたらすトラック構造。かと思えば、フェイクと重厚なシンセ音によってドラマティックな転換を迎える終盤……まさしくこの楽曲は、現行R&Bのメソッドを随所で鮮やかに活かしたキラーチューンでもある。昨年大ブレイクを果たしたElla Maiをはじめ、Summer Walker、Joji、H.E.R.、ここ日本でもSIRUPや向井太一、TENDREなど、チルの精神を胸に刻むアーティストは数多いが、この「Shelly」を聴くにつけ、DEAN FUJIOKAにもそうしたポテンシャルが備わっているのだと妙に納得させられる。過去のインタビューでは「Jhené Aikoが好き」と語ったこともあるDEANだけに、少なくともR&Bをインプットする姿勢は日常の上でごく自然と養われているのだろう。この「Shelly」のプロダクトに関して言えば、世界的ヒットも記憶に新しいKhalidの「Talk」との近似性が強く見受けられ、聴けば聴くほど音と音を繋ぐ独特な”間”が心地よく響いてくること必至だ。

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