『メゾン・ド・ポリス』軌道を微調整? 角野卓造ら“おじさま”たちの過去や内面に踏み込んだ物語に

『メゾン・ド・ポリス』軌道を微調整?

 夏目(西島秀俊)が渋々と発する「ようこそ、メゾン・ド・ポリスへ」の掛け声と、シンキングタイムのアイロンがけ。てっきり毎話恒例のものになると思われていたルーチンを省き、その一方で“メゾン”の住人の過去や内面に踏み込んでいく物語が展開した2月1日放送のTBS系列金曜ドラマ『メゾン・ド・ポリス』第4話。そういえば、ひより(高畑充希)が呑んだくれる居酒屋もいつもと違う店だったりと、ドラマ全体の3分の1が過ぎたタイミングで軌道を微調整しはじめた印象を受ける。

 もっとも、第2話で藤堂(野口五郎)とひよりの同僚の鑑識係・杉岡(西田尚美)が元夫婦だったという過去が軽く触れられはしたものの、それと比較すると今回の迫田(角野卓造)の描き込みはより深く内面的なものになっていたと言えるだろう。ある大学生の青年がバットで殴打された事件に、自ら率先して捜査に乗り出す迫田。たたき上げ刑事の長年のスキルを駆使して巧みに被害者・貫井秀之(山本涼介)の心を動かし、事件解決につながる重要な情報を聞き出すことに成功する。

 なぜ迫田がそこまでこの事件にこだわるのか、そしてメゾンに届けられる迫田宛の荷物の中身は何なのか。そのふたつが今回のエピソードのドラマ性を担うフックとなったわけだが、結末で明らかにされるのは、被害者が所属する大学のバスケ部のキャプテンが迫田の息子だということ。そして、家族そっちのけで仕事に打ち込む迫田に愛想を尽かして熟年離婚した元妻が、定期的に迫田の好物の漬物をメゾンに送っていたこと。息子の活躍が載った新聞や雑誌の記事をスクラップして、それをしんみりと眺め、また漬物をあてに晩酌する迫田の表情。なかなかハートウォーミングなまとめ方であった。

 それと同時に、今回の事件のきっかけを作った孤独な老人・田口(清水章吾)に対し「構ってほしいだけだろ」と言い放ち、自分も同じような境遇の“寂しい老人”であることを語る迫田。「次の世代に残すものがなくなったら、黙って死ぬのを待つしかない」という重みのある言葉は、“暇つぶし”と謳いながらも夏目やひよりのために何かを残そうとしている迫田が、自分自身に向けて発した言葉なのかもしれない。その点では、今回のキーワードのひとつである“老害”という言葉が、そのある種の“善意”を受ける側の判断に委ねられる、極めて難しい言葉であるのではないかと、つくづく考えさせられるほどだ。

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