斎藤工 × 窪田正孝=犬猫バディの萌えポイント 『火村英生の推理』が描く“ちぐはぐな絆”に迫る

 3月20日に最終回を迎えるドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(日本テレビ)。斎藤工と窪田正孝という、旬の俳優二人の共演作品である。しなやかに役を演じることに定評があり、体育会系というよりむしろ物憂げなタイプである両者が演じたホームズ&ワトソン。ふたりのキャラクターは、第6話で斎藤工演じる火村英生が、窪田正孝演じる有栖川有栖を「まるで警察犬だな」と称し、なおかつ自身を「俺は猫派だ」と言っていたように、火村は“猫系男子”、有栖は“犬系男子”として描かれているのが特徴的である。

 そのキャラクターの差異ゆえに、ふたりの間には親しみがありながらも微妙にかみあわない距離感が存在していた。しかし、そんな二人の絆の深さを感じさせる描写も要所にあり、その絶妙な関係性が、よりドラマを味わい深いものへと盛り上げていた。

 火村英生は、つかみどころのないミステリアスな男である。犯罪社会学の准教授で、「フィールドワーク」と称して殺人事件の調査を行う彼は、見事な観察力と推理力で事件を解決してみせるが、「この犯罪は美しくない」「人を殺してみたいと思ったことがある」など、奇異な発言を繰り返し、マイペースな態度や行動で周りを振り回すこともしばしばだ。ただ、腐れ縁の友人・有栖に対しては唯一心を許しているようで、旅館にいる有栖に「俺も泊まりに行っていいか」とせがむなど、甘えているかのような描写もあった。周りを気にせず思うまま我が道を行きつつも、近しい相手には寄り添おうするときがある、そんな彼は、動物にたとえるならまさしく猫だろう。

 一方、有栖川有栖は、関西弁がトレードマークのミステリー作家で、火村に比べれば常識的で関西人的なサービス精神もあるキャラクター。火村の助手として事件が起きると後ろからついていき、ちょこちょこと動き回っている姿がまず犬っぽさを感じさせる。また、火村と軽口を叩き合いながらも、一方、現場で火村の指示に忠実に動き、何かと誤解されやすい火村のフォローをするなど、火村の一番近くで助けて守る、いわば番犬のような役割も担っており、そのあたりもまさに犬系男子である。ちなみに、第8話で吠える番犬に有栖が吠え返す…という一コマもあった。

 元来、相容れない猫と犬が、飼い方や育ち方次第で不思議と仲良く共存する…ということがまれにあるようだが、火村と有栖も基本的にはタイプが違うだけに、親友といっても、一心同体的なそれではなく、好意の表し方、その受け取り方はどこかちぐはぐだ。甘えたそぶりを見せる火村を有栖がやさしく包み込むわけでなし、助手として支える有栖に火村が面と向かって感謝をするわけでもない。しかし、一緒に様々な事件を解決してきた二人の間に友情と絆があるのもまた確かであり、それを端的に表していたのが、第4話で一緒に朝食をとるシーンだといえる。有栖の家に泊まった火村が、次の朝に朝食を準備し、「新婚家庭の朝食やないか」(有栖)「俺も新妻になったような気がしている」(火村)と、二人はテーブルをはさみしばし夫婦のように見つめあう。その後、「あんまり見つめるな。新婚ごっこはおしまいだ」(火村)「あほか」(有栖)「冷める前に食え」(火村)と軽口を叩き合うが、ともにぶっきらぼうな中にもかすかに温かみがあるやりとりであり、有栖のために朝食を作った火村と、本心では決してまんざらではない有栖が、はっきり言わずとも心の奥底に友情を抱いているのを感じさせる場面だった。

 そして、火村にとって有栖がかけがえのない存在であることが明確に描かれたのが、第9話である。この回、火村は、「有栖以外に助手を必要と思ったことは一度もない。俺の助手はあいつだけでいい」と断言。その後、有栖が拉致されたことを知ると、「必ず有栖を連れて帰る」と宣言し、彼を救うために走った。火村が有栖を必要としており、二人の間に確かな絆があることがくっきりと映し出された回だった。

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