年末企画:小野寺系の「2018年 年間ベスト映画TOP10」 アメリカ映画が刺激的なものに

小野寺系の「2018年映画TOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優・女優たちも紹介。映画の場合は2018年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第4回の選者は、映画評論家の小野寺系。(編集部)

1. 『インクレディブル・ファミリー』
2. 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
3. 『オンリー・ザ・ブレイブ』
4. 『バスターのバラード』
5. 『スリー・ビルボード』
6. 『アンダー・ザ・シルバーレイク』
7. 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
8. 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
9. 『君の名前で僕を呼んで』
10. 『レディ・プレイヤー1』

 2018年に日本で公開された『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、『ヘレディタリー/継承』、『アンダー・ザ・シルバーレイク』など、前年に続きアメリカの制作会社「A24」作品が好調だ。もちろんここで選出した作品のなかにも顔を出している。その多くが監督の持ち味が発揮された、通常なら通りにくいような企画ばかりである。アメリカの大手による大作傾向への反動もあり、作家性の強い作品がどんどん出てきている。

 それは、ここでランクインさせた『レディ・プレイヤー1』が象徴するように、近年よく映画のなかで引用されたり類似傾向を見せていた1980年代の状況を思い起こさせるような構図から、最近は、より作家主義的な90年代型へ移行してきていることを示していると感じ、個人的には歓迎したい流れだ。

 「A24」作品のなかでも突出していたのが『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』だった。貧富の格差がもたらした現在のアメリカの窮状、そして日本を含めた世界共通の悲劇を、カンヌ最高賞を受賞した『万引き家族』同様に描きつつ、それを「夢の国」と隣接させることで、より鮮烈で印象深いものとしている。

 同時に、2018年には大作にも個性的な作品が散見された。まず、天才監督ブラッド・バードによる久しぶりのアニメーション 『インクレディブル・ファミリー』は、かつてのハリウッド映画が持っていたスター俳優による優雅な雰囲気が再現されるとともに、ブラッド・バード監督個人のアニメーションに対する深い理解と演出の力によって、ともすれば安易になりがちな続編を黄金の映画へと変貌させた。そして同時に、娯楽作として観客を大いに沸かせたことも素晴らしい。2018年劇場公開作のなかでは、文句なくトップといえる内容である。

 『オンリー・ザ・ブレイブ』は、アメリカのマッチョな社会と、炎に包まれた地獄の世界を、ジョン・フォード監督の西部劇のように詩情豊かに表現し、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、ヒッチコック映画などへのあらゆるオマージュを、移動撮影のなかで行う離れ技を披露し驚かせるなど、これら変わり種の目論見が、大作のなかでひそかに行われていることが頼もしい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる