伝統の復権と世界市場への挑戦 『紅き大魚の伝説』『ネクスト ロボ』に見る、中国アニメの隆盛

Netflix2作品が象徴する中国アニメ

 世界の映画市場はもはや中国の存在を無視できない。世界の映画産業の中で中国の存在感は年々高まっており、今年の第1四半期の映画興行収入が北米市場を超えたという報道(参照:AFPBB NEWS|中国の映画興行収入、米国抜き世界首位 北米以外で初)もあった。

 アニメーション産業も同様に、中国抜きにはもはや語れない。中国での日本アニメの人気はよく知られているが、中国は熱心なアニメの買い手というだけでなく、いまや制作者でもある。すでに日本のTVアニメで中国企業の名前は日常的に目にするようになっており、中国の大手アニメーションスタジオ、Haolinersは日本支社のスタジオも所有しており、bilibiliもこの流れに追随している。

 Haolinersの代表、リ・ハオリン氏は新海誠監督からの影響を公言しており、今年には、日本のコミックス・ウェーブ・フィルムとの共同製作で映画『詩季織々』を作っている。彼のように、日本のアニメに影響を受けたクリエイターは国内からも続々と登場しており、スタジオ単位で見ても日本アニメのエッセンスやビジネスのノウハウを吸収し、成長している。いまや中国アニメーション産業は、日本にとって大きな競合相手なのだ。量や規模の面だけでなく、質の面においても中国アニメーションの存在感は高まってきている。

『詩季織々』より『陽だまりの朝食』(c)「詩季織々」フィルムパートナーズ

 そんな中国アニメーションの急激な成長を象徴するかのような、2本の作品がNetflixで相次いで配信された。ひとつは『紅き大魚の伝説』、そしてもうひとつは『ネクスト ロボ』だ。どちらも異なるスタイルのアニメーション作品で、今後の中国アニメーションの多方面での躍進を予感させるクオリティだ。2作が提示するキーワードは「伝統の復権」と「グローバル市場への参入」である。

 リャン・シュエンとチャン・チュンが監督を務めた『紅き大魚の伝説』は、2016年に中国で公開された手描き主体の長編アニメーション映画だ。2016年の中国映画市場はアニメーション映画の当たり年だったが、本作はアメリカ製の『ズートピア』や『カンフー・パンダ3』、日本の『君の名は。』などに次ぐ大ヒットを本国で記録。中国産アニメーション映画としては、2015年のフル3DCG作品『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』に次ぐ歴代興行成績を残し、手描き主体の2Dアニメーション映画としては異例の大ヒットとなった。

 共同監督の1人であるリャン・シュエンが見た夢をモチーフにしたこの作品は、自主制作としてウェブ上に公開されたパイロット版から始まり、構想から完成までに12年の歳月を費やしている。途中、資金難などで頓挫しかけたこともあるが、クラウドファンディングなども駆使し、粘り強く制作を続けた。共同監督の両氏にとってのデビュー作であり、22人の長年の情熱が結実した作品と言える。

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