天海祐希の心が丸裸に? 井上由美子脚本『緊急取調室』今夜最終回! 

 シーズン1に引き続き、天海祐希と名バイプレイヤーズが対峙する悲しい事件と悲しい犯人たちに目が離せなかったドラマ『緊急取調室second season』が本日最終回を迎える。

 前クールのテレビ東京の深夜ドラマ『バイプレイヤーズ』に出演していた大杉漣に対して、最終回ゲストとして登場した天海祐希が「キントリ」と口にするシーンを懐かしく思い出すが、大杉漣にでんでん、小日向文世、田中哲司、鈴木浩介、さらに天海の夫役と前回から逃亡中の犯人役の2役を演じる眞島秀和と、オジサマ好き、バイプレイヤーズ好きには堪らない布陣であったと言えよう。

 天海祐希演じるヒロイン真壁有希子のかっこよく、冗談を飛ばしながらも真っ直ぐに相手と向き合うキャラクターは、見ていて本当に気持ちがいい。そして彼女がまれに垣間見せる弱さもその魅力のひとつなのであるが、それを気遣いフォローする男たちもまた、実に魅力的だ。

 シーズン1よりもさらにチームワークの良さが増し、冗談を言い合い、まれに対立、もしくは対立したフリをしながらも、熟練の技で有希子を支えるキントリオジサマ3人衆の魅力。丁々発止のやりとりを繰り広げる一方で、誰よりも有希子を気遣い、守ろうとする、田中哲司演じる梶山管理官と有希子の絶妙な関係も気になるところだ。また、やたら仲がいい捜査一課名コンビの鈴木浩介と速水もこみちが、当初対立していたはずのキントリチームのほとんど一員になっているところも心が和む。

 だが、なによりこのドラマの魅力は、一見普通に見える人がなぜその事件を起こしたのか、その動機を1時間かけて追求する骨太な人間ドラマとしての性質だろう。ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』や『お母さん、娘をやめていいですか?』の井上由美子脚本だけに、このドラマにおける女性たちの姿は特筆すべきものがある。

 第1話での三田佳子演じる、嫌われ老女の孤独と恋心、そしてその美しかった過去と現在を繋ぐ哀しいトリックは、三田の演技の迫力と共に衝撃的だった。矢田亜希子が犯人を演じた第4話は、相聞歌にちなんだ教師と生徒との間のロマンチックな色恋のもつれに見せかけて、過酷すぎる人生を送ってきた彼女の「愛」という名前を巡る復讐劇だった。6話で鶴田真由が演じ、有希子をも揺らがせた、女を惑わせる魔性の女は、人の孤独につけこむ以前に、何より自分が一番孤独だった。7話で描かれた、弁当のおかずを分け合う仲の職場の同僚たちの結託と、それぞれに隠し持っていた見栄やプライドも、女性ならではの集団における友情と一括りにできない感情を思い起こさせるものだった。

 そして、これまで彼女たちを“マル裸”にしてきた有希子が、今度は彼女自身の過去ごと揺さぶられるのが、先週放送の8話から最終話の9話に続く事件である。今回の犯人は、なぜか喪服を着たふたり組。事件は最初から、ふたつの過去を思い起こさせるものであった。ひとつは、ニセの放火の通報という事件の発端によって、5年前の放火殺人事件関係者たちの過去を呼び覚まし、そしてもうひとつは、夫とうりふたつの人間が警官を襲うという事件の発端によって、警官だった夫を殺された過去を持つ有希子の過去を呼び覚ます。

 8話では、鶴見辰吾演じる氏名も年齢もわからない、取調室で黙秘を続ける男と、眞島秀和演じる、拳銃を盗み逃亡を続ける男の正体が明らかになった。彼らはそれぞれ5年前に起きたストーカー放火殺人事件の被害者と加害者、それぞれの父親だったのだ。彼らは、事件関係者を連続して襲い、その冤罪疑惑を浮上させることで警察組織全体を揺らがせていく。父親ふたりが結託して事件を起こさずにはいられなかった理由はなんなのか。鶴見と眞島、ふたりの熱演も見所である。

 8話のラストシーンにおける、動揺していないと言いながらも夫と同じ顔をした犯人を前に、動揺と躊躇を隠せず被弾し、くずおれる有希子を演じる天海の美しさと、「真壁」と叫んで駆け寄る管理官の田中哲司、逃げていく犯人を演じる眞島の戸惑いの表情は、秀逸だった。

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