『映画刀剣乱舞』は良質な国産ファンタジー “ネオ時代劇”的シナリオが広く支持される要因に?

『映画刀剣乱舞』は良質な国産ファンタジー?

 『映画刀剣乱舞』が公開中だ。本作は、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」が原作。すでにアニメ化、舞台化、ミュージカル化と多彩なメディアミックスを展開しており、昨年末、ミュージカル版のキャストが『第69回NHK紅白歌合戦』に出場。大晦日のお茶の間を華やかに賑わせたことでも話題をとった。ある程度、世の中のトレンドに詳しい人なら、ゲームをプレイしたことはなくても、『刀剣乱舞』という名前自体はどこかで聞いたことがあるかもしれない。

 この『刀剣乱舞』とは何か。改めて原作の世界観を説明すると、簡単に言えばタイムパトロールものだ。舞台は、西暦2205年。歴史の改変を目論む歴史修正主義者が、あらゆる時代に時間遡行軍を送り込み、過去への攻撃を開始していた。その侵略を阻止し、正しい歴史を守るために戦うのが“刀剣男士”たち。彼らは、時の政府により歴史の守護役を命じられた審神者(“さにわ”と読む。ゲーム上ではこの審神者がプレイヤーにあたる)の力で戦士へと姿を変えた、刀剣に宿る付喪神。

 つまり、人の形をしているのが、彼らは刀だ。それも織田信長や坂本龍馬など歴史上の偉人たちが実際に愛用した数々の名刀が登場し、様々な時代にタイムトラベルしては時間遡行軍と合戦を繰り広げる。

 ゲームをプレイしたことのない層からすれば、今回の映画は少し縁遠く感じるかもしれない。だが、たとえゲームに精通していなくても十分に楽しめる要素が本作にはぎっしりとつまっている。なので、今回は初めて『刀剣乱舞』にふれる読者に向けて、映画を楽しむポイントを紹介したい。

和風衣装が似合う有名なスター俳優が集結

 まずひとつ目は、美麗なキャラクターの魅力だ。和をベースにしながらも大胆なアレンジを凝らした衣装。短刀なら愛らしい少年風、槍なら屈強な大男風と、刀の種類に合わせたキャラクターデザイン。と、刀剣男士はビジュアルから個性豊か。和風ファンタジー好きのツボをがっつりと押さえているので、まずはお気に入りのキャラクターを見つけるところから始めてみるのも、ひとつの手。

 そして、それを演じる俳優たちの魅力も大きなポイントだ。鈴木拡樹、荒牧慶彦、北村諒らキャスト陣は、普段映像作品しかふれる機会のない方からすると、あまりピンと来ないかもしれない。だが、彼らは舞台の世界では有名なスター俳優たち。出演が決まるだけでチケットが売れる人気の持ち主だ。

 ファンタジー性の強い華やかな衣装は、着る人を選ぶ。イラストなら自然なコスチュームやヘアスタイルも、生身の人間、それも日本人に合わせるとどうしても下手なコスプレ感が前に出てしまい、チープに見えかねないからだ。

 だが、彼らは違う。目鼻立ちの整ったビジュアルの良さを武器に、ゲーム上の衣装を違和感なく着こなし、さらに長年の舞台経験で鍛えられた殺陣とお芝居はスクリーンでもまったく見劣りしない。むしろ初めて『刀剣乱舞』にふれる方なら、俳優本人の素の部分がちらつかない分、自然と作品世界に入っていけるはずだ。

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