『逃げ恥』“百合ちゃん”が年齢や性別を超えて支持されるワケ 「自由に生きる、美しくなる」説得力

『逃げ恥』“ゆりちゃん”が共感される理由

 今年のナンバーワン・ドラマとの呼び声も高い『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)。先週6日に放送された第9話では、津崎平匡(星野源)と森山みくり(新垣結衣)が思いを告げ合い、恋人同士としての関係性を歩み始めた一方で、みくりの叔母・土屋百合(石田ゆり子)の“働く女性”事情にもスポットが当てられ、大きな話題となった。特に百合が涙ながらに語った、「私みたいなアラフィフの独身女だって、社会には必要で、誰かに勇気を与えることができる。『あの人ががんばってるなら、自分ももう少しやれる』って。今、1人でいる子や、1人で生きるのが怖いっていう女の子たちが、『ほら、あの人がいるじゃない、けっこう楽しそうよ』って思えたら、少しは安心できるでしょ。だからあたしは、かっこよく生きなきゃって思うのよ」とのセリフは、多くの人々の心を打ったようだ。

 SNSでは、石田ゆり子に共感する声が続出し、ツイッターの検索ランキング上位に「石田ゆり子」が入るほどだった。なぜ彼女の役柄は好感を得たのか。テレビドラマに詳しいライターの須永貴子氏に話を訊いた。

「SNSでよく指摘されていたことですが、石田ゆり子さんの世代は、86年に男女雇用機会均等法が施行されて、社会に出て働くようになった第一世代なんですね。そして彼女たちこそが、“女性は家庭に入って子どもを産むのが一番の幸せ”という旧来の価値観とは異なる、新たな生き方を模索し、築き上げてきた。だから、百合が勤務する会社(ゴダールジャパン株式会社)のブランド・Epinalのイメージ“自由に生きる、美しくなる”には重みがあります。美しいから自由なのではなくて、自由に生きるからこそ美しくなるという考え方は、ともすれば理想論になりそうですが、石田さんはそれを説得力を持って演じました。自由というと若者の特権みたいな印象があるけれど、それを変えてきたのも彼女たちなんです。9話で上司を説得するシーンでは、通常のドラマだと啖呵を切ったりするところだけど、彼女は落ち着いたトーンで大げさにならない演技を披露しています。そのスマートさこそが、“自由な美しさ”なのでは」

 独身のアラフィフ・キャリアウーマンというと、ドラマではヒステリックだったり、豪快なキャラクターとして描かれることも少なくない。そうしたステレオタイプなイメージに捉われないキャラ設定も、好感を持たれる一因だと話す。

「百合は自分の仕事にプライドを持っていて、ブランドイメージと自分自身も一致しています。他人の評価を気にするのではなくて、ちゃんと自分の生き方を肯定できているのが、すごく良いですよね。自家用車を持っていて、好きな時に好きなところに行ける感じとか。適切な自尊感情があって、自分のことを卑下していないし、かといって周囲より優れているとも思っていない。身の丈にあった生活を楽しんで、みくりに対しても上から目線で働くことを勧めたりもしない。石田さんが本来持っている、ニュートラルな魅力を活かしたキャラクターだといえるでしょう」

 また、どんな世代でも共感できる価値観を提示したところが、百合が支持される一番の理由ではないかと、須永氏は続ける。

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