『ドクターX』『相棒』『科捜研の女』……テレ朝ドラマ好調の理由は“長さ”にアリ?

 『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)が絶好調だ。毎回平均視聴率が20%(関東地区)を超えている。米倉涼子が演じるフリーランスの外科医・大門未知子が毎回、難しい手術を成功させる爽快感が人気の秘訣だが、朝ドラ以外のドラマが視聴率を取れなくなっている中、これは快挙と言っていいだろう。

 『ドクターX』だけでなく『相棒』と『科捜研の女』といったテレ朝のドラマは安定した視聴率を誇っている。この三作に共通するのは、一話完結の事件モノであることだろう。そのため、毎週見てなくても気軽に楽しめる敷居の低さが人気の秘訣という分析も可能だが、それだけなら他のテレビ局も事件モノを多数制作しており、決して突出した特徴ではない。その中でテレ朝のドラマに大きな特徴があるとすれば、その“長さ”にあるのではないだろうか。

 『ドクターX』はSeason4、『相棒』はSeason15、『科捜研の女』はSeason16、春に放送された『警視庁捜査一課9係』はSeason11といずれもシリーズ化されている。こう書くと、高視聴率を取った結果として長期シリーズ化したのだ。という結論になりそうだが、実はこれは、順番が逆なのではないかと思っている。

 例えば、『相棒』は、土曜ワイド劇場でスペシャルドラマが放送された後、Season1が放送されたのだが、Season1の平均視聴率は13.1%(関東地区)と当時としては決して高いものではなかった。しかし『相棒』はシリーズ化され毎年2クールのドラマが制作されていった。その一方で再放送を繰り返すことで視聴者の認知を高めていき、シリーズを重ねるごとに視聴率が上向いていった。

 一話完結の事件モノとしての完成度の高さが『相棒』の面白さだが、もう一つの面白さは主人公の杉下右京を中心とした警察組織内での人間ドラマにある。これは『ドクターX』も同様で、毎回、難しい手術を成功させる大門の物語と、大学病院内での『白い巨塔』的な派閥抗争のドラマが同時に進行していく。この二つの物語が走っていることがテレ朝ドラマの魅力なのだが、長期シリーズ化したからこそ、後者の組織内の複雑な人間模様を描くことが可能となったのだと言えよう。

 また、シリーズ化が進むと登場人物が視聴者といっしょに年を取っていくという現象が起こる。わかりやすいのは『北の国から』(フジテレビ系)だが、当初は子どもだったキャラクターがシリーズを重ねるごとに成長し、いつの間にか大人になり、結婚するといった過程を親戚の子どもの成長を拝むように楽しめる。『相棒』は子どものレギュラーがいないので、『北の国から』のようなわかりやすい変化は見えにくいが、右京の相棒が入れ替わったり、レギュラーキャラクターが入退場したりといった紆余曲折が繰り広げられている。その流れを追っていくと“相棒サーガ”としか言いようのない大河ドラマが見えてくる。

 テレ朝のドラマは「いつも同じことをやっていて、マンネリだ」と言われることが多い。しかし、連続ドラマは長ければ長いほど本領を発揮するのではないかと思う。逆に言うと、今の1クール(10話)のドラマでは、ドラマ内の基本的な人間関係ができあがった時点で放送が終わってしまう。しかし、シリーズを重ねていくと、人間関係や状況設定はすでにできあがっているので、様々な要素を重ねていくことができる。

 短い時間の中で完成度の高い物語を展開するのであれば、映画には絶対に勝てない。しかし、繰り返しの日常の中で少しずつ変化していく物語をドキュメンタリーのように描くのであれば、視聴者と同じ時間の流れを体感しやすいテレビドラマの方が面白いものが作れる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる