『家売るオンナの逆襲』三軒家万智は“時代遅れ”なのか? 松田翔太ら新キャストにみる新たな構造

新キャストから読み解く『家売るオンナ』の魅力

 2016年夏放送の『家売るオンナ』から、2017年5月放送のスペシャル版『帰ってきた家売るオンナ』を経て、遂に続編『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)が始まった。昨年10月期のドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)も好評だった大石静オリジナル脚本のこのドラマ。最初のシリーズからはや2年、社会はどんどん変化していき「マイホーム」を持つことへの欲望自体が希薄になりつつある今日この頃、不動産業界を舞台にしたお仕事ドラマは第2シリーズで何を見せようと言うのか。

 そこで、新しい風そのものを体現するかのように颯爽と登場したのが、松田翔太演じるフリーランスの不動産屋・留守堂謙治である。そして、テーコー不動産の新人2人には、SP版からの出演である草川拓弥演じる鍵村と、長井短演じる床嶋のコンビ。彼らが加わることで、新たに見えてくる構造があった。

 まず、鍵村と床嶋は、第1シリーズにおけるイモトアヤコ演じる白洲美加や、新木優子演じるデスク・室田のポジションと一致するが、それだけではない。「ゲロ勝ち」「了解道中膝栗毛」など、「なんなんだそれは」と仲村トオルじゃなくても言いたくなる言葉を連発する彼らはなにより“若者文化”を語るための役割を担っている。特に梶原善演じる布施と、仲村トオル演じる屋代というおじさんコンビ、そして鍵村と床嶋という若者コンビの2組にそれぞれ「テレビ」と「YouTube動画」の良さを議論させた場面でそれは際立っていた。

 屋代と布施はテレビの信頼性と「独りよがりのたれながし」であるYouTubeを批判し、一方の鍵村と床嶋は逆にそこが魅力なのだと語る。そもそもこのドラマ自体が「テレビドラマ」であることから、その場面は妙な印象を残す。「私たちは古いのか」という問題をさりげなく呈示してくるからである。

 そして、松田翔太演じる留守堂である。北川景子演じるヒロイン・三軒家万智のライバルポジションにあたる留守堂の「家の売り方」は、万智のそれとは違い、穏やかで優しくスマートだ。「世間の目から自分を守ってくれる家」を探す炎上系YouTuberのにくまる(加藤諒)に対し、依頼通りの完璧な家を紹介し、彼の日々注目される苦しみを理解し「お逃げになってもよろしいのでは」と優しく抱きしめる。

 一方の万智は相変わらずの荒療治。にくまるの希望には応えず、逆に家を覆う壁を壊し、「世間の目に晒され続ける家」を作り、彼を焚きつけることで、留守堂の提案する平穏な生活に満足できなくなった彼をおびき寄せる策をとった。本当は世間の注目を浴び続けることにこそ生きがいを感じるにくまるの、本人も気づいていない本質を万智が見抜いたためだ。

 まるで「北風と太陽」の逆バージョンである。暖かく包み込んだ留守堂の策ににくまるはかえって耐え切れず、北風たる万智の策に乗った。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる