『ボヘミアン・ラプソディ』ScreenX版はライヴ・エイドが見せ場に 音楽映画ならではの臨場感

『ボヘミアン・ラプソディ』ScreenX版レポ

 英国が誇るロックバンド、クイーンのボーカリストであるフレディ・マーキュリーにスポットを当てた伝記的映画『ボヘミアン・ラプソディ』が、異例の大ヒットを記録している。アメリカでの公開初週末(11月2日~11月4日)の全米ボックスオフィスランキングによれば、興行収入は約56億円で首位。日本でも9日から公開され、あちこちで絶賛の声が上がっている。

 今から8年前に製作発表されるも、監督や主演の変更が相次ぐなどトラブル続きだった本作だが、いざ蓋を開けてみればまるでフレディの魂が乗り移ったような、主演ラミ・マレック(『MR.ROBOT/ミスター・ロボット』)の熱演を始め、メンバー監修のもとに行われたライブパフォーマンスなどの完全再現、名曲「Bohemian Rhapsody」が誕生する過程など、とにかく見どころが満載。史実と異なるところも多々あるが、それすら鑑賞後の話のネタとなり、リアルタイム世代を中心としたクイーンのコアなファンを唸らせつつ、「クイーン? 名前くらいは知っている」という若い世代の観客をも魅了しているのだ。

 筆者は今回、「ScreenX」が導入されたユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で鑑賞。ScreenXとは、正面にある通常のスクリーンに加えて、左右の壁にも映像を上映することで視界を270°にわたりカバーする上映システムだ。

 中でも最大の見せ場は、やはり『ライヴ・エイド』の完璧な再現である。おそらく『ライヴ・エイド』といっても、若い世代はピンとこない人も多いと思うので、ここで少し説明しておきたい。「20世紀最大のチャリティー・コンサート」と言われた『ライヴ・エイド』は、「1億人の飢餓を救う」をスローガンに「アフリカ難民の救済」を目的として、1985年7月13日に行われたもの。元々は、ブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフが呼びかけ人となり、カルチャー・クラブやデュラン・デュラン、ボノ(U2)らUKのスーパースターが勢ぞろいして、「バンド・エイド」名義でレコーディングされたチャリティソング、「Do They Know It's Christmas?」(1984年)が発端である。

 このバンド・エイドに感銘を受けたのが、マイケル・ジャクソンやボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンらが参加した「USAフォー・アフリカ」。ひょっとしたら、彼らがレコーディングした「We Are The World」(1985年)のほうが、「Do They Know It's Christmas?」よりも有名かも知れない。とにかく、80年代半ばに起きたこの一大チャリティ・ブームの「総仕上げ」という形で行われたのが『ライヴ・エイド』だったのだ。

 メイン会場は、英国ロンドン郊外の「ウェンブリー・スタジアム」と、米国フィラデルフ
ィアの「JFKスタジアム」。開催時間は12時間に及び、計84カ国で衛星同時生中継された。日本でも当時、フジテレビで生放送が行われたが、その番組編成については様々な物議を醸したのは有名な話である。

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