『おっさんずラブ』28歳若手Pが語る、大反響の裏側 「テーマは“働く今どきの男女の恋愛観”」

『おっさんずラブ』若手Pインタビュー

 田中圭が主演を務めるドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が、6月2日ついに最終回を迎える。女好きだけどまったくモテない33歳のおっさん・春田創一(田中圭)、ピュアすぎる乙女心を隠し持つ“おっさん上司”黒澤武蔵(吉田鋼太郎)、春田と同居する“イケメンでドSな後輩”牧凌太(林遣都)を中心とした、おっさん同士の恋愛模様を描いた本作は、初回放送開始後からネットを中心に大きな盛り上がりを見せている。

 今回リアルサウンド映画部では、本作のプロデューサーを務めるテレビ朝日の貴島彩理氏にインタビューを行った。単発ドラマとしてスタートした作品が連ドラ化に至った経緯から、ネットを中心とした視聴者からの大きな反響に対する実感、28歳の若手プロデューサーとしてのドラマに対する考え方まで、じっくりと話を聞いた。

「 “王道の恋愛ドラマ”であることをより強く意識しました」

ーー『おっさんずラブ』は2016年の年末深夜に単発ドラマとして放送されていた作品です。今回、なぜ連ドラ化に至ったのでしょうか?

貴島彩理(以下、貴島):単発ドラマを放送したとき、視聴者の皆様からたくさんの反響をいただいたことが大きかったと思います。想像以上のお問い合わせをいただいて、私たちもとても驚きました。同時にテレビ朝日では、“新しい時代に向けたドラマ”を作っていこうと、2017年の10月から“土曜ナイトドラマ”という新枠が立ち上がった。そのタイミングで、私のような若手にチャンスを与えてくれた会社にも、とても感謝しています。

ーー“土曜ナイトドラマ”の第1弾作品の『オトナ高校』も貴島さんがプロデューサーを務めていたんですよね。

貴島:はい。初めてプロデュースした作品が『おっさんずラブ』の単発ドラマで、『オトナ高校』が連ドラ初プロデュースとなります。深夜に放送した単発作品が連ドラになるというのは奇跡的なことだなと思っていて。2016年版の撮影のとき、現場がとても楽しくて、主演の(田中)圭さんや(吉田)鋼太郎さんとも「またやりたいね」と話はしていたのですが、そのときは夢物語だと思っていて。お2人をはじめ、スタッフ一同、連ドラ化が決まったときは本当に感動しました。

ーー単発ドラマからはキャストや設定の変更もありましたが、どのような背景で今回の形に落ち着いたのでしょうか?

貴島:単発ドラマはひとつの作品としてとても大事にしていたので、“あの続き”を作るべきなのか、それとも“新しい物語”にすべきなのかは、みんなでものすごく悩みました。ただ、単発で描いた“春田とハセの恋”のお話は完結している。連続ドラマとして改めて挑むからには、1時間では描ききれなかった登場人物の過去や成長も深めていきたい気持ちがあったので、続きではなく、設定から一新してまた1から“恋の物語”を作ろうと考えました。

――連ドラ化にあたって最も意識したことは?

貴島: “王道の恋愛ドラマ”であることをより強く意識しました。この作品は企画だけ聞くと、「攻めてる」とか「際どいことをやっている」と思われがち。でも私たちが作りたかったのは、単純に観終わったあとに恋がしたくなるような“純愛ドラマ”だったので。それをまっすぐ伝えるために、音楽も『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)などを手がけた憧れの河野伸さんにお願いしたり、スキマスイッチさんに主題歌をお願いしたりしました。

ーーそもそもこの『おっさんずラブ』の企画は、貴島さんの大学時代のエピソードが基になっているそうですね。

貴島:はい。私は実家暮らしで、洗濯も料理も全然できなくて……(笑)ある日友達の家に泊まりに行ったら、着替えも用意してくれるし、ご飯も作ってくれるし、朝は起こしてくれるし、起きたら朝ごはんが用意されてるし、という状況で。ふと「あれっ彼女と結婚しちゃいけない理由って何だっけ?」と思ったのがこの企画の始まりでした。“同性である”ことを忘れるほど、素晴らしい人が目の前に現れたとき、人はどうするのだろうと。テーマはあくまで“働く今どきの男女の恋愛観”であり「好き、結婚したい、という感情とは果たして何なのだろう」ということ。BLがやりたかったとか、そういうことでは全然ないんです。

ーー田中圭さん、吉田鋼太郎さん、林遣都さんをはじめとするキャストの皆さんの演技も大きな話題になっています。

貴島:本当にキャストの皆さんのお芝居力に支えられているなと心から感じています。現場にいると毎日たくさん発見があって。例えば、第1話で部長(黒澤武蔵)が春田に告白したとき、思わず春田が泣くのですが、台本には泣くというト書きはなくて。でも、圭さんは役を生きていたら自然に涙が流れていたようで……。部長のことを上司としても人としても好きだからこそ、思わず出た涙は、台本にあろうとなかろうと“本物だな”と思って、心動いた瞬間でした。牧役の林遣都さんに関しても「巨根じゃダメですか?」というセリフをどういう気持ちで言えばいいのだろうと悩んでくださった。でも時間をかけて“牧として本気で言える”状態まででディスカッションして、作り上げてくださって。キャッチ―なセリフも、一つひとつの仕草まで、嘘がないようキャストの皆さんが真剣に向き合ってくれたからこそ、大きな反響にもつながっているんだと感じています。

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