辰巳ゆうと×歌広場淳 特別対談:演歌とヴィジュアル系に関する本音トーク 表現の仕方に共通点も発見?

辰巳ゆうと×歌広場淳 特別対談

 希代のイケメンハンターのハートを撃ち抜いたのは、若き大学生演歌歌手だった--。エアーバンドでお馴染みゴールデンボンバーの歌広場淳と、演歌界の期待を一身に担う21歳の辰巳ゆうと。異色の出会いは、ジャンルを超えてどこまでも、互いのルーツや嗜好、演歌とヴィジュアル系の共通点、そして辰巳ゆうとが12月25日にリリースした『辰巳ゆうとファーストアルバム -力いっぱい、歌いました!-』について、同席のライターが合いの手を入れる暇もなく盛り上がった1時間。両者が本音をぶつけあう、奇跡のクロストークをご堪能あれ。(宮本英夫)

歌広場淳がズバリ聞く、演歌の魅力とは?

歌広場淳(以下、歌広場):僕はイケメンが好きなので、普段からアンテナを張るようにしているんですけど、自分の好きなものにしか目を向けていなかったことを辰巳さんに気付かされたんですよ。つまり演歌というジャンルをよく知らないまま、歌番組で共演(NHK総合『うたコン』)させていただいたことをきっかけに辰巳さんを知って、「この人は凄いぞ」と思った。そこからいろいろ調べて、『めざましテレビ』(フジテレビ系)で毎月1回担当している「イケメン手帳」のコーナーで、僕が一方的に名前を挙げさせていただいたんです。ちなみに、ゴールデンボンバーのことはご存じでした?

辰巳ゆうと(以下、辰巳):もちろんですよ! 中学生の頃に「女々しくて」が大ヒットして、カラオケに行くと絶対に誰かが歌うし、今でもみんなで盛り上がって歌います。今日、ご一緒させていただくのがすごく楽しみでした。「テレビで見てた人だ!」という感じです。

歌広場:僕は、辰巳さんに聞きたいことがたくさんあるんです。ベタなところからスタートすると、なぜ演歌歌手になられたんですか?

辰巳:じいちゃんとばあちゃんが演歌が大好きで、おむつをしてる頃からカラオケ喫茶に連れて行かれて、3歳ぐらいの頃から自分もマイクを持って歌っていたんです。その頃から演歌を聴いていて、自然に演歌歌手になりたいと思って今に至ります。

歌広場:周りの環境の影響で、演歌以外を知らずに来てしまったと。

辰巳:そうですね。保育園の頃とか、同級生はみんな演歌を聴くものだと思ってました。

歌広場:それがどのタイミングで、「あれ? もしかしてみんなは演歌を聴かない?」と思ったんですか。

辰巳:小学生の時に、自分が普通に演歌の話を友達にしても、誰にも共感してもらえず、初めて「みんなは演歌を聴いていないんだ」ということを知りました。

歌広場:僕も子どもの頃から「どうやら僕は人と違うようだ」と思っていたんです。幼少の頃から、周りの子が短パンを履いている中、僕は長ズボンに飾りが付いていたり、ボタンがいっぱい付いているほうが嬉しかった。僕は小さい頃兵庫に住んでいて、電車に乗るたびに宝塚歌劇のポスターを無意識にずっと見ていたので、キラキラしたものが好きだという感覚を植え付けられたみたいなんですね。それが音楽にも繋がって、スピッツさんやミスチルさん(Mr.Children)が流行っている時に、MALICE MIZERさんやSHAZNAさんなどヴィジュアル系を自然に目で追うようになっていたんです。

辰巳:そうなんですか。

左:歌広場淳、右:辰巳ゆうと

歌広場:今回の対談のお話をいただいた時に、お互いに小さな頃から好きな曲が全然違って、お互いに全く知らないジャンルの2人が話すのは面白いことがあるんじゃないかと考えていました。辰巳さんは、「演歌って何ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?

辰巳:「これが演歌だ」という正解はないんじゃないかと思います。でも、歌い方だとコブシ回しに特徴があったり、歌詞の内容が日本の風景や日本人の心を歌うジャンルなのかなと思います。

歌広場:ヴィジュアル系も、それっぽくメイクをすればヴィジュアル系に括れるけれど、厳密にはよくわからないんですよね。辰巳さんとお会いするにあたって、演歌のことを調べてみたんです。今「コブシ回し」とおっしゃいましたけど、僕はコブシって、力を入れてコブシを握るように、情感たっぷりに歌うことだと思っていたんですよ。でも調べてみたら、小さな節と書いて小節(こぶし)だという、そんなことすら知らなかった。演歌は、“好きな人には当たり前のことだけど、知らない人は全く知らない”ということが多いジャンルだと思いました、その点がヴィジュアル系にも共通している部分かもしれません。

辰巳:確かに、僕もヴィジュアル系の言葉などはわからないことが多いと思います。

歌広場:「咲く」とか言われても、意味わかんないですもんね(笑)。辰巳さんは、小さな頃から演歌を歌ってきて、同年代とは話が合わないということがずっと続いてきたんですよね。

辰巳:そうですね。なので、同年代の前では(演歌について)話さなかったです。特に思春期の時は恥ずかしくて……人と違うことをしているとバレたくなかったし、聞かれたくもないし、小中学校の時は周りに何も言わなかったです。

歌広場:それでも演歌が好きで、その道を歩み続けて、演歌歌手になったきっかけというのは?

