『家売るオンナの逆襲』北川景子にとって“家を売る”とは何か? コミカルさに包まれた作品の本質

『家売るオンナの逆襲』“家を売る”とは何か?

 衣・食・住の“住”が、いかに私たちの生き方に関わっているかを実感させられ、それが作品の醍醐味の一つになっている。『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)は、昨年放送の『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)を手がけた大石静が脚本を務める連続ドラマである。

 2016年放送の前作『家売るオンナ』でも、毎話登場する人間たちは何らかの問題を抱えていたが、今作でも多様な人間たちのリアルな姿が描かれる。扱う題材は実に多様で、今作ではYouTuberやネットカフェ暮らしの人々、LGBTといった現代的な事柄が取り上げられている。本作は全体としてコミカルな雰囲気に包まれながらも、その内容は考えさせられるものが多い。

 例えば、第2話で描かれたのは、孤独死の恐怖と隣り合わせで生きる一人の年配の女性の姿だった。泉ピン子演じる神子巴はある日、住んでいたアパートの取り壊しにより、新たなアパートを探すことに。だが、「孤独死されたら困る」という理由で断られ続け、結局ネットカフェを生活の拠り所にし始める。そんな巴の現状を知ったテーコー不動産の庭野(工藤阿須加)は当初、介護スタッフが充実し、巴と同世代の人々が集う場所での暮らしを提案するが、巴は猛反発。巴の願いは、同年代と暮らしたいわけではなく、いろいろなタイプの人間に囲まれて暮らしたいというものだったからだ。

 昨今はSNSなどの発達に伴い、オンラインで人々と繋がることは容易になった。ネットの世界でこそ生まれる人間関係もあるのだろう。ただ、どれだけ時代が進んでも、オフラインの結びつきは生きる上での大きな支えになる。どれだけ年齢を重ねても、若者からお年寄りに至る様々な人間の価値観や人生に触れ合いながら生きていきたいという思いも、確かにその通りである。巴と違って、ネットカフェに頼ることがなかったとしても、今の世の中では巴のような思いを抱いている人々もいるに違いない。多様な人間が集まる場が希薄になりつつある中で、オフラインの繋がりを無視することはできないはずだ。

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