10月新ドラマは“2人の中島”に注目! 中島裕翔×中島健人、月と太陽のような演技の魅力

 2018年10月期の新ドラマの中で、興味深い共通点を持つ2作品がある。それは月9ドラマ『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)と、新土曜ドラマ『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』(日本テレビ系)だ。いずれも手練れのナイスミドルと真っ直ぐな青年のバディドラマ、そしてその青年役がジャニーズの中でも演技派俳優として、着実にキャリアを重ねている中島裕翔(Hey!Say!JUMP)と中島健人(Sexy Zone)の“2人の中島”。今期、2作品を通じて見えてくる、俳優としての“W中島”の魅力に迫る。

影をも表現できる素直さが、中島裕翔の才能

 中島裕翔が出演する『SUITS/スーツ』は、海外ドラマ『SUITS』の舞台を日本に移し、リメイクしたもの。主人公の弁護士・甲斐(織田裕二)は、優秀ではあるものの、勝つためなら違法ギリギリの手段も取る、かなり傲慢な性格。感情に惑わされることを嫌い、勝利こそすべてという合理主義者。そんな彼を懸念した上司によって、アソシエイト(パートナーとなる若手弁護士)を雇うことを命令されたとき、見たものを全て記憶する天才的な頭脳を持つ鈴木大貴(中島裕翔)と出会う。だが、大貴は弁護士ではなく替え玉受験で生活費を稼ぐフリーターだった。大貴に興味を持った甲斐と、お金が必要な大貴。2人は一世一代の嘘をつき、バディを組むというストーリーだ。

 かつて『半沢直樹』(TBS系)で入行2年目の若手行員を演じ、イケメンなのにどこか会社にいてもおかしくない感を漂わせた自然な演技で注目を集めた中島裕翔。以来、『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』(フジテレビ系)で新入社員役を、『母になる』(日本テレビ系)で児童福祉司役と正義感の強いキャラクターが、元来彼の持つ性格とリンクし、まさにはまり役となった。『99.9 -刑事専門弁護士- SEASON II 』(TBS系)では、殺人事件に巻き込まれた依頼人として出演し、ドラマのクライマックスを盛り上げた。「とてもスマートで男前なんですが、どこか陰を感じる」とは、映画『僕らのごはんは明日で待ってる』で中島裕翔を主演に、とオファーを出した市井昌秀監督(参照:シネマトゥデイ|中島裕翔の“泣き”の演技がすごいワケ)。市井監督が中島裕翔にリクエストしたのは「背伸びをしない」という点。そして、監督が「ありがとう」と思わず感動したのが涙のシーン。何カットも撮影したにも関わらず、すべて初めて起こることとして、毎回ゼロから泣いていたのだという。

 中島裕翔の演技の魅力をひとことで言うならば、究極の素直さだ。ドラマや映画の撮影現場は、テストを重ね、さらにアングルを変えて、何度も同じシーンを演じることになる。そのたびに新鮮な感情を抱くのは、それだけピュアな感覚でいられるということに他ならない。その素直さは、多くの視聴者と近い視点を生む。クセの強い上司と対峙したときの戸惑い、不条理な現実に直面したときの悲しみ、そしてどうしようもない運命に翻弄されたときの憂い。その誰もが持つ不安定な部分をも素直に表に出せるからこそ、中島裕翔の演技にはどこか“影”を感じるのだろう。

 また中島裕翔自身が、これまで多くの光と影を見てきた経験も演技に生きているようだ。ジャニーズ事務所に入ってすぐに、アイドル雑誌の表紙に登場したり、ドラマに出演するなど華々しいスタートを切った。だが、Hey!Say!JUMPとしてデビューしたころから、急激に身長が伸び、これまでの可愛らしい姿から大きくイメージが変わるという、難しい時期を経験。山田涼介とセンターを交替する挫折も味わった。今では、お互いを唯一無二のライバルだと公言する仲だが、多感な年齢ゆえにデリケートな関係になったこともあった。だが、そうした順風満帆にいかないのが人の世の常であり人間ドラマだ。影と向き合うことで、光の輪郭がよりはっきりする。どんな状況にも果敢にぶつかり、まっすぐな性格を貫き続けていることこそ、中島裕翔の才能だ。

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