辰巳:中学1年生の時に、今の事務所のカラオケ大会に出場して、そこで声をかけていただいたんですけど、それがなかったら歌は辞めていたと思います。それがあったから、もしかしたら自分の夢が叶うかもしれないと思ったし、このまま続けていればいいことが起きるかもしれないと思って、レッスンを受けていました。

歌広場:当時、一番好きだった演歌歌手はどなたですか。

辰巳:僕は当時からずっと氷川きよしさんに憧れています。氷川さんがデビューされたのは僕が2、3歳の頃で、小学校に上がる前からコンサートを観に行っていました。当時、演歌シーンにおいて、氷川さんの存在が僕にとってすごく衝撃的でした。大御所の先輩ばかりをテレビで見ていましたが、氷川さんが現れてからはお兄ちゃんを見ているような感覚で当時の自分も見ていたと思います。

歌広場:僕は、まず辰巳さんを見て、第一印象がイケメンというところから始まって、後から歌を聴いた時に「うまっ!」と思いました。失礼な言い方ですが、辰巳さんご本人にまずとても興味があるんです。なのでたくさん質問してしまってますが……演歌歌手以外で影響を受けた人はいますか?

辰巳:ありがとうございます(笑)。演歌以外で言うと……ゴールデンボンバーさんには勝手に影響を受けています。これ、本当なんです。

歌広場:えー!?

辰巳:「今日は何をしてくれるんだろう?」という期待を持つと、楽しい気持ちが倍増するじゃないですか。自分のステージを見に来てくださるお客様にもそう思ってもらいたいので、ゴールデンボンバーさんの動画を見て、参考にできることがないかな? と模索しています。

歌広場:参考になるかなあ……(笑)。ゴールデンボンバーの場合は、「本来、楽曲披露というのはこうやってやるものですよ」というものを崩すことが面白いんだと思うのですが、演歌は崩し方が難しいし、お約束が多いジャンルだなと感じることもあります。そろそろ話をディープな方向に持って行きますけど、僕は前から思っていたんです。なぜ僕は演歌を聴かないのか? と。これを言ったら、演歌が好きな方たちにものすごく批判を浴びるかもしれないんですが、演歌で歌われているものは、いまいち僕が共感しにくいものが多いなと思ったんです。もっと言うと、今の日本にはない感覚と言いますか、たとえば「旅の宿」という言葉が演歌に出て来るとして、僕は「旅の宿」と聞くとアパホテルしか浮かんでこない(笑)。でもたぶん、歌っている内容はそんな旅の宿じゃないですよね。

辰巳:違うと思います(笑)。

歌広場:あと、たとえば「手編みのマフラー」という歌詞があるとしても、感覚の変化が時代とともにあるためか、共感できない部分が多いんです。

辰巳:でも、僕も演歌を歌っていて、正直何を歌ったことなのかわからない歌詞もいっぱいあります。演歌には遠回しな言い方が多いイメージがあって、たとえば「おとこの純情」という僕の歌は、〈恋が破れりゃ誰でもつらい〉から始まるんですが、言葉の言い方が遠回しじゃないですか。

辰巳ゆうと - おとこの純情 (Short Ver.)

歌広場:簡単に言うと「フラれてきつい」ですかね(笑)。

辰巳:それを遠回しというか、日本人らしい言い方で描いているのが演歌なのかな? という気はします。

歌広場:なるほど。表現の奥ゆかしさが、わかりにくさに繋がっているところはあるのかもしれない。でも演歌は、それを歌詞とセットで楽しむものなんですよね。辰巳さんのように若い方が演歌を歌う時の、いい点と悪い点は何があると思いますか?

辰巳:若さのある歌声は今しか出せないので、それは自分の強みになっていると思います。パワフルなステージは、今の年齢だからこそできることですし。でも悪いことというか、まだまだだなと思うことは、やっぱり若い分、難しい歌詞の意味を表現するには、人生を積み重ねてきた先輩方には敵わないなと思うので、難しいと感じることがありますね。

歌広場:〈恋が破れりゃ〉って歌うけど、破れてなさそうだもの(笑)。

辰巳:演歌にはバッドエンドが多くて、ハッピーエンドの曲が少ないんです。それに、「恋人と別れてどこかへ一人旅に出ます」という内容の歌の移動手段は大体船なんです。飛行機はなかなか出てこないですね。

歌広場:そうそうそう!(笑)

辰巳:なぜか船に乗ったり、なぜか北に行きたがるんですよ(笑)。

歌広場:人間の本能的に、一人旅は寒いところに行くんですかね(笑)。でもそれがお約束になっているんですよね。

辰巳:その哀愁こそが演歌の魅力なんだろうなと思います。

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