『勇者ヨシヒコ』のパロディ表現はどこまで攻める? テレ東深夜ドラマの可能性

『勇者ヨシヒコ』がヒットドラマになった理由

 金曜深夜に放送されている『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)が毎週攻めた内容で話題となっている。

 『勇者ヨシヒコ』は、今回で3作目となる人気シリーズ。某国民的RPGのパロディとなっている本作は毎回、世界を滅ぼさんとする魔王を倒すために旅立った勇者ヨシヒコ(山田孝之)が、もみあげが印象的な戦士ダンジョ-(宅麻伸)、父の敵と勘違いして命を狙う内にヨシヒコと同行するようになったムラサキ(木南晴夏)、くだらない魔法しか使えない魔法使いのメレブ(ムロツヨシ)の三人と冒険し、行く先々の村々で毎回おかしな事件に巻き込まれるという展開となっている。

 脚本・監督を担当する福田雄一は、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)などのバラエティ番組の構成や、映画監督やドラマの脚本家、演出家として活躍。近年は深夜ドラマを拠点に作品を多数発表しており『勇者ヨシヒコ』シリーズ等の作品では、全話の脚本と演出を担当している。映像で“笑い”を見せることは、脚本の意図を役者と演出にしっかり伝わらないと難しいものだが、福田は全話の演出と脚本を担当することで完成度の高い濃い作品を生み出している。

 ファンタジーRPGの世界を本気で映像化したら、予算がいくらあっても足りないが、本作は低予算を逆手にとって、ハリボテで作ったモンスターをチープなビジュアルで見せている。そのギャップ自体が優れたギャグなのだが、結果的にファミコンやスーパーファミコンの頃のドット絵のキャラクターが動いている時の感触を実写で追体験しているように感じるのが面白いところだ。

 当時のゲームは今のようなフルCGではなかったが、簡略化されたキャラクターがちょこちょこと動いている姿の向こう側に壮大な物語を見ていて、プレイヤーが脳内で補完していた。『勇者ヨシヒコ』を見ていて思い出すのは、ファミコンをやっていた時の懐かしい感覚で、これは予算をかけてリアルに作り込んでいたら逆に味わえなかった喜びではないかと思う。また、低予算を謳っているが、役者は深夜ドラマにしては豪華。毎回、襲いかかってくる盗賊役も今回の第一話では菅田将暉が登場しており、毎回、意外な俳優が登場するのも隠れたみどころだ。

 過去作でもドリフやAKB48がネタにされており、RPGのお約束を借りて様々なパロディを展開している本作だが、今回は特に攻めている。第三話ではエフエフの村をヨシヒコが尋ねるのだが、そこで出会うヴァリー(城田優)が、派手な服装でカッコいいポーズを決めている。これはもちろん国民的RPGと双璧をなす『ファイナルファンタジー』シリーズのパロディである。他にも『モンスターハンター』等の世界が登場し、違うゲームの世界にヨシヒコたちが紛れ込むギャップがギャグとなっているのだが、一番笑ったのが、ある世界から戻ってきたヨシヒコが、あるゲームの主人公を模した赤い服を着ていたため、モザイクがかかっていて姿が見えなくなる場面。ここでは、ゲームのパロディであると同時に、ドラマにおける版権処理の問題がギャグにされているのだ。

 さらに驚いたのは先週放送された第五話である。ダッシュウ村を訪れたヨシヒコ一行は五人組の若者たちと知り合う。若者たちはバンドがやりたいのだが、ニッテレ―という魔物の呪いによって農作業に従事するようにされていた。ニッテレ―を退治するためにヨシヒコ一行は、四人の神々に助けを請おうとするのだが、神様はそれぞれシエクスン(CX,フジテレビ)、テレアーサ(テレ朝)、テブエス(TBS)テレート(テレ東)となっており、各テレビ局を象徴する姿となっている。

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