静の有村架純と動の戸田恵梨香 『中学聖日記』『大恋愛』2人のヒロインは恋への勇気をくれる

静の有村架純と動の戸田恵梨香

 この秋の連続ドラマは、理性と倫理観でがんじがらめになって疲れ気味の大人に揺さぶりをかける恋心を描いた恋愛ドラマが好評だ。

 大石静オリジナル脚本で話題の『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)は、若年性アルツハイマーを患う医師・北澤尚(戸田恵梨香)と元小説家の間宮真司(ムロツヨシ)の純愛物語。自分に相応しい婚約者がいながら、真司に惹かれ大胆にアプローチするヒロインの尚を、戸田恵梨香が理性をも吹き飛ばす魅惑的な表情で演じる。

 『中学聖日記』(TBS系)では、非の打ち所がない婚約者がいながらも10歳年下の教え子に惹かれていく教師を有村架純が演じる。どちらのヒロインも仕事に責任を持ち、常識や道徳心を備えて真面目に生きてきた女性だが、純粋な恋の力に心を動かされていく。

 本能に逆らうことなくまっすぐ恋に走る戸田恵梨香と、教え子の素朴で無垢な想いに戸惑う繊細な受け身の演技を見せる有村架純。常識や古い価値観に縛られ、恋愛どころか仕事や人間関係で身動きがとれなくなりそうな私たちに、忘れていた大切な何かを思い起こさせてくれる。奇しくも同じ事務所の先輩・後輩の2人が、王道のラブストーリーを新鮮かつドラマチックに盛り上げる、真逆のタイプの女性を演じる2人が何とも魅力的だ。

『大恋愛~僕を忘れる君と』(c)TBS

 戸田恵梨香が医師の役を演じるとなると、3rdシーズンまで続き、劇場版も大ヒットした『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(フジテレビ系)の緋山美帆子役を思い出さずにはいられない。緋山美帆子は救命救急フェローとして経験を積み、産科医としての専門性を高めるために周産期医療に取り組んだが、本作で彼女が挑むのも婦人科専門、レディースクリニックの医師だ。

 決断力があり、どんどん前に進んでいく強気な女性という共通点はあるが、『大恋愛』のヒロイン尚は、挙式を1ヶ月後に控えた新居への引っ越しの日に引っ越し会社で働く真司と運命的に出会い、恋愛感情を抑えることができなくなる。戸田自身も当サイトのインタビュー記事で「難しい役」だと語っているが、衝動的に真司の家に向かったかと思えば、大胆な言動で彼を翻弄。潔さと繊細さの絶妙なバランスで真司の懐に入っていく。若年性アルツハイマーの症状を自覚するようになって、自分自身とどう向き合えばいいのか、理性では割り切れない局面を迎える。

 ムロツヨシとの息の合った掛け合いは2人を待ち受ける悲劇を前に切なくもあるが頼もしい。『大恋愛』というタイトルに相応しい広がりのある、大きくて強い愛の物語を予感させるのである。

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