宮崎あおい、蒼井優、二階堂ふみ……「サブカル女優」の分類と、その変化を辿る

 サブカルの定義そのものがより曖昧になっている昨今、厳密な区分けはさておき、人物の特定のタイプを指す「サブカル男子」「サブカル女子」なんて言葉もある。この場合、主に服装や髪型など見た目の雰囲気や趣味嗜好による部分が大きいだろう。

 女優にも「サブカル女優」と言われるタイプがいる。しかし、この場合、同じ言葉でも、そこには大きく分けてふたつの種類があると思う。

 ひとつは、女優本人が「サブカル」なものを愛するタイプ、素顔がサブカル好きというタイプ。たとえば、村八分やスターリン、INUなど、主に音楽の趣味がサブカル感溢れる成海璃子。演技や出演作など、仕事においてサブカル臭は全くないのに、ともすれば「若いのに変わった趣味の人」「不思議ちゃん」にもなりかねないキャラから、おそらく「サブカル女優」として名前が挙がる筆頭だろう。サブカルテイストの作品にも多数出演しているが、やはり演技など仕事面より、本人の素顔にサブカル感ある臼田あさ美などもこちらのタイプか。

 もうひとつは、本人の趣味嗜好はともかく、サブカル系作品に多数出演している・あるいは「サブカル男子」や「サブカル女子」に好かれる女優。筆頭は、麻生久美子。本人いわく「明るく大雑把」な性格や、趣味嗜好・性質にはサブカル感はあまり感じられないが、サブカル作品やサブカル好きには絶大な人気を誇る。おそらく本人の素顔はサブカルからほど遠い“肉食女子”の蒼井優も仕事面でのサブカル女優だ。

 登場するだけでサブカルの空気漂う市川実日子、橋本愛のような例もある。また、二階堂ふみやのん(能年玲奈)など、本人の素顔も、出演作の傾向もともにサブカル色が濃い、ふたつの中間にあたるタイプもいる。また、サブカル女優のイメージが強かったが、メジャー路線に進出し、苦戦を強いられている印象なのが、真木よう子。逆に王道美少女からスタートし、深夜ドラマでエロにも挑戦、サブカル臭を身につけてきた夏帆。多数のCMやドラマ出演など、猛プッシュされた末に、一周回って深夜ドラマなどでイイ感じのサブカル女優として花開いた剛力彩芽などのケースもある。

 サブカル女優を脱皮し、大きくステップアップを成し遂げたのが、宮崎あおいだ。もともとCMや映画を中心に瑞々しい透明感が注目され、朝ドラ『純情きらり』のヒロインとして認知度を上げた後、大河ドラマ『篤姫』で少女から老女まで演じ上げ、「大女優」になった。しかも、宮崎あおいの巧妙さは、大河ドラマによって「あがり」の安定したポジションにいくのではなく、テレビドラマは徹底してNHKにしか出ない(一部除く)ことで、特別感を醸し出してきたこと。それを痛感したのが、NHKのスペシャルドラマ『眩~北斎の娘~』(9月18日放送)だ。

 ビビットな色彩の美しい映像を味方につけ、若い頃から老女まで演じた。すっぴんで挑んだ気合、老女になってからの張り詰めた空気や、鬼気迫る感じの凄味は脱帽モノ。正直、江戸ことばの「べらんめえ」口調は不似合いだし、顔にも肉体にも加齢のリアリティはないし、体臭や温度もあまり感じられない。それでも、宮崎あおいが出ているだけで、なんだか上質なカルチャーの空気になり、圧倒されるものはある。

 ところで、作品やファン層など、仕事における「サブカル女優」には、いくつか共通点がある。ひとつは、年齢不詳なこと。白い肌で、スラリとしていて、体温があまり感じられず、汗もあまりかかなさそうで、時間を超越していそうなこと。加齢にともなうシワや贅肉がなく、人間臭さがあまりないこと。

